おしどりマコは放射能デマの元祖

池田 信夫

立憲民主党は来年の参議院選挙の比例代表の候補者に、漫才師のおしどりマコを公認することを決めました。この記事は2012年2月26日の「池田信夫ブログ」の再掲ですが、その後も彼女はこのような放射能デマを海外にも流し続けています。

週刊文春3月1日号の「郡山4歳児と7歳児に『甲状腺がん』の疑い!」という記事は、悪質な放射能デマである。この記事を書いたのは「自由報道協会理事」のおしどりマコなる芸人だが、甲状腺検査をした医師が記者会見を開き、この記事を全面的に否定した。

事実関係は、北海道新聞が報じているように「札幌市内の内科医らが22日までに、福島第1原発事故に伴う放射能の影響を懸念して同市に避難している18歳以下の170人を対象に無償で甲状腺検査を実施、全員に問題がなかった」というだけの話だ。くわしくいうと、この検査を実施した杉沢憲医師が説明するように

当時18歳以下が、309名中170名。結節やのう胞認めなかったのは136名で80%。5mm以下の結節や20mm以下ののう胞30名で17.5%。福島医大がB判定とした5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞を認めた方は4名1.3%。C判定で直ちに2次検査要するのは0%

という普通の検査結果だ。これがなぜ「甲状腺がんの疑い!」という記事になったのだろうか。週刊文春とおしどりマコの記者会見は混乱していてわかりにくいが、文春は「誤報ではない。見解の相違だ」と主張している。

週刊文春「2名の方は細胞診を受けてない。ガンではないと厳密には確定してないというのが編集部の理解」

「良性の甲状腺結節」というB判定を受けた2人の子供が細胞診(2次検査)を受けていないから「甲状腺がんの疑い!」だというのだ。この「週刊文春デスク」はいい年をしているように見えるが、精密検査を受けたことがないのだろうか。

「しこり」や「結節」などというのはありふれた症状で、2割ぐらいに見つかるのは当たり前だ。今回はエコー検査をしているので、そこで「良性」と診断されたら終わりである。検査で悪性の疑い(C判定)があれば細胞診を行なうが、この場合はC判定がゼロなのだから「全員に問題がなかった」という北海道新聞の記事が正しく、文春の記事は明白な誤報である。

良性腫瘍(結節)と悪性腫瘍(癌)はまったく別物で、前者が後者に発展することはまずない。もちろん癌になる可能性はゼロではない。日本人の50%が癌になるので、当の子供が将来、癌になる可能性もあるが、それと原発事故との因果関係は考えられない(これは文春も認めている)。低線量被曝による晩発性障害が1年未満で発症することはありえないからだ。

今回の記事は「悪性の疑い」という事実関係の根幹が間違っている上に、事故との因果関係も検証していない。初歩的な医学的知識もないおしどりマコが取材源の話を歪曲し、被災者の不安をあおるものだ。自由報道協会の記事がでたらめであることに今さら驚く人はいないだろうが、これを文春がトップ記事にしたことは重大だ。今回の無責任な報道は文春の自殺行為である。