人気講師が解説!参加してはいけないセミナーの特徴とは?

尾藤 克之

写真は講演中の下澤さん

会社で働いていると、年齢を重ねるごとに人前で話す機会が増えていく。管理職になって部下の前で堂々と話せない自分。声が震え、手が震え、目も合わせられずにスピーチする自分。そんな姿を想像し、これではマズイと思っている人はいないか。

今回は、『身の丈セミナー講師のはじめかた』(発行:ラーニングス、出版:サンクチュアリ出版)を紹介したい。著者は、ファイナンシャルプランナーの下澤純子さん。これからセミナーで話したい、集客したい、その先のビジネスに繋げたい人の入門書になる。

参加してはいけないセミナー

いままで多くのセミナーに参加してきたが、まれにハズレのセミナーが存在する。そのセミナーにはいくつかの特徴がある。ひとつは、参加者の「売り込み臭」が漂っているセミナー。片っ端から名刺交換をして鼻息の荒い人が多い。気がつくと、参加者がネットワークビジネスの人ばかりなんてこともある。下澤さんは次のように解説する。

「ネットワークビジネスが悪いということではありませんし、実際に、いい商品も沢山あります。ただ、ネットワークビジネスに対してよくないイメージを持っている、アンチの人が多いことも理解しておく必要があるのです。交流会や懇親会では、ネットワークビジネスに取り組んでいる参加者が多く見受けられることがあります。」(下澤さん)

「参加しやすいセミナーを目指すのであれば、ネットワークビジネスの勧誘を禁止してしまう方法が有効なのかなと考えています。交流会や懇親会はネットワークビジネスの勧誘の禁止を明記しているものが多く、逆に禁止の文言がないところにネットワークビジネスの人の参加が集中しているケースが見受けられます。」(同)

女性起業家向けセミナーは「稼げていない部分をネットワークビジネスの収益で埋める」というビジネスモデルが存在する。そのため、ネットワークビジネスの人の出入りが多い。セミナーを開催する以上、参加しやすいセミナーを目指す必要がある。下澤さんは、セミナー後の営業活動がしつこいセミナーにも注意すべきとつづける。

「保険会社主催の教育資金セミナーで、講師はその保険会社の人間ではないファイナンシャルプランナーの女性でした。会議室は満室で集客力には驚きました。私は自分の勉強も兼ねて参加していたのですが、保険会社が教えるのではなくファイナンシャルプランナーが教えるという点が参加のしやすさにつながっていた気がします。」(下澤さん)

「このセミナー、無料にもかかわらず紅茶とケーキ付でした。いつどんなことにお金がかかる、大学卒業までのトータルでどれぐらいお金がかかる、といった話でした。そのために節約しましょう、貯めておきましょう、という終わり方でその後の個別相談は主催者の保険会社が受ける形になっていました。」(同)

下澤さんは、アンケートに個別相談を希望せずに会場を立ち去った。ところが、家に着くまでの1時間ほどの間に勧誘の電話が掛かってきた。断っても数日にわたり熱心な勧誘がつづいた。しつこい勧誘はイメージを損なうので注意が必要になる。

個別相談に申し込まないと帰れないセミナー

「ある通販会社が主催する、お買い物をした人だけが参加できる無料のマネーセミナーに参加したときのことです。講師が保険会社の人ということもあり、セミナー自体はわかりやすく、参加者のニーズにも合致している内容だなと感じました。ただ、終盤になると様子が変わってきます。いきなり個別相談への誘導が始まったのです。」(下澤さん)

「私は保険に詳しかったのでどの保険商品に誘導するつもりなのかも何となくわかり、個別相談は受けないつもりでいたのですが、帰りたくてもすんなりと帰れない状況になっていました。というのも、会議室の2つある出口のうちの1つを閉めてしまい、個別相談の日にちを抑えないと、出口から会場を出ることができないのです。」(同)

この時には、セミナー終了後に出口に長蛇の列ができていたそうである。無理やり個別相談の予約を取ったとして、どのくらいの人が本当に個別相談を受け、バックエンド商品の契約をするのか疑問である。その場で契約をしてもあとでクーリングオフをされたらどうするのか。会社にとってもお客様にとってもメリットは少ない。

本書の特徴は「身の丈」である。セミナー講師のなかには、実際よりも盛りまくる人が多いが、「自然体であること」を推奨している。また、「能力を超えてまで頑張る」ことも必要ない。突然、セミナーや講演を頼まれたときに読む理想的な1冊といえる。

尾藤克之
コラムニスト