店長の「働きがい」改革待ったなし。その環境整備には

2018年03月21日 06:00

写真は書籍書影

「思うように商品が売れない」「人材が育たないし、育ったと思ったら定着しない」「人材募集をかけても人が集まらない」「休みがとれずに休日も仕事をしている」「キャリアパスが見えにくく将来が不安だ」。なかなか厳しい流通業界。将来の見通しがなく、多忙極まりない日々を過ごしている店長は少なくない。

今回は、『店長の一流、二流、三流』(アスカビジネス)を紹介したい。著者は、人材育成などを手がけている、岡本文宏さん。店長として高い実績を上げる一流店長はどんな理由で、どのようにしているのかを解説したノウハウ本になる。

店舗の格を決めるのは店長

数年前、カリスマ販売員が話題になったことがある。カリスマ販売員が身につける服がブームになりすぐに売切れてしまう。「グレーなら、この商品が一番おすすめです!」。説明を聞くとカリスマならではの的確な説明に納得できる。一方、客を怒らせる販売員もいる。以前、大手百貨店のインポートブランドで次のような接客を受けたことがある。

私「Lはないですか?身長が185cmあるのでLが欲しいのですが・・」
販「いまあるのは、MとSです。インポートですから通常より大きめです」
私「Mだと袖が短い気がします」
販「せっかくなので、Sにも袖を通してください。おっ、タイトでお似合いですね」
私「かなりキツイのですが・・苦笑」
販「スペンサーっぽくてお似合いですよ!!」
私「・・・」

実は、販売員はSVだったので店長より格上のポジショニングだった。たまたま、繁忙期にヘルプではいったのかも知れないが、ちょっとした不快な接客から足が遠のいてしまった。一国一城の主といえば聞こえはいいが、責任が重いのも店長という職責。そのなかでも、とくに気をつかうのが、スタッフのマネジメントであろう。

「私がアパレル専門店のマネージャーをしていた頃、やる気を感じない部下には、『やる気を出せ』と叱咤激励をしていました。ただ、そうやって鼓舞したとしても、やる気を出すのは私がいるときだけで、その場から立ち去ると、また元の状態に戻ってしまうというのが常でした。はずかしながら、三流だったとしか言えません。」(岡本さん)

「また、店長のなかには、販売キャンペーンなどの成績上位者に報奨金を出したり、時給を上げたりと、金銭的なメリットをちらつかせて、スタッフのモチベーションを高めようとするケースもあります。これもまだ一流とは呼べず、二流止まりです。」(同)

このやり方に効果がないわけではない。インセンティブが増えたら、やる気は高まるが継続しないのである。しばらくすると前の状態に戻ってしまう。

「販売キャンペーンの上位になり、報奨金の対象となるスタッフは仕事に対して積極的です。メリットがなくともモチベーションが高い状態にあります。やる気のあるスタッフと成績で肩を並べるには、かなり頑張らないとならない場合が多く、やる気のないスタッフは報奨金制度にメリットを見い出せないのが現状です。」(同)

同じようなケースを紹介したい。私が、ケータイショップなどを展開する会社の役員をしているときの話になる。毎月、キャリアからは販売奨励金のインセンティブが提示される。インセンティブは販売員のやる気を引き出す効果はあったが、付与されない商品がまったく売れなくなる。インセンティブの効果は極めて限定的であった。

個別のニーズを把握せよ

インセンティブなどの報奨金で士気を高め、やる気を上げることは難しくコストもかかる。ではどのような方策が望ましいのか。それは、スタッフ各自のニーズを把握し、それを満たすことであると、岡本さんは答える。

「入社したばかりの新人であれば、入社直後に歓迎会を行ってもらったり、既存のスタッフから声をかけられることが動機につながります。モチベーションを高い状態で維持することができるようになるでしょう。そして、周りから必要とされ、価値ある存在と認められることで承認欲求が満たされるようになります。」(岡本さん)

「承認欲求とは、簡単な仕事ではなく重要なことを任せられたり、店長から『貴方がいるから本当に助かっている』というメッセージで承認欲求が満たされることです。これで、やる気のスイッチがオンになります。さらに、個々の可能性をさらに伸ばすための、アプローチを行い、やる気を高めることが必要です。」(同)

本書は、チームマネジメント、人材育成、店長としてのセールスや接客など幅広く網羅されている。また、現場経験の知見を反映していることからリアルである。問題意識を持っている多くの店長にとって有益なアドバイスになるものと考えられる。

尾藤克之
コラムニスト

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尾藤 克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員

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