都議会議員の海外出張はアリかナシか

川松 真一朗

東京都議会議員の川松真一朗(墨田区選出・都議会自民党最年少)です。

さて、今日は東京都議会議員の海外視察について私見を述べます。今回の平昌オリンピックには、超党派の20年大会成功議員連盟として自民党から1名。オリンピックの特別委員会に所属する自民党都議4名が韓国出張となりました。遡れば、2016年のリオデジャネイロ大会では開会式に3名、閉会式に2名、パラリンピックに4名が行っています。これらはすべて私費出張となっています。

海外視察は海外旅行なのか?

そもそも、舛添都政における都市外交出張が「豪華海外旅行」という風潮になり、16年リオデジャネイロ大会は直前までに超党派で議会からの公費派遣となっていたのを議会として中止にしました。それでも、自民党は20年大会へは直前の大会で学ぶ事は沢山あるという信念の下で、会派としての私費出張を決めたのです。

そして、昨年の都議選で議会改革を訴えた都民ファーストのメンバーを中心に議長の下に組成された議会改革検討委員会で海外出張も議論する項目にあげて現在審議中です。そのため、今回の韓国出張も私費になったという経緯があります。

自身は2度の公費出張を経験

私自身、都議になって2度海外視察に行きました。一つはドイツ・オランダへ、もう一つはイギリスでした。前者は自民党会派だけで構成される出張で、ドイツではマイスター制度を主にドイツの職人保護政策、職業訓練の実態、社会保障制度のあり方、男女共同参画などを、オランダではワークライフバランス、舟運活用、自転車専用道路政策などの都市計画についての調査でした。連日、現場での視察や各機関とのヒアリング、意見交換などで連日びっしりの視察でした。

一方、後者は超党派で構成された正にラグビーワールドカップ大会の視察で、試合も1試合見ましたが、それよりも会場の設備や街中のファンゾーン、各国の合宿地などを周り、イングランド内を動き回りました。いずれも、視察の準備段階で取りまとめを私がしたので視察自体に抜かりは無かったと自信を持って言えます。

出張前後にやるべき事

行くまでの労力が半分で、出発日からの労力が半分だと思っています。前者で言えば、事前にテーマに沿った各関係資料を視察団で読み込み、ワイドな視点からピンポイントに絞っていきます。それを基に、外務省と打ち合わせを重ねて、現地の駐在員を紹介して頂きます。その方達とも中身をつめて、実際に現場へ行きます。これに合わせて、テーマを理解している現地での通訳さんを探すのも大変です。特にタイトなスケジュールでは「時は金なり」です。同時通訳できる人を探します。これが難作業です。結果として、この時は見つからず事前の質問項目などを先行して渡すなどしました。あわせて東京都のテーマに関連する政策の変遷も自分達で整理しておきます。視察の目的は都の政策にフィードバックにさせる事ですから、好き勝手に趣味のような調査にならないようにするのは当然です。

上記のような事は、公費だろうが私費だろうが関係ありません。今回の平昌オリンピックで言えば、私が一緒にいた計4名は事前にオリンピック関係者や国会のオリンピック議連の方々、あるいは平昌大会組織員会、韓国オリンピック委員会のメンバーと連日、電話やメールのやり取りです。その中で、現地のどこを見たら良いか、雰囲気を掴みました。

実は都議会の場でラグビーワールドカップの準備を入念にやるべきだと、本会議や委員会で私は議員になって直ぐの頃から言及してきましたが当時は誰にも響きませんでした。その結果が国立競技場ザハ案撤回も導きました。15年大会では日本代表が南サフリカ代表に勝つという世界も驚く大活躍によってワールドカップに注目が集まりましたが、誰もラグビーワールドカップ自体は分かりません。

