米朝会談中止宣言から一夜明けて分かったこと

2018年05月26日 06:00

stephan / flickr:編集部

もっとも目立つのは北朝鮮の狼狽ぶりだろう。25日の午前中、金桂冠外務次官は「関係改善のための首脳会談がどれだけ切実に必要か」「(トランプ大統領のことを)内心は高く評価していた」「(トランプ大統領が示した非核化の方式を)賢明な案だと内心期待していた」「対話の扉は開かれている」と、北朝鮮のこれまでのやせ我慢ぶりとはうってかわった低姿勢である。

アメリカに甘い顔ばかりしていると向こうのペースになるから格好をつけるつもりが、大火傷した図式だ。金正恩・軍の長老・外務省それぞれの責任のなすりあいがすさまじいことになりそうで、粛清の嵐になるかもしれない。

だいたい、トランプ相手には日本や欧州だけでなく中国でも気分を損ねないようによいしょして、紫禁城で皇帝のように接待したり、マクロンでも革命記念日に招待したり、ごまをすっているのに、北朝鮮ごときが、粗野なふるまいをしたのがすべての間違いの元だ。

韓国では、文大統領は米朝首脳会談に合わせてシンガポールを訪問する案を検討し、水面下で準備作業に入り、米朝首脳会談が成功裏に終わった場合、すぐに南北米3カ国首脳が一堂に会して「終戦宣言」を出すことを念頭に置いていたらしいと報道されている。

文大統領は、板門店を念頭に置いて「米朝会談の直後に南北米3カ国会談開催」という案を提案したが、トランプ大統領がシンガポールを選ぶと文大統領が直接シンガポールに行って3カ国首脳会談を開く案を提示したらしい。

韓国大統領府は韓米首脳会談後に「両首脳は、米朝首脳会談後に南北米3カ国が終戦宣言を一緒に行う案について意見を交換した」と発表したという。文在寅が成功させるための真摯な努力より、果実を彼自身もお裾分けしてもらうために力を尽くしていたのではどうにもならない。

中国は、北朝鮮がアメリカ寄りになりすぎることを嫌ったのだろうか。どちらにせよ、習近平は、トランプのペースで会談が進むことを邪魔した。トランプが会談が成功しないと政治的に窮地に陥るから譲歩するとみたか、中国に北を説得させて恩を売り、貿易戦争で得をしようとしたようだ。ところが、アメリカから邪魔したという怨みを買うことになったし、北にとっても、中国の言うとおりにしたら会談がつぶれたのだから感謝されるはずもない。

アメリカは、なかなか冷静だった。ポンペイオ国務長官は、金正恩が突っ込んだ措置を執る覚悟を決めていないと見抜き、あえて楽観的な見通しを流して交渉打開のテコとしつつ、中止になる可能性が高いという前提で根回しをしていたようだ。だから、北高官が中止をほのめかすなど愚かなまねをした、もっとも無理のないタイミングで中止を声明し、責任を北に負わした。ポンペイオがプーチンと同じく諜報機関のプロであることを北も中韓も忘れていたのではないか。

日本は完璧にうまく立ち回っている。「安倍首相が出し抜かれた」とか間抜けなことをいってきた偽リベラルの愚か者は少し反省したらどうか。

もし、ここで、国民が半島情勢や来年のG20を考えれば、しばらくは、安倍首相にやらせた方が良いという賢明な判断でほぼ一致するなら、北の方から拉致問題でのしかるべき納得のいく提案とともに、トランプ大統領との仲立ちでも頼んできていいタイミングだ。それを邪魔しているのは、もうすぐ、安倍退陣だと騒いでいる偽リベラルだが、実は彼らこそが、金正恩の道を誤らせたといえる。私は偽リベラルに騙された金正恩や北の人たちに同情を禁じ得ない。

昨日の記事でも書いたように、私はもともと、北朝鮮については、かなり強く関係改善を望んでいる側の人間だ。ただ、核と拉致の問題が解決しないと、日本は制裁解除とか経済協力など絶対に何もできないのである。ただ、金正恩が頼ってきたら、やれることはいろいろあると思う。大阪生まれの母親の子だというだけでも十分に道が開ける要素はあると思う。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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