いずも級の空母化について

清谷 信一

いずも(海自サイトより:編集部)

「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由(JB Press)

この記事に対する反論は大石英司氏が書いております。

概ね大石氏が書いてらっしゃるとおりです。そもそもいずも級は「将来を見越して」余裕をもった設計が流されており、空母化するかどうかは置いておいて、米軍のオスプレイやF-35Bの運用を想定しています。

それに筆者はコストが云々いう大部分が航空機であります。
これは大石氏が指摘しているように、空自のF-15JやらF-2の後継という形で空自が導入するのであれば、別に海自の負担が対して大きくなるわけではありません。

そしてこの手の人たちが指摘しないのが、早期警戒機の問題です。
いずも級を空母化する、しないに関わらず、早期警戒機は必要です空自のAWACSやE-2Dが常に上空でカバーしてくれるわけではありません。現在西側で実用化されているヘリ搭載用のシステムは英海軍が採用した、AW101に搭載可能な「CERBERUS」、サーベランスというシステムだけです。これか対抗候補となったロッキード・マーチンのシステムぐらいでしょう。大艦ミサイルの長射程化、ステルス化、高速化は進んでおり、これに対抗する意味から必要不可欠です。特に空母にするならば尚更です。

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空母を保有するメリットについては文谷数重氏の記事を参照ください。

「いずも」空母化を恐れる中国

それと空母不要論を唱える人は得てして、古いイメージで捉えているからであるように思えます。
別にインド洋やら大西洋まで出張っていく必要は無く、島嶼防衛や南シナ海での威喝行動が出来ればいいわけです。

特に島嶼防衛では単に、空自の戦闘機の飛び石として利用できればいいわけです。ある意味浮かぶ前線基地です。戦闘機がそこで給油や弾薬の補給ができてすぐに空に上がれるというのは大きなメリットです。本土から空中給油を受けて出撃するのであれば、往復の時間もかかるし、乗員も疲労します。

例えば新たに建造されるであろう揚陸艦にも航空機の運用機能を付加し、多目的空母として2~3隻調達すれば、ひゅうが級と併せて、ヘリと戦闘機の柔軟な運用が出来るはずです。専用の空母をつくわけでは無いし、揚陸艦も必要です。

ただ問題は乗員です。乗員の確保のためもあり、海自の水上艦艇の数を減らすことになるでしょう。その上で、2交代の2クルー制度を採用する必要があるし、そうすれば艦艇の稼働率も向上します。
そのためにも陸自から人員を割愛して基地警備や会計などの船に乗らない業務をやらせることも必要でしょう。

文民統制の放棄!なぜ「空母」が生まれたか(東洋経済オンライン)

■本日の市ヶ谷の噂■
いずも級は軟構造だから基準排水量が約2.3万トンに抑られたが、硬構造であれば、米揚陸艦と同じ4万トンクラスになったその場合でも建造費は対して変わらなかったが、大人の事情で軟構造を採用との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年4月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。