災害復旧時、いま何をすべきか 〜 広島県知事に問う

2018年08月07日 06:00

豪雨災害対応で記者会見に望む湯崎知事(広島県公式Facebookより:編集部)

先週金曜日(8月3日)、広島県議会では臨時議会が開かれ、今回の西日本豪雨災害に対する1282億3400万円の補正予算が可決されました。

私は所属する建設委員会において、「30年前の県予算では2000億あった建設費を、現在3分の1の800億に削っているこの広島県では、広域的かつ早急なダム建設は不可能だ。今回の各危険渓流箇所で国・県の棲み分けがまだ決まっていないのならば、なるべくたくさんの箇所を国の直轄事業として、全額国庫負担で砂防ダム建設を行うよう、県からお願いして欲しい」旨を述べました。

県は、なるべく国直轄で行ってもらえるよう調整する、と答弁しました。

というのも、今回15名が亡くなられ、未だ1名の安否不明を出している坂町小屋浦では、70年前、県により作られた石組みの砂防ダムがあるだけでした。県は今から10年前に、少なくとももう一基のダムが必要とみなし、この地にダム建設を計画しましたが、10年経った今でも、まだ工事用道路しかできていない有様なのです。残念ながら、県の仕事はあまりに遅いと言わざるを得ません。そこへ今回の土石流が流れ込み、甚大な被害となったのです。

ところが知事は、本会議での各議員からの「通常の土木建設費を増やすべきではないか」という、多くの議員からの質問に対し、「県はこれまで建設費を削ることで財政調整基金を積み上げて来た。今回の補正が組めたのはその基金があったおかげだ」と言われたのです。つまり、この災害復旧時にさえ、建設事業費はこれからも縮小するよ、っていうことなのです。

そしてさらに湯崎知事は、「今回、想定外の土砂が流れ込んだ地域で人命が失われ、砂防ダムなどのハード整備で救える命は限られていることが分かった。県は『みんなで減災・県民総ぐるみ運動』をさらに推し進める」と答弁されました。この『砂防ダムがあったのに人命が救えなかった』というのは、明らかに70年前に作った石組みのダムも含んだ話なのだと思います。

ちなみに、『みんなで減災・県民総ぐるみ運動』とは、4年前の土砂災害時に湯崎知事が打ち出したもので、住民の自主防災組織を中心に、日頃から地域の避難訓練を強化し、避難勧告が出された時にはすぐに避難し、自分の身は自分で守ってください、というものです。

いっておきますが、自主防災会とは、町内会や社会福祉協議会などの地域住民で作る組織で、私の住んでいる学区でも、毎年決められた日時に住民の一部参加の避難訓練が行われています。参加者はみんな素人で、決められたマニュアルで毎年同じことが行われる、のんびりした平和な行事の一つです。
こんなことが、本当の有事で有効なわけがありません。

ところが知事は、「これまで県が『みんなで減災…』を呼びかけてきたのに、今回の災害では避難せず、被害に遭った人たちが多数いる。どうして避難しなかったのか、これから認知行動学者などを入れて、避難行動が行われなかった理由を解明する』と繰り返し答弁されました。さらに、国に対しても、『住民避難を徹底するよう国の政策に盛り込んで下さい』との要望を提出されたと聞いています。

この火急の時期に、「認知行動学者のご意見を聞いて、住民が避難しない理由を検証する」だって!
私は本会議場で思わず笑ってしまいました。

知事、あなたが今やらなければならないことは、広島県に、いかにハード整備のための国庫負担金を引っ張ってくるか、であるはずです。せっかく官邸もやる気になっているこの機に乗じて、国からいかに沢山のお金を引っ張ってくるかが、知事としての責任のはずです。これは、建設事業費を削ってきた広島県にとって、事業を国に肩がわりさせながら防災対策をする、大きな機会なのです。

極論すればあなたの仕事は、もう広島県の災害対策本部にいなくていいから、とにかく霞が関の各省庁や官邸に日参し、なんでもいいから復旧復興プログラムを国に作らせることです。無理を言ってお願いすることなのです。それを、ハード整備の限界、などと自ら発言し、砂防ダムによる整備をハナから諦めるなど、県民の命を守るトップであるはずの知事として、どこかズレていると言わざるを得ません。犠牲者の死を無駄にしてはならないのです。

だいたい、広島県内には49,500箇所の危険区域があり、そのうちの7,800箇所以上は、ハード対策が必要とされている地域です。しかし昨年1年間で広島県が完工した砂防施設は、たったの8基。このペースでいけば、985年3カ月かかってやっと、砂防施設が全県にできる計算です。長生きしなくちゃ。

広島県の県土は、花崗岩でできています。これが水を含んで風化すると「真砂土」と呼ばれるサラサラとした土となり、それが大雨を受けるとドロドロした泥となって山からの濁流として勢いよく下流へ流れ込みます。広島県は花崗岩でできた山に囲まれ、そもそも人が住むのに適していない地形なのです。

しかし、昭和30年代から40年代の高度経済成長期に、当時の都市計画法に則って、山肌にびっしりと住宅が建てられました。広島の山々をご覧になった方ならば、あまりの傾斜地に住宅が密集している様子にびっくりするはずです。

行政はこれまで、非常に無理して山を開き、住宅を建ててきたのです。避難行動でどうこうできる問題ではありません。広島県土の都市計画そのものを、現在の都市計画法に沿うものに変えていくくらいのことをしなければ、必ず数年後にまた甚大な被害が出るのは明白です。

広島県では、平成11年の土砂災害では32名、4年前の広島土砂災害では77名、そして今回87名。近年だけでも、県内ではこれだけの死者を土砂災害により出しているのですから。

政府が「戦後最大級の豪雨災害」と認定しているこの有事に、「これから認知科学者を入れた有識者会議を開く」などと県のトップが発言するなど、考えられない「お花畑」です。

先日の本会議では、どの議員が何を聞いても、明確で具体的な答弁は出てきませんでした。それはしかたありません。まだ公道の土砂撤去だって済んでいない段階ですから。ただ一つ明確に分かったのは、知事が現在の考え方を変えない限り、広島ではこれからも土砂災害による犠牲者を出し続けることは明白だ、ということだけでした。

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河井 あんり
広島県議会議員(広島市安佐南区選挙区、自民党)

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