政治の混迷をみて、谷垣氏の不在を嘆く

尾藤 克之

出典:自民党HP(https://www.jimin.jp)

佐川氏の証人喚問が、3月27日におこなわれる。改ざんに至った経緯や理由、改ざんを指示した人物、政治家の関与が最大の焦点になる。各紙の報道によれば、麻生財務相の引責辞任は既定路線となっているようだ。官邸は効果的なタイミングでカードを切るとも言われており、そのタイミングは審議が回り始める4月上旬との声もある。

内閣支持率は急落しており、地方選への影響も懸念されている。来年には統一地方選もある。今後は、内閣支持率と世論を意識せざるを得ないが、厳しい世論が形成されれば、安倍首相の三選が危ぶまれる。野党は、麻生財務相が辞任しても支持率が回復しなければ、昭恵夫人の参考人招致に攻勢をかけてくるだろう。

この場合、麻生財務相の次が誰になるかという議論になる。しかし、事態を打開できる人は多くはない。なにしろ、世論の支持を集める人でないと難しいからである。このような時、私はある政治家のことを思い出す。あくまでも個人的な見解だが、引退された谷垣元総裁の可能性があったらと考えてしまうのである。

谷垣氏は昨年の総選挙に立候補せずに政界引退を余儀なくされている。当初は、リハビリに専念し政界復帰を目指していると報道されたが、選挙までには回復が間に合わなかったということであれば、さぞかし、ご無念だったことだろう。

では、あくまでも個人的な見解として「可能性があったら」という論調で整理してみたい。どのような前提条件が必要になるだろうか。谷垣氏はリベラル派であり、タカ派の安倍首相とは政治思想が対極に位置する。改憲の方向性も一致しない。自民党総裁時代に改憲草案を作成した経緯があるが、現在の改憲の方向性は紆余曲折を経て方向性が変化してきている。まずは、この部分のすりあわせが必要になるだろうと考えている。

次に、効果の面を検討してみたい。谷垣氏は、前幹事長で、元総裁であり、国家公安委員長、財務相、国交相、法相、など多くの重職にあった。政策通はもちろん、その人柄で官僚との関係構築も期待できる。ソフトでリベラルな谷垣氏が登場すれば人気が高まることは間違いない。もし、車椅子で頑張っておられるとしたら、東京オリンピック・パラリンピックにとっても、象徴的な存在になることが期待できる。

さらに、谷垣氏が登場することで野党が追及しにくくなるという効果がある。谷垣氏のこれまでの実績に加え、身体が不自由ながらも頑張っている姿勢は多くの人から支持をされる。その、当事者を攻め立てることは心情的に難しい。これはあくまでも、谷垣氏の意思や、気力・体力があったうえでの話になるので、そのことは補足しておきたい。

日本国憲法第68条では、閣僚は最大19人任命できる。つまり、9人までは民間人でもよいことになる。谷垣氏以外にも、魅力ある民間人が登用されればどうなるだろうか。森友も重要な問題ではあるが、大局的な視野から国益を左右する日本の貿易政策や外交問題のほうが喫緊の課題ではないのか。そのように考える国民も多いはずだ。

尾藤克之
コラムニスト