石破氏大善戦と玉城氏圧勝を騙る報ステの矛盾

2018年10月05日 11:30

2018年9月後半に自民党総裁選挙(9月20日開票)と沖縄県知事選挙(9月30日開票)という話題を集めた選挙がありました。2つの選挙に共通していることは、事実上一騎打ちであり、マスメディアが、一方の候補を「力でねじ伏せる傲慢な圧制者」のように報じ、一方の候補を「虐げられながらも圧制者に果敢に立ち向かう誠実な民衆のヒーロー」のように報じたことです。そして2つの選挙で異なることは、マスメディアが推した人物が自民党総裁選挙では落選し、沖縄県知事選挙では当選したことです。この記事では、この2つの選挙結果に関するテレビ朝日『報道ステーション』の論評を論評したいと思います。

自民党総裁選挙

2018/09/18 テレビ朝日『報道ステーション』

富川アナ:今回の麻生氏の発言を石破氏は、現職の総理がいれば圧力をかけてもいいと言う意味で捉えている。
後藤謙次氏:麻生氏・石破氏は戦っている土俵が違う。党員票は19日必着なので終わっていると見てもよい。麻生氏は20日の国会議員投票に向けて「君らしっかり投票してくれよ」と自民党内の国会議員に対して引き締め、悪く言えば締め付けをやっている。一方、石破氏は「こんな自民党でいいのですか」と国民世論に向かって訴えている。つまり、「こんな自民党ではダメですよね。そこから先の事を是非考えて下さい」と。そして党員投票というのは国民に近い。その国民に近い人の投票結果が結果として安倍氏が三選した後の政権運営・求心力に大きな影響を与える。石破氏はそこを睨みながら「こんな自民党ではいけませんよね。是非皆さんもそういうふうに考えて下さい」と訴えている。

自民総裁選において、概してマスメディアは、政策議論に十分に焦点を当てることなく、(1)安倍氏は北海道地震対応を理由に3日間の選挙活動自粛を行い、石破氏との議論を避けた、(2)安倍陣営は選挙後の人事をめぐって石破陣営の議員に対して圧力をかけた、として安倍氏及び安倍陣営の人格攻撃に終始しました。

これらの人格攻撃は、実際には根拠すら乏しく、討論会・演説会は延期されたもののほぼ当初の予定通り実施され、圧力をかけられたと名乗り出た石破派の斎藤健農水相も具体的な状況を語ることはありませんでした。ちなみに、選挙後の組閣では、安倍総理によって石破派の山下貴司議員(当選3回)が法務大臣に大抜擢されています。

2018/09/19 テレビ朝日『報道ステーション』

富川アナ:安倍総理は(秋葉原で)3000人以上動員した。
小川アナ:かなりの人数が集まったということだ。
富川アナ:一般の人は近づけなかったみたいだ。
小川アナ:一番近い所には一般の方々ではない方々がいた。
富川アナ:総理総裁を選ぶ選挙と考えると一般の人たちも聴きたいだろうなと思うが。石破氏が今後も存在感を示していくにはラインというものがあるのか。
後藤謙次氏:やはり明日開票される地方の党員票だ。2012年の総裁選で5人立候補して石破氏は55%得票している。この55%を安倍総理が超えないと永田町と地方党員に乖離が生まれる。そこに安倍氏が超えられるかどうか。
富川アナ:明日の地方票、55%を安倍総理が超えられるかどうか。
後藤謙次氏:そこが一つのポイントだ。

報道ステーションを始めとするマスメディアは、安倍陣営が最終日の秋葉原の演説会で大量の党員を動員し、特等席に配置させて一般国民を排除したかのような批判を一斉に行いました。これも不合理な印象操作です。そもそも自民党総裁選の有権者である党員に対して演説するのは合理的であり、一方で排除された国民を演じた活動家らは、演説する安倍氏に対して大声で罵声を浴びせ選挙妨害を行いました。そのことを知りながら、マスメディアは安倍氏が国民を排除したとして徹底的に批判したのです。

