「子の虐待死は親を死刑」に多数の意見

Facebookより:編集部

死が待つ幼い命に差し伸べる手

ブログ「子を虐待死させた親は死刑に相当」(6月7日)を書いたところ、たくさんの方々からコメントが寄せられました。寄せられるコメントが通常、少ない私のブログにとっては、異例の多さです。「涙が止まりません。なぜ救えなかったのか」、「この親は悪魔。極刑賛成」など、怒りの意見が目立ちました。

その一方で、死が待っているかもしれない幼い命を救う活動をしているグループがいくつもあります。赤ちゃんを育てられないという夫婦が増えていれば、妊娠したくても妊娠できないという夫婦も増えているのです。その細い糸を結びつけるマッチング(斡旋)の実例を後ほど紹介してみたいと思います。

虐待死の犠牲者は5歳の女児(東京都目黒区)で、両親は保護責任者遺棄致死容疑で逮捕されました。コメントを読んでみましょう。「むごすぎる事件だ。親は悪魔、虐待を掌握しながら児童相談所、警察は何をしていたのか」、「結愛(ゆあ)ちゃんの辛かった毎日を思うと、涙が止まらない」(真冬にベランダに放置)、「保護責任者遺棄致死というけれども、実態は継続的な暴力による殺人そのものだ」。

まだ続きます。「男の私でも涙が出ました。死刑、終身刑に賛成です」、「あのように小さな子がどんな思いでノートを綴ったのか、想像を超える苦しみだっただろう」(ノートにはパパ、ママゆるして)、「子供が受けたのと同じ体罰を親に課し、いかに罪の重いことをしたのか自覚させてほしい。幼児への虐待死は大人の殺人より刑を重くすべきだ」。

子育てが難しくなった背景

怒りの声があふれる中で、「二度と事件を繰り返さないためには、事件の背景、両親の育った環境などを公にし、何が根本的な原因なのか明らかにしてほしい」(夕食は茶わん半分の米だけ)、「児童虐待は刑が軽すぎる。日本の法曹界の考え方を聞きたい」という指摘もありました。

確かに極刑を課すだけでは、同様の事件を防止できないでしょう。残される子がいた場合、親が極刑にされたら、引き取る人はいるのでしょうか。今回の場合も、一人の子が残されることになりました。どうするのか心配です。

「虐待死ばかりでなく、自分の子供の心を殺す親は少なくない。そうして育てられた子が社会に順応できず、自分や他人を傷つけてしまうことが少なくない」。最近、新幹線で起きた22歳の無職男性の殺傷事件も、学校生活、社会生活からどこかで脱落し、動機不明の「むしゃくしゃしてやった」事件になったのでしょう。

小さな努力をひとつずつ積み重ねて行くほかありません。その一つが、経済的、家庭的に育児を断念せざるを得ない親から赤ちゃんを引き取り、赤ちゃんに恵まれない夫婦に養育を委ねる「特別養子縁組」制度です。実親との関係がなくなる点で普通養子縁組とは違います。里親制度は、実親(生みの親)の生活が安定するまで一時的に子供を預かる制度です。これとも違います。

児童相談所が橋渡しするほか、ボランティアのNPO法人15団体が児相や産婦人科と連絡をとり、マッチングを呼び掛けています。引き取った養親の育てぶりを児相の職員がチェックにきます。法的な問題が起きないように家裁の裁判官との面接もあります。赤ちゃん売買にならないよう、養親が払う費用は実費と団体への寄付金で、謝礼に大金が必要ということはありません。

養子の育て方に豊富な経験

経験者から聞いた話はこうです。誕生直後に養親が引き取り、育てるのが理想的だそうです。年数が経ってしまうと、すでに虐待などを受け、精神に傷を負っているかもしれないからです。養親の住む最寄りの駅まで、団体の方が赤ちゃんを抱いて連れてきます。

その駅には、団体の世話になった養親、そこで育てられた子供たちのグループ何組かが集まり、拍手で到着した赤ちゃんを迎えます。養親はお子さんたちに「あなたもこうして迎えられた」と、教えるそうです。物心ついてから、実親でないことで悩まないように、「同じような境遇の子供はあなたばかりではない」と諭すと、安心するそうです。

ある団体では、時折、世話した何十組かに集まってもらい、研修会、パーティをして、悩みを語りあうともに、励ましあう機会にしています。同じ沿線に住むカップルは親子連れで、動物園やハイキングに行きます。実親でない養親に育てられている仲間と友情を深めるためです。

子供が成長するにつれ、顔の形が似ていない、血液型が一致しないなどに疑問を持ち始め、「今の父母は実の親でない」ことを告げなければならない時が来ます。突然、告知すると、ふさぎ込みかねません。これはその子にとって、重大な問題です。その子の心が傷つかないよう、この団体ではこれまでの経験を子育てに生かしているのそうです。

幼い生命を救うには、こうした細かい配慮も欠かせません。日本で成立した特別養子縁組は年500件程度です。米国では年12万件といいます。多民族国家、開放的な社会、養子に対する理解の寛大さなどが背景にあるのでしょう。日本の場合は、知名度が少ないうえ、養育断念を訴え出ることをためらいがちなせいでしょうか。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。