ビールを飲みすぎると「ビール腹になる」は嘘である?

尾藤 克之

写真中央が大川章裕医師、左:鈴木伸さん、右:津村枝里さん(共に幻冬舎)

「太りやすい」「痛風になる」。飲めば飲むことに「後ろめたさ」を感じてしまうビールの魔力。そんな印象を払拭する衝撃の書籍が上梓された。その名も『ビール! ビール! ビール! 』(幻冬舎)。シンプルなタイトルにはビールを最大限愉しむ飲み方と、ビールに関する思いが込められていた。

著者は、医療法人社団大和会「慶和病院」理事長・院長。医学博士。大川章裕医師(専門は脊椎外科)。海外文献にも豊富な知見をもち、ビールと女性ホルモンに関する研究に注目。予防医学や健康に貢献するとして情報公開を積極的に進めている。また、自宅には常時100本以上の世界各国のビールを揃える大の「ビール党」でもある。

ビールに対する間違った認識

ビールが健康に悪いと勘違いされている理由として「飲むと太りそう」というイメージが挙げられる。お腹だけがぽっこり出ている体形を、ビール腹と揶揄することがあるが、このようにビールと肥満を結び付けていることが要因として挙げられる。

「まずは、ビール腹とはどんな状態なのか、医学的に定義しておきたいと思います。お腹がぽこっと出ている体形は、いわゆる『メタボリックシンドローム(メタボ)』であり、中年男性に多く見られます。その診断基準として、腹囲が男性は85㎝以上、女性は90㎝以上であると、『メタボ』であるとされます。」(大川医師)

「メタボ体形になる理由は、『皮下脂肪』『内臓脂肪』がついてくることです。皮下脂肪は、お腹の皮と腹筋の間にあり、その量が多くなればお腹は当然出てきます。腹筋の下にある腹膜に包まれている内臓の周囲を覆っているのが、内臓脂肪です。触ってもなかなかわかりませんが、この脂肪もまたお腹をぽっこりさせる原因となります。」(同)

大川医師によれば、健康面では、皮下脂肪よりも内臓脂肪に注意が必要とのこと。糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化など、生活習慣病と内臓脂肪は深く関与している。

「皮下脂肪に比べ、内臓脂肪はエネルギーとして消費されやすく、落ちやすいといわれます。特に、女性より筋肉量の多い男性は、運動や糖質制限などを行えばより脂肪が落ちやすくなっています。さて、ビールに話を戻します。ビールの成分の中で、脂肪をため込む可能性があるメインの成分は、アルコールと糖です。」(大川医師)

「アルコールは肝臓で代謝される関係で、肝臓に内臓脂肪がつきやすくなります。糖に関しては、糖分を一気に摂ると、まず急激に血糖値が上がります。そうすると、それを元に戻そうとインスリンが分泌されます。本来、糖をエネルギーとして筋肉や肝臓に運ぶのですが、余った分を脂肪細胞に運び、体脂肪として蓄えます。」(同)

適量であればメタボにはならない

ビールのカロリーを、他の酒類と比較したデータを紹介したい。どうだろうか?「意外に高くない」と感じる人もいるのではないか。

<カロリー度数比較>
・缶ビール·淡色1本(350ml)約140kcal
・缶ビール·黒1本(350ml)約161kcal
・缶ビール·スタウト1本(350ml)約220kcal
・ビール·中ジョッキ一杯(500ml)約210kcal
・乙類焼酎1合(180ml) 約260kcal
・ウイスキーシングル(30ml)約70kcal

「メタボ体形を招く主犯である糖質に関しては、1回の摂取量を25 g以下に抑えれば太ることはないとされます。これをビールに換算すると、大体500ml程度です。近年では、1日の糖質量を130g以下に抑える「ゆる糖質制限ダイエット」が提唱されていますが、その数字もひとつの目安になるかもしれません。」(大川医師)

「ポイントは、1日のカロリーと糖の量をきちんと計算することです。ビールには胃液の分泌を促す作用があることから、飲めばついつい食べ過ぎてしまいがちですがおつまみの量をうまくコントロールした上で適量を楽しむ分には、ビールでメタボ体形になるということはありません。」(同)

大川医師は、運動をしてカロリーを消費すれば、ビールを飲む量を多少増やしても問題はないとしている。本書は医師が、ビールにまつわる誤解を解消するとともに、国内外の論文やデータを分析してたどり着いた、ベストなビールとの付き合い方とはなにかを解説した本になる。今日も暑い「ビール!ビール!ビール!」。

尾藤克之
コラムニスト
代議士秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書はビジネス書、実用書を中心に10冊。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)が発売後、1週間で重版。現在好評発売中。
個人ブログ:尾藤克之のブックルポ Twitter:@k_bito