2018/09/20 テレビ朝日『報道ステーション』

富川アナ:議員票は329対73、党員票は224対181、合計553票と254票で安倍総理が三選を決めた。これは石破氏が善戦したと。
後藤謙次氏:大善戦。大善戦と言っていい。この結果で見えてくるのは、安倍一強というのは、永田町だけの虚構だったということだ。
小川アナ:多くの差がついたのが議員票なわけだ。党員票を見ると石破氏は181票ということでかなり善戦した。そして議員票も、テレビ朝日の事前の聞き取り調査によると53票獲得するという見込みだったので20票ほどの隠れ石破票があった。
後藤謙次氏:やはり地方の党員の間に安倍氏に対する批判的空気が相当拡がっている。
富川アナ:後藤さんは大善戦だと。
後藤謙次氏:そう思う。特に党員票については55対45なのでほぼ拮抗に近い。

後藤氏は、全体の票がダブルスコアを超えているにも拘らず「石破氏の大善戦」と断言し、党員票については、前日後藤氏自身が勝利ラインと示唆していた55%を超える得票を安倍氏が集めたにも拘わらず、「ほぼ拮抗に近い」と評価しました。このように自らが前日に設定した基準など無かったかのように「大善戦」「拮抗」と断じたことは、客観はもとより自分の主観をも超越している(笑)いい加減な論評であったと言えます。

沖縄県知事選挙

2018/09/24 テレビ朝日『報道ステーション』

後藤謙次氏:運動の仕方も、玉城氏はまさに弔い選挙。翁長氏の話を前面に持ち出して、知名度を背景に一般の不特定多数の有権者に対して空中戦で戦う。一方の佐喜眞氏は、自民党・公明党の強大な組織力を背景に、企業・団体を個別に撃破していく地上戦でやろうと。

後藤氏は、沖縄の多数が無党派層であることを十分承知の上で、佐喜眞氏は特定の団体・企業、玉城氏は一般の有権者をターゲットとしているような印象操作を行っています。しかも「弔い選挙」という感情に訴える以外の何物でもない玉城氏のスローガンを何気なくアナウンスしました。また、論理的に考えれば、マスメディアから完全に悪魔化されている佐喜眞氏は、マスメディアを通じて政策を訴える「空中戦」を行えるわけがありません。仮に自民党・公明党の組織力が強大であっても、メディアの強大な発信力に比べれば、ちっぽけな力に過ぎません。このように状況は佐喜眞氏に圧倒的に不利であるにもかかわらず、マスメディアは、佐喜眞氏を力でねじ伏せる傲慢な圧制者のように報じ、玉城氏を虐げられながらも圧制者に果敢に立ち向かう誠実な民衆のヒーローのように報じました。その最たるものが投票日前日に放映されたTBS『報道特集』の報道です。

2018/09/29 TBS『報道特集』

日下部正樹氏:それにしても玉城・佐喜眞両陣営の選挙戦を見ていると対照的というか全く違う。
金平茂紀氏:佐喜眞陣営というのは、組織力・宣伝力・物量で玉城陣営を圧倒していたというのが正直なところだ。それに加えて、小泉進次郎議員のような、彼は三度応援に入ってその人気を最大限に活用する。そういう意味ではプロの選挙選を見せつけられた。一方の玉城陣営は、あくまでも草の根の力に頼るというか、「象と蟻」という言い方もしていたが、両陣営の戦い方の違いを見ていると、まるで本土政府と沖縄県の現在の関係の相似形というか、似姿を見たというか、取材を通じての率直な印象だ。沖縄県の有権者の皆さんは明日投票日には是非とも投票所に足を運んで自分の判断で一票を投じてもらいたいと思う。

