児童養護施設を出たあとも困窮する若者をどう救う?

2018年08月30日 20:30

きょう(8月30日)は、珍しく児童養護関連の記者会見に出席した。児童相談所の虐待相談件数が2012年からの5年間だけで倍増の約12万件と恐ろしいほどの惨状になっている(グラフ参照)。

首都圏若者サポートネットワーク資料より

ただ、今回の会見は、この夏のアゴラでも関連記事が相次いだ目黒区の虐待死事件をはじめとする事象とやや異なる。

施設に入るまでの社会的支援については、それなりに関心を集めつつあるが、養護施設を巣立ってもメンタルを病んでしまったりして、自立に苦戦している10代後半〜20代の若者も少なからずいるという。

しかし、そうした若者たちに対する「アフターケア」は、公的支援でほとんど手付かず。NPOなどの組織や里親家庭になった個人が「手弁当」に近い形でなんとか支えているそうだが、困窮する若者の自立を支える「伴奏者」たちを支援しようと、NPOの関係者らが「首都圏若者サポートネットワーク」をこのほど立ち上げた。

児童虐待問題については、アゴラでは音喜多君や駒崎さんがよく書いていて、筆者は全くの門外漢。だから唐突に思う読者も多いだろうから、ちょっとだけ内幕を明らかにすると、同ネットワーク事務局長の池本修悟氏が鈴木寛・文科大臣補佐官の教え子で、筆者と以前からの知己だったことから熱心に(半ば強引に?)記者会見に誘われたのがきっかけだった。

とはいえ、仔細を知ると、政治的課題として感じるところも大きい。

本題に話を戻そう。同ネットワークは今回「若者おうえん基金」を設立する。2000万円を目標にクラウドファンディングを通じて資金を調達し、集まったお金は、若者たちを支援する「伴奏者」に助成金として給付する計画だ。

施設や里親のもとで育った若者を応援する基金をつくりたい!(キャンプファイアー)

ネットワーク委員長に就任した宮本みち子氏(放送大学名誉教授)は「国とは別に民間の力でなにかできるのではないか。大勢の方の協力なしにできない現状だ」と訴える。

困窮している若者たちの特徴としては、養護施設を出たあと社会的に孤立を深めている点だ。過去の事例などからの想定ケースは深刻だ。

生活保護を受けようと思っても手続きがわからずに自暴自棄になった男性や、精神的に不安定なまま職場とトラブルを起こした男性、性風俗で働き友人の家を転々とするうちに妊娠して最後の所持金は1000円の状態で支援団体に駆け込んできた20代女性などが挙げられている。

ネットワークの委員で、児童養護施設「子供の家」施設長の早川悟司氏は「どうやってこどもたちを社会につなげていくか、アフターケアを専門に担っている人たちを側面支援したい」と話していた。

池本氏によると、これまでのヒアリングで若者1人あたりの支援に150万円程度が必要と見積もった。今後、助成金を申請する団体や個人について、有識者による選考委員に承認された場合は、上限150万円が支給される。この「一般枠」に加えて、支援内容が特別なものと認められたものは「先駆的実験枠」として600万円を上限に助成するという。

虐待された子どもたちは保護されても精神的な後遺症により、自立困難になる事例が後を絶たない。国も地方も財政がさきざき厳しくなり、特に都市部では地縁も薄くて助け合いがない中で、既存の公的支援の枠組みから抜け漏れてしまう弱者をどう救うかは、取り残された政治的・社会的課題だ。いわゆる「自助・共助・公助」のうち、いわば「共助」ともいえる民間での取り組みはますます重要になる。

アフターケアを受ける人たちは、大学や専門学校などで高等教育を受けられなかったり、受ける機会があってもメンタル的な理由で中退したりするケースが多い。一方で筆者が気になったのは、ITや福祉といった今後も人材ニーズのある業界は、一定のスキルを身につけていないと就職すら難しい現実もあることだ。

首都圏若者サポートネットワーク資料より(編集部で一部補正)

今回の支援対象として想定している若者では、スキルの練度がそう高くない仕事に就くのですら大変な人もいるだろうが、一定のスキルを培ったほうがより安定的に長く、所得もより多い形で自走できるのも事実だ。この点、職業訓練などのスキルアップの機会をどう作り出していくか、中長期的な課題もあるかもしれない。

まずは、そのスタートラインに立つためにも、「若者おうえん基金」設立が成功するかがカギを握るといえる。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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