「太りやすい」「痛風になる」。飲めば飲むことに「後ろめたさ」を感じてしまうビールの魔力。「痛風になる」「ビール腹になる」「プリン体が」。そんな心配を払拭する書籍が上梓された。その名も『ビール! ビール! ビール! 』(幻冬舎)。シンプルなタイトルにはビールを最大限愉しむ飲み方と、ビールに関する思いが込められていた。
著者は、医療法人社団大和会「慶和病院」理事長・院長。医学博士。大川章裕医師(専門は脊椎外科)。海外文献にも豊富な知見をもち、ビールと女性ホルモンに関する研究に注目。予防医学や健康に貢献するとして情報公開を積極的に進めている。また、自宅には常時100本以上の世界各国のビールを揃える大の「ビール党」でもある。
栄養学的にも理想的な組み合わせ
ここで、ぐるなびのウェブ調査を紹介したい。調査対象は、全国・20歳以上・男女のぐるなび会員2116名。居酒屋で頼む定番メニューを合計30ほど用意。そのうち「ビール(発泡酒や第3のビール含む)が進む」と思うおつまみを、複数選択と単一選択で回答したものになる。実施時期は2016年9月15日~2016年9月16日。
ビールを「よく飲む」「たまに飲む」と回答した人(合わせて全体の63.6%)に、「ビールが進むと思う食べ物」を選んでもらった結果、次のことが明らかになった。単一選択では21%、複数選択では80%が「枝豆」をベストだと選択した。大川医師は、ビールと「枝豆」との関係性について、次のように解説する。
「ビールといえば、枝豆。日本では定番中の定番ですが、実はビールに枝豆を合わせるのは、ほぼ日本独自との習慣であることを知っているでしょうか。なぜ枝豆がこれほど市民権を得たのかといえば、高度経済成長期と減反政策が影響しています。昭和30年代、冷蔵庫の普及に合わせ、ビールも庶民に爆発的に広まっていきました。」(大川医師)
「枝豆は、『庶民の食べ物』の代表格であり、自然にビールと枝豆という組み合わせが成立したと思われます。その風潮の背中を押したのが、昭和40年代に行われた減反政策です。米が市場に増えすぎたことで、政府は農家に対し米の生産を抑えて他の作物を作るよう要請。そこでよく選ばれたのが、栽培が容易であった枝豆だったそうです。」(同)
枝豆は、手ごろな値段で流通し、茹でるだけで食べられるという手軽さもあった。そのため、定番化していったと考えられている。さらに、枝豆とビールという組み合わせは、実は栄養学的にも理にかなっていることが明らかになっている。
「枝豆は『畑の肉』と称されるほど栄養価が高く、タンパク質の他、ビタミンB1、B2 、C、葉酸などのビタミン類、各種ミネラルや食物繊維などが豊富に含まれています。偏りがちな栄養を補えるだけでなく、アルコールの分解もサポートしてくれるなど、まさにいいことずくめ。その味もさっぱりして食べやすくビールとの相性は抜群です。」(大川医師)
ベストなビールとのつきあい方
大川医師によれば、世界的な健康志向と、日本食ブームも相俟って、枝豆は2000年ごろから欧米などでも食べられるようになってきているとのこと。
「外国での表記は、日本語のまま『Edamame』とされており、枝豆が和食のひとつとして受け入れられているのがわかります。将来は、アメリカやイギリスのビアバーで、『Edamame』が提供される日がくるかもしません。」(大川医師)
大川医師は、1日のカロリーと糖の量をきちんと計算することを推奨している。ビールを飲めばついつい食べ過ぎてしまいがちだが、おつまみの量をうまくコントロールした上で適量を楽しむ分には問題がないとしている。枝豆は、カロリーが低く、日本で主流のピルスナーにもよく合う。さっそく食べてみてはいかがだろう。
本書は医師が、ビールにまつわる誤解を解消するとともに、国内外の論文やデータを分析してたどり着いた、ベストなビールとの付き合い方とはなにかを解説した本になる。これからの暑い季節を前に一杯いかがだろうか?そういえば、今週末は夏日になるとの予報が出ている。「ビール!ビール!ビール!」。おつまみは「枝豆」の“焼き”でよろしく!
尾藤克之
コラムニスト