佐喜眞氏は、普天間基地からの移設を主張しましたが、辺野古基地への移設を言明しませんでした。マスメディアは口をそろえて佐喜眞氏が辺野古移設を言明しないことに対して大バッシングを行いました。なぜ佐喜眞氏が辺野古移設を言明しなかったといえば、言明すれば、マスメディアがそれ以上の大バッシングを始めて選挙にならないことが自明であったからです。一方、玉城氏は辺野古基地への移設反対を主張しましたが、普天間基地からの移設を具体的にどうするのかについてマスメディアは厳しく問い詰めることをしませんでした。その上で、有権者の【ルサンチマン】を煽りに煽る「象と蟻」のような比喩が報道されれば、情報弱者は簡単に騙されてしまします。『報道特集』の悪質なところは、視聴者に本土政府と沖縄県の関係を佐喜眞氏と玉城氏の関係と同一視させた上で、沖縄県民に「自分の判断で一票を投じてもらいたい」と呼びかけている点です。

2018/10/01 テレビ朝日『報道ステーション』

富川アナ:沖縄県知事選は、辺野古への基地移設反対の玉城デニー氏が、自民・公明など与党が推薦した佐喜眞淳氏を8万票もの大差をつけて当選した。与党は総力戦で、菅官房長官や小泉進次郎氏を応援に呼びつけるなどして必勝を期していた。蓋を開けてみたら玉城氏が圧勝という結果になった。
後藤謙次氏:結果を見ると、沖縄県の人たちの翁長氏に対する思いの強さ、それから4年前に翁長氏が当選した後からの政府の対応に今回の圧勝の原因があった。この沖縄の民意を変えるということは力ずくではできないということが今回確定した。民意の確定を受けて次は政府が答えを出す番だ。

前回の沖縄県知事選挙では翁長氏が約10万票の差をつけて当選したので8万票という結果は、前回に比べれば差が縮まったと言えます。富川アナも後藤氏も「玉城氏が圧勝」と表現し、政府を批判しました。ただ、力ずくで民意を操作したのは、後藤氏が言うような政権与党ではなく、偏向報道を行ったマスメディアであったと言えます。沖縄二紙に加えて全国紙が、佐喜眞氏を悪魔化し、玉城氏を偶像化しました。翁長氏の死を利用した「弔い合戦」の大合唱で民意を操作することに成功しました。

自民党総裁選挙と沖縄県知事選挙の結果の比較

偶然ではありますが、自民総裁選の党員票と沖縄知事選における当選者と落選者の得票率はほぼ同じような数値であったと言えます。

【自民総裁選】 安倍氏:55.3% 石破氏 :44.7%
【沖縄知事選】 玉城氏:55.1% 佐喜眞氏:43.9%」

ちなみに、沖縄知事選で、玉城氏と佐喜眞氏の二人の得票に限定すれば、玉城氏55.6%、佐喜眞氏44.3%となり、ほぼ同一の結果です。このような得票率であるにも拘らず、『報道ステーション』の後藤謙次氏は、自民総裁選については「拮抗-石破氏の大善戦」と評価し、沖縄知事選については「玉城氏の圧勝」と【二重規準】で論評したわけです。得票率は両選挙で同じなので、この二重基準を使えば、自民総裁選については「安倍氏の圧勝」、沖縄知事選については「拮抗-佐喜眞氏の大善戦」と評価することもできます。

元々、自民総裁選については、総得票で安倍氏が石破氏をダブルスコアで勝利しているため、「安倍氏の圧勝」と考えるのが妥当であり、また圧倒的な偏向報道の下で「弔い選挙」として行われた沖縄知事選については「拮抗-佐喜眞氏の大善戦」と捉える方が適切です。それを無理矢理に逆転させて一方的に報道するのですから極めて不公正であると言えます。

『報道ステーション』では長年にわたってこのような不自然な論評がまかり通っています[過去記事]

そして今回の報道も例外ではありませんでした。このような非論理的な偏向報道は明らかな情報操作であり日本の報道の危機です。多くの国民