トランプ化する安倍首相の政治手法

2018年05月26日 06:00

White House/Flickr:編集部

主要国で政治的道義が後退

森友学園、加計学園を巡り、新資料が次々に出てきて、安倍政権は連日、矢面に立っています。首相の苦悶する様子がはっきりうかがえる一方で、内心では「強気で行けば、窮状を突破できる」と思っているようにも見受けられます。その根拠は、政治倫理が欠如し、法の支配より自己主張を優先するトランプ米大統領の政治手法の影響です。

「米国に比べたら、日本はまだまし」と思っている安倍政権の人たちは多いでしょう。トランプ大統領に限らず、プーチン露首相の国際法を無視した領土拡張、習近平・中国主席の強引な膨張主義などは壮大な悪であり、それに比べると、「モリカケは桁違いに小粒。強気で押していれば、そのうちに立ち消えになるさ」という読みですかね。

誤解のないように申し上げますと、森友も加計問題も、発端は安倍首相夫妻の初期対応のまずさにあり、法的手続きのルールを逸脱している点が多々ある。さらに首相は「私たちが関与していれば、首相も議員も辞職する」と口走り、野党とメディアの攻勢を自ら招き寄せたのです。

率直な謝罪と真摯な反省を

首相自身が非を認め、「うかつだった」と謝罪し、度が過ぎた官僚統制の是正、公文書破棄への反省を示せば、国政は正常化に向うかもしれません。約束通り、首相を辞職するか否かは、本人の意思次第です。とにかく強気で押し続けていると、きっと新事実がまたでてくる。ますます泥沼化する。率直な謝罪と真摯な反省が、局面を打開する細い道です。

最近の世論調査(読売新聞、5月)では、加計学園獣医学部の新設に対する首相の説明(自ら指示したことはない)は「納得できない」が77%です。首相秘書官だった柳瀬氏が愛媛県職員らと会い、「これは首相案件だ」と発言したとの文書が残っているのに、本人は否定し、首相も「本人を信頼している」と発言したことについては、「納得できない」(4月)が82%の高率でした。

友人の学園経営の便宜を図ったことは「動かぬ事実」と、大多数の国民は信じているのです。その後の公開された記録、文書の公開でも、「首相と加計学園理事長が会い、首相がいいね、といった」、「森友学園の開設では首相夫人が複数回も登場する(国有地の売却に関与を示唆)」との新事実です。これらについても、首相側は否定ないし黙殺の構えです。

国際的にみれば、はっきり非を認めて、謝罪すれば収まる次元の話です。世論調査に戻りますと、「国会は森友、加計問題を優先して議論すべきだと思うか」では、「そうは思わない」52%、「そう思う」40%でした。ですから首相自身がその環境を整えれば、道が開けるかもしれないのです。新聞社説が何度も繰り返している「首相は丁寧に説明すべきだ」の意味は、「事実を語れ」のことです。

応援団の残念な意見広告

私が残念に思うのは、右派の知識人の集まりでしょうか、「国家基本問題研究所」(桜井よしこ理事長)が最近、新聞に意見広告をだし、「国会よ、正気を取り戻せ」と訴えたことです。「大局を見て国家的な課題に取り組め」という点には賛成できても、問題があります。

意見広告では「首相の介入疑惑、あるいは隠蔽工作疑惑に結びつけ、本質から外れた批判を繰り返す」と、野党やメディアを攻撃しています。これらの人たちは首相の応援団なのですから、「指摘されている疑惑について、首相は率直に真実を語り、事実なら謝罪し、もっと大きな課題に取り組んでほしい。そう多くの国民は望んでいる」と、述べることが本当の応援になるのです。

米中ロ、新興国などで、政治的倫理、道義より、政治的野心、国益第一、国際秩序軽視で突っ走る大統領、首相がやたらと目立ちます。日本が遅れをとらないようにするには、どうすべきか。小事を大火にしたのは、首相自身の初期対応の間違い、それを糊塗するため連鎖的に起きた文書改ざん、数々のウソの証言です。世論調査をみれば、有権者はとっくに見破っていること分かります。

ネット化時代の中で、フェイク(偽)ニュースが増え、トランプ大統領は気に食わない報道があると「フェイク・ニュースだ」と片づけます。さらにツイッターで情報を次々に流し、揺さぶりをかける。トランプ流は政治手法はトランプにしかできない芸当だと思います。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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