ちょうど議会派遣を決めるタイミングは国立競技場の19年完成が幻になり、東京スタジアムを活用すべきだと都議会でのラグビー成功議員連盟が活発になった頃です。私は公費でも私費でも構わないから、1人でも多くの方にイングランドに行って現実を見て欲しいと各所に声をかけ続けました。都議になって2年の私が各会派に呼びかけたのも心からのお願いだったからです。

公費と私費の違い

では何が異なるか。会派横断の超党派で組まれるラグビーワールドカップやオリンピックなどの特別な公費派遣だとここに「議会局」という都の職員が帯同します。私はここが大切なんだろうと思っています。あくまで、議会では予算審議や条例制定などの議論が本筋です。その際に、より中身を深めていくには事務方の円滑な議事サポートが不可欠です。

ところが、海外視察に同行してませんと私達の問題提起に「ついて来られない」わけです。実際に、ラグビーワールドカップ後の審議と、自民党が私費で行ったリオ大会後の審議ではちょっと様子が異なりました。一つずつ丁寧にリオでの様子を説明して、こういう議論をしたいから時間はこれくらい想定しているとか、説明パネルはこうだとか。加えて、議会局職員が同行となれば、彼らも議員の添乗員としていくのではなく都の職員としていくわけですから、関係各局との事前の情報共有を大切にします。

ですから、16年のリオ大会には私の知る限り、自民党から7名、今の都民ファーストから2名が私費出張に行きました。様々なやり取りを通しても、やはりこのメンバーとは意思の疎通がはかりやすいものです。現在の任期における都議会オリンピック特別委員会委員長にリオにも行かれた小山議員が都民ファーストから就任したのは大きな意味を持ちます。

ここで付け加えると、先の特別委員会で私は委員長に2020年大会の肝は輸送計画にある。にも関わらず、リオでは輸送状況、車両基地の視察をじっくり行っていなかった事が東京都への要求資料から判明しましたので、都知事に委員会への出席を取り計らい頂きたいと委員長に要求しました。そして、知事には輸送計画についてどんな考えを持ってきたのかをお聞きしたいと考えています。

特別な出張ほど高騰する費用

話がそれましたが、都議会議員の海外出張に賛否両論あるのは健全な形でしょう。ただ、それは視察ないよう、成果で判断されるべきです。私はそもそもリオデジャネイロの公費派遣メンバーには入っていませんでした。それでも行くべきと思っていた1人です。出張費用が高くなるのには要因があります。一言触れておくと、一番はホテル代の高騰。今回の平昌でもホテルが高いと話題になりました。加えて、現地の移動です。もし視察団という形でバスをチャーターすればバス代もかかります。

先にも記しましたが、同様に大きなイベントになればなるほど多くの方が集まるのでバスだけでなく、優秀な通訳・ガイドさんの需要が高まり取り合いになり結果としてここも高騰してしまいます。

とにかく通訳さんを疎かにしてはいけないというのが私の持論です。私も様々な場面で海外からの方々との会議等やり取りをしますが、大事なミーティングでは通訳さんに同席してもらうのをマストとしてます。

東京のプラスになること、その一心で

一番は私達は東京都議会議員ですから、東京のプラスになる事に貢献するだけです。先のプレジデント寄稿で政治家の発信のあり方を訴えたのですが、それは「劇場型政治」からの脱却が公益に資するという信念からです。郵政民営化選挙も、政権交代選挙も盛り上がったものの今では夢の跡です。

本で例えるならば、新書は読んでいて楽しいが、果たして50年後の国語の教科書に載るものなのだろうかという考えと一緒です。私の実践する政治スタイルは「古い」とアンチに批判されます。でも、紫式部も清少納言も、夏目漱石も「古い」けどみんな学ぶ事があるから「新しい」創造に貢献しているはずです。私は不器用ながらそんな政治家になりたいだけです。


編集部より:このブログは東京都議会議員、川松真一朗氏(自民党、墨田区選出)の公式ブログ 2018年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、川松真一朗の「日に日に新たに!!」をご覧ください。