消費者物価指数の前年比が上昇、その背景にあるものとは

3月23日に発表された2月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス1.5%となった。そして、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合(コア)では前年同月比プラス1.0%となり、14か月連続でのプラスとなるとともに、消費増税の影響を除いたベースで、2014年8月のプラス1.1%以来3年6か月ぶりの上昇率となった。

生鮮食品を含む総合のプラス1.5%というのは消費増税の影響を除いたベースで2014年6月のプラス1.6%以来3年8か月ぶりの水準となった。こちらは生鮮食料品の一部、キャベツやミカン、マグロなどの高騰が背景となっていた。

コア指数については電気代やガソリンなどエネルギー品目が引き続き押し上げた格好となった。

ちなみに生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)は前年比プラス0.5%と、こちらもじわりじわりと前年比を拡大させている。

この消費者物価指数の動きをみると、ここにきてやっと日銀の大胆な緩和策が奏功して物価が上がってきたようにみえなくもない。しかし、それには5年近くのラグが必要だということになるというのであろうか。

現在の日銀は調節目標を量から金利に変えて、長短金利操作付き量的・質的緩和策を行っている。イールドカーブをコントロールというか、国債の利回りを抑えつける政策を行っているが、果たしてこれがどのような経路で物価上昇に働きかけているのであろうか。

ここにきての日本の消費者物価指数の前年比が拡大してきた背景としては、生鮮食品を含む総合については生鮮食料品の高騰が大きく影響していた。そして、その生鮮食料品を除いたコア指数は、原油価格の回復が押し上げ要因となっている。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)も前年比プラス0.5%となっているが、こちらも原油価格の上昇による石油製品に絡んだ値上げ等の影響もあるとみられ、世界的な景気拡大による息の長い景気の回復も少なからず影響はしていよう。その意味では日銀の金融緩和効果がまったくなかったわけではないかもしれないが、今回の消費者物価指数の上昇要因をみても、それが直接大きな影響を与えてはいるとは考えづらい。

日銀は副総裁が入れ替わった事で新体制がスタートした。今後も現在の大胆な緩和策を物価目標達成まで継続するとしているが、これまでの異次元と呼ばれた緩和策とそれによる物価への影響についてもう一度、検証してみることも必要ではなかろうか。無理に出口に向かう必要はないかもしれないが、頑なに物価目標を達成しなければならないとの姿勢を微調整し、もう少し柔軟な政策にモデルチェンジすることも必要なのではなかろうかと思う。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年4月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。