ブロックチェーンの在り方を中心に、衆議院経済産業委員会において世耕弘成経済産業大臣等と議論を交わしました。
第4次産業革命時代におけるブロックチェーンの役割
政府は、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革」において、
中長期的な成長を実現していく鍵は、近年急激に起きている第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミー等)のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決する『Society 5.0』を実現することにある。
とされております。
また、安倍総理は今年の施政方針演説において、
「今、世界中でSociety 5.0に向かって、新たなイノベーションが次々と生まれており、この生産性革命への流れを先取りすることなくして、日本経済の未来はない。2020年を大きな目標に、あらゆる政策手段を総動員していく。」
と述べております。
以上のように、政府は、第4次産業革命によるイノベーションを中長期的な成長の鍵としているが、重視しているもの(技術)は、例に挙げられているIoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボット、シェアリングエコノミーなどがあげられておりますが、その他は“等”をしてまとめられており、あまり重視をされていないように感じます。
そうした中、例えばブロックチェーンは、今後の第4次産業革命を牽引していくにあたって欠かせない技術となると私は考えておりましたが、この技術を現時点で代表的な技術として前面に出していない理由がわかりませんでしたので、政府の見解を問いました。
政府参考人からは、
ブロックチェーン技術は、データ改ざんが難しく、第三者を介さずに安いコストでデータ共有できる等、非常にすぐれた特徴を持つ革新的な技術。
第4次産業革命、これからビッグデータ、IoT、AIが進んでいく中で、 重要になってくるのはデータの共有になるわけですけれども、このデータ共有を支える技術として、このブロックチェーン技術というのは今後大きなポテンシャルがあると考えている。
こうした観点から、経産省はブロックチェーンの利用拡大に向けて調査を行った。
他方、その調査を通じて出てきた課題としては、処理件数に制約があるとか運用手法が未確立だ、こうした課題が指摘されている。
また、ブロックチェーン技術の現時点での活用は、仮想通貨が中心的な分野に挙がっているというのが現状。
こうしたことを鑑みると、重要なのは、実証試験を積み重ねながら、 ブロックチェーン技術の特徴を活かした利用、導入を進めていくということが重要だろうというふうに考えている。
という趣旨の返答がありました。
要約すると、ブロックチェーンは大事だと思っていてなんかに使えたら良いなと思っているけど、今は仮想通貨くらいしか実用的になってないから、もっと実験しながら利用方法を模索してみるよという見解。
前向きだけど何に使って良いかわからないということでしたので、私からは、ブロックチェーンの推進はイノベーションを起こすのに必要だという趣旨の質問を致しました。
ブロックチェーン技術に対する経済産業省の認識
ブロックチェーンは、仮想通貨の取引に使用される技術として有名になりましたが、それだけに留まりません。その構造上、従来の集中管理型のシステムに比べ、データの改ざんが極めて困難であり、また、大規模なサーバが必要ないため、設備投資や維持費用が抑えられ安価にシステムを構築・運用ができることから、金融だけでなく食品流通、不動産、貿易等で相次ぎ企業が採用すると同時に、など幅広い分野への応用が期待されております。
しかしながら、日本政府におけるブロックチェーンの取り組みは、残念ながらあまり力が入っておりません。
その証左として、国における予算措置をされた事業を確認したところ「ブロックチェーン利活用事業費」1億2000万円が計上されておりましたが、これのみであり、予算的にも本腰を入れて牽引していこうという気概は見られません。
その中で、経済産業大臣は、ブロックチェーンという技術が「第4次産業革命」の中でどのような役割を果たすと捉えているのか、またブロックチェーンの技術をどのように評価し、応用分野、将来性、社会的意義などをどのように認識し、活用していこうと考えているのか、世耕大臣に問いました。
世耕大臣からは、
登記簿のような所有権の証明、サプライチェーンの効率性向上、取引プロセスの全自動化など多様な産業分野において広く実用化、活用される可能性が高いものだと思っていて、インターネットの登場にも匹敵するようなインパクトを 経済に与えてくる可能性があると思う。
コネクテッド・インダストリーズの推進にあたって、データの共有や利活用を進めていくに当たって、ブロックチェーン技術などを活用して、分散管理型でデータ連携を実現していくこともあり得る。
中央型とブロックチェーン型のメリット、デメリットがあり、まだやはりクレジットカードの決済システムの方が速くて正確だ。ビットコインはまだ十分単位での取引しか処理できない。その辺りもよく見極めながら、日本がこのブロックチェーンの潮流からおくれることがないように、 しっかりと取り組んでまいりたい。
という趣旨の返答がありました。
コネクテッドインダストリーとは?
期待はしているけど、まだ実用化には早いと感じているというのが、率直な感想かと思います。しかし政府が様子見姿勢では、ブロックチェーンの進展速度は遅くなると考えましたので、私からは、市場を育てていくという意味合いも込めて、成長戦略との兼ね合いについて伺いました。
ブロックチェーンの潜在市場は67兆円と試算
経済産業省の「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査」によれば、ブロックチェーンの潜在的市場成長の予想として、
・国内では価値の流通・ポイント化プラットフォームのインフラ化などのサービスが1兆円
・土地登記、電子カルテ、出産、婚姻、転居など各種登録といった公的書類管理の非中央集権化が1兆円
・デジタルコンテンツやオークションなど高効率なシェアリングサービスに13兆円
・小売り、貴金属管理、美術品などの真贋認証などオープンかつ高効率で高信頼なサプライチェーンの実現が32兆円
・IoT、電力サービス、遺言などプロセス、取引、契約などの全自動化・高効率化の実現が20兆円。
合計で67兆円の潜在市場があると予想されております。
そして価値の流通が進めば、日銀による金融政策による景気対策以外にも民間企業主導で仕掛けができる可能性があったり、サプライチェーンが進化すれば流通がアンバンドル化したり、高効率なシェアリングが進めば、生産者と消費者の境界がなくなり、プロシューマーが一般化するなど、ブロックチェーン技術が市場だけではなく、社会経済や産業構造に大きなインパクトを与える可能性があります。
こうした観点から見ても、ブロックチェーンが社会経済や産業構造に大きなインパクト与えると捉えておりますので、経済産業大臣に対してブロックチェーンが今後の経済産業政策や成長戦略にどのような影響について大臣に問いました。
世耕大臣からは、
経産省としては、サプライチェーン間のデータ連携、これが約32兆円と見ている。また、プロセス、取引の自動化の20兆円も非常に期待の持てる分野だと思う。
民間事業者における金融分野以外の分野におけるブロックチェーンのユースケースの拡大が、非常に重要だと思う。
コネクテッド・インダストリーズ、サプライチェーン全体をブロックチェーン技術を活用を推奨したい。
また(美術品等の)偽物が見分け、登記、決裁文書の改竄防止なども行えるようになる。
社会インフラとしてこれからブロックチェーン技術が育ってくると考えている。
という趣旨の返答がありました。
私自身も大臣と同様の見解であり、ブロックチェーン技術が社会のインフラを創る時代に突入すると考えております。
後編では、諸外国のブロックチェーン技術を活用した取り組みに対する日本政府の見解やトークンエコノミー時代の日本経済について、綴らせて頂きます。
中谷 一馬 衆議院議員 立憲民主党
1983年生まれ。横浜市出身。IT企業「gumi」(現在、東証1部上場)創業参画を経て、2011年神奈川県議選(横浜市港北区)で民主党から出馬し初当選。2度目の国政選挑戦となった2017年10月の衆院選は立憲民主党推薦で神奈川7区から出馬、比例復活で初当選した。公式サイト