吉本興業がアジアエンタメプラットフォーム構想を発表

2018年09月06日 11:30

沖縄国際映画祭の場で、吉本興業が「沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム(仮)設立構想」を発表しました。

「国産のプラットフォームでアジアへと進出する。
日本各地域の魅力をアジアへ、アジア各地域の魅力を日本へ。
沖縄から日本とアジアのエンタテインメントコンテンツの架け橋となるプラットフォームを構築する。」

趣旨ペーパーの冒頭にそうあります。

ゲームクリエイター、ゲーマー、マンガ家、アニメーター、イラストレーター、作曲家、パフォーマー、トレンドクリエイター、二次創作クリエイターなど多種多様なクリエイターを発掘・育成・活躍する場とし、アジア全域でクリエイターやパフォーマーなどの人材を供給する。

沖縄を拠点とし、沖縄のエンタテインメント産業の創出と雇用の促進を目指す、とのことです。

創業106年の吉本興業は、次の100年を見据えた方針として「地域」「アジア」「デジタル」をキーワードに事業を展開しています。

中でも今回10回目を迎えた沖縄国際映画祭は、離島を含む沖縄全域で通年でイベントやライブ、ワークショップなどを開催し、沖縄を日本とアジアのコンテンツが集まるハブへと育てる努力を続けてきました。

そして同月、この会見を開いた場に、エンタテインメントの人材の育成に特化した「沖縄ラフ&ピース専門学校」を開校。
クリエイターやパフォーマーを育て、沖縄で生まれたコンテンツを世界へ発信しようとしています。

さらに、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行のムハマド・ユヌス氏と協業して「ユヌス・よしもとソーシャルアクション」を設立。
全国47都道府県の住みます芸人が地域で暮らして体感した社会問題について、スタートアップ企業のテクノロジーの力とエンタテインメントの力のコラボレーションで問題解決に取り組む活動を始めました。

今回のプラットフォーム構想は、それら大きな事業戦略の延長線上にあります。

大崎洋吉本興業社長は、「20世紀、エンタメはアメリカにやられ敗戦した。21世紀、アメリカの黒船、中国の赤船が来る。日本は自らプラットフォームを持たなければ。」と言います。

ただ、プラットフォームと言っても、どうやら映像配信メディアを作るという単純な話ではありません。

「すべてをエンタメ化する。みんなでエンタメ化する。」というスローガンのもと、表現方法としては映像、マンガ・アニメ、AR/VR、ゲーム、SNS、ライブが挙げられる一方、テーマとしては、教育、地域、観光、地域課題、健康、スポーツが掲げられています。

学校やソーシャルアクションと親和性がありそうです。

会見に臨んだかたからも多様なメッセージがありました。
ビリギャルの作者、坪田信貴さん「教育は本来エンタテインメント。記者会見の仕方、ネクタイの結び方、お箸の持ち方、全て教育☓エンタメになる。面白く学べるようコンテンツ化したい。」

クリエイターのしんどうこうすけさん「マンガは翻訳が難しい「間」の問題を乗り越えるメディア。笑いをマンガに変えて発信したい。」

会見中、記者席にいたぼくに大崎さんが急に意見を求めてマイクが向けられてしまいました。

「この沖縄国際映画祭は、映画もお笑いもあり、沖縄全市町村が参加するユニークでとらえどころのない祭り。それを10年続けた成果がこの学校と、この発信プラットフォーム。人を育てる入口と、海外に発信する出口、その両方を揃える、ということだと解釈します。

政府のコンテンツ政策の2大テーマは人材育成と海外展開。本来、この仕事は国がすべきこと。それを吉本興業一社でやってのけようとしている。すさまじいと感じます。」

ホメ過ぎたでしょうか。いやそんなことないと思うんです。

吉本興業は一世紀前、小屋ライブから始まり、テレビへと主戦場を移し、いまデジタルに傾斜している。
このプラットフォームもその文脈で見られ、納得されそうです。でも恐らく吉本興業はもっと遠くを展望しています。

映画祭や住みます芸人などローカルの掘り起こし。
教育と海外という長期的な新天地の開拓。
社会課題の解決という共存・共生策。

なんというか、利潤やGDPとは別次元の、資本主義の次に来そうな地平を見つめて、「勘だけで100年やってきた」(大崎社長)その正しい勘を働かせている。

そんな感じがするんです。

そして、ぬるぬるドカンと変化を続けつつ、「人」を真ん中に据え、人で仕事をし続ける点は全くブレない。

ただ、芸人6000人の吉本興業の全体像を正しく把握している人はどうやら社内にもいないようで、そんな魅力あふれる不思議な組織をぼくもしばし見つめてみたく存じます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年9月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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