「韓国大統領府 VS 朝日新聞」の正しい観戦方法

2018年05月19日 06:00

朝日新聞が18日、米朝首脳会談を前にした北朝鮮との下交渉を巡る同日の報道を巡り、韓国大統領府から出入り禁止を食らったことが朝鮮日報の報道で明らかになった。

この日の夕方から寝入ってしまったこともあり、政治ニュースの読み解きをテーマにしているオンラインサロンのメンバーからの連絡で夜に知ったのだが、日本のネット上では、嫌韓、アンチ朝日新聞のネトウヨを中心に、“内輪もめ”だと面白がって騒ぎになっていた。

朝鮮日報によると、大統領府が特定の外国メディアを無期限の出禁処分にするのは初めての事態だという。そこまで強硬な手段に出るに至った経緯として、昨年6月と今年2月にも朝日の報道に政権側が反発。この間、1か月の出禁もあったようだ。

朝日のモリカケ報道がフェイクニュースだと苛立つネトウヨからは、「日本政府も朝日新聞を出禁にしろ!」とヒートアップする声もあるようだが、一般論として報道機関の出禁処置というのは、①明らかな誤報を理由にする場合もあるが、②核心的利益に抵触しかねない事実を早打ちされてパージする場合もある。

フェイクニュースとは言わないまでも、韓国政府が主張するように、完全な誤報であれば①に相当する。しかし、後追いで報道した産経新聞の取材に対し、朝日の広報部は「今回の記事は、十分な取材に基づいて報道したものです」と述べており、一定の自信を持っているようだ。

正確に報じても「出禁」はあり得る

もし、朝日が正しいのであれば②に相当する可能性はある。外交交渉、特に朝鮮半島の核問題のような極めてセンシティブな案件では、外交交渉が頓挫するなどの悪影響を見越してプロセスが明らかにされることに憤慨することは珍しくない。

たしかに、『朝日新聞がなくなる日』なんてタイトルの本を出した者としては、ネトウヨの皆さんと同じように、ここぞばかりに築地に矛先を向けてやりたいところだ。

朝日新聞がなくなる日 - “反権力ごっこ"とフェイクニュース -
新田 哲史:宇佐美 典也
ワニブックス
2017-08-28

 

しかし、報道の現場では、真相を報じた記者が、権力者側にパージされることが普通にあるだけに、もう少し様子をみたほうがいいのではとも思う。

報道機関の出禁といえば、財務省の文書改ざんを巡り、佐川・元理財局長の起訴猶予が各メディアで報じられたが、それに関連して興味深い話があった。不起訴はすでに4月時点で毎日新聞が特報しているが、直後に追いかけるメディアはなかった。

先日、TOKYO MX「モーニングCROSS」で東京新聞の望月衣塑子氏と共演した際、彼女が「噂」として述べたのは、毎日新聞が大阪地検の取材で出禁をくらっているというものだったが、そうした噂が事実とすれば、毎日新聞は結果的に正しく、捜査途中にセンシティブな判断を先走って報じられたことを憤った特捜部による②のパターンの出禁処分だったことになる。

モーニングCROSS(5月9日)より

この手のことはよくあって、私自身も若いときに何度か経験した(その詳しい話は今度noteに書きます)。事件取材では、容疑者の立件のような捜査当局の“核心的利益”に関する話は、報道内容が正しくても、出禁にされることはよくある。サツ回りの猛者たる他社のライバルたちも勇み足、あるいは出禁を覚悟で突撃して記者会見を締め出されることは当たり前だった。

文在寅政権が朝日を出禁にした真の狙いは?

話を戻して、問題の朝日の記事はこれだ。

核兵器の搬出、韓国が提案 4月、米朝の仲介目指しボルトン氏に

私は外交安保、朝鮮半島問題の門外漢なので、一読者としての感想にすぎないと断った上でだが、「非核化の方法を巡って対立する米朝の仲介を目指し」段階的な非核化措置にこだわる北朝鮮側の意向をくみとって米側に働きかけたというのは、これまでの韓国の北へのすり寄りぶりを考えれば十分ありえそうな話だ。ボルトン補佐官が韓国側の申し出に即答しなかったという描写も、なかなかリアリティーがある。

朝日の情報源は「米韓関係筋」だが、執筆者がソウル駐在特派員で、なおかつ、ボルトンの「即答しなかった」反応を客観視している視点からすれば、韓国政府関係者の可能性を強く感じる。もし、朝日が報道したような米政府への提案を文在寅政権がしていたとすれば、22日の米韓首脳会談を前にこの問題で騒がれたくないというセンシティブモードになっていて、なおかつ、情報源と朝日新聞の遮断をはかった措置にもみえる。

子細はわからないが、19日から来週にかけて、このあたりの裏事情は、週刊誌や現代ビジネスなど国際報道に定評あるネットメディアで出てくるかもしれない。いずれにせよ、朝日新聞の過去の虚報歴を理由に、今回の出禁問題を安直につなげて論じるのは早計ではないだろうか。

P.S ちなみに、こんな感じで毎週月曜夜にオンラインサロンで会員の皆さんとワイワイ議論してます。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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