デノミを実施するコロンビア、日本も問われた時があった

2018年04月03日 06:00

ラテンアメリカのGDPでブラジル、メキシコ、アルゼンチンに次ぐコロンビアは2000年代に入ってデノミネーションを行う必要性を感じていた。ファン・マヌエル・サントス大統領の今年8月の二期目の任期満了を前に彼の最後の懸案としてデノミの実施を議会で承認させる意向だ。

筆者がデノミについて今回取り上げるのは、日本もそれについて新ためて検討され理るべきではないかと考えるからである。

福田赳夫氏が首相の時に、彼はその必要性を良く口にしていた。中曽根政権の時もこの話はあった。しかし、その後は、小渕首相の時代に当時の自自公連立政権で一時検討されたが挫折。日本ではデノミについて取り上げられなくなっている。例えば、ドルをベースにした場合に世界の先進国の交換レートは基本的に1桁である。日本円が対ドルレート3桁というのはあらゆる面で不都合である。現在の日本円は1ドル=110円前後にあるが、これを1ドル=1.10新円といった形に収まるデノミを実施する必要があるのではないかということである。

例えば、コロンビアの通貨ペソの対ドルレートを見ると、1ドル=2857.143ペソとなっている。このような交換レートでは銀行や企業において色々と不都合が発生している。コロンビア政府が予定しているのは3桁を外して、1ドル=2.85新ペソというレートになるようにデノミを実施する意向なのである。

現在、コロンビアの紙幣は100,000ペソ、50,000ペソ、20,000ペソ、10,000ペソ、5,000ペソ、2,000ペソの6種類の紙幣が市場で流通している。それを、デノミによって100新ペソ、50新ペソ、20新ペソ、10新ペソ、5新ペソ、2新ペソの6種類の紙幣を発行する計画である。それにコインとして50センティモ、20センティモ、10センティモ、5センティモ、1センティモの6種類を加えるとしている。

このデノミの実施に掛かる費用は8000億ペソ(300億円)とコロンビア政府は見ているという。コロンビア議会で承認されれば、デノミの実施を2019年1月1日からとしている。

デノミの実施で銀行の送金や企業の経理などで仕事が容易となるのは明白である。また、多額の紙幣を持ち歩く必要もなくなる。これから観光業を発展させるという意味でもデノミはプラスに作用する。

一方、デノミを実施することによって心理的に以前よりも少ない金額を手にしているという印象を与えるのも確かである。例えば、コロンビアで就労者の34%の平均給与は600,000ペソから1,000,000ペソだという。デノミを適用すると600新ペソから1,000新ペソという給与を稼ぐことになる。これは心理的に可成りの減給になったという印象を与えるのは間違いない。

しかし、デノミは一時的にインフレと景気が上向くのを促進することも確かである。先ず、インフレを誘発するのは市場で価格を切り上げにする傾向になるからである。仮に商品価格が2,531ペソだった場合に、デノミで価格は2新ペソ531センティモというのが正しい価格であるが、市場では一般に流通を容易にするためと、おつりを簡単にするために2新ペソ60センティモという価格に設定される可能性が非常に高いということである。或いは便乗値上げというやつで、3新ペソまで価格が上昇する可能性も充分ある。即ち、およそ18.5%の値上がり(3÷2.531)という現象が発生することになる。これがインフレを誘発するのである。

この現象は欧州連合(EU)でユーロを導入する際に既に観察されている。スペインの場合、1ユーロの対価ペセタは166.386ペセタであった。当時、コーヒーがバレンシアだと55ペセタであったが、ユーロ導入で33センティモ(55÷166.386)になるはずが、1ユーロまで価格が上昇したのである。即ち、価格が3倍に値上がったのである!!!

政府はくどいほどに、便乗値上げをしないようにと釘を刺していたが、市場でそれは完全に無視された。現在市場で一番流通量の多い紙幣は50ユーロであるが、これはペセタに換算すると8,319.30ペセタに相当する。この金額のペセタだと以前は可成りの商品を購入できた。現在、50ユーロでは僅かの商品しか購入できなくなっている。物価がすべて上昇したのである。特に、南欧諸国は経済力がヨーロッパの中央や北欧に位置している国に比較して経済力が弱い為にこの便乗値上げは国民にとって苦しい生活を余儀なくさせられた。

だから、輸出立国だったイタリアはユーロの導入で輸出競争力を失い多大の被害をもたらすことになってしまった。また、その背後にはイタリア政府が輸出業者に輸出報奨金を付与出来なくなったという理由もある。今でもイタリアは他のEU加盟国と比較して、ユーロ通貨の廃止そしてリラへの復帰を強く主張している比率が非常に高い国である。

コロンビアがデノミを実施するもう一つの狙いは、タンス預金が市場に出回るようにさせるためである。コロンビアは麻薬組織カルテルの活動も盛んである。80年代-90年代に比較してその勢いは劣っているが、現在も麻薬の売買は盛んである。この売買取引は企業組織の会計で計上されないのが殆どである。売買は全て現金取引。

デノミを導入すれば、彼らはペソ通貨を新ペソ通貨に交換する必要が出てくるのである。ペソ通貨を市場で使用する必要に迫られて来る。それが市場では建設ブームや消費を煽ったりするのである。

EUでユーロ通貨が導入される5年くらい前からタンス預金が市場に出回っていた。それは建築ブームを更に煽った。建材は可成りの割合で現金で買い付けされるのが慣例になっている。支払いも、住宅の価格も公式には過少に評価して、不足残金を現金で支払うという具合である。現金で払えば経理の仕訳けに記帳しなくて済むからである。このような違法行為があっても、資金が市場に出回ることになるので景気は良くなる。これが、ユーロ導入前のヨーロッパの好景気を生んだ要因であった。

コロンビアでは試験的に既にMIL PESOSと紙幣の左上部に印刷されてある新ペソが限定されて一部市場に導入されている。これは新しい通貨が導入されるまでの暫定的な紙幣である。現在、それはペソ紙幣と併用して使用されることになっている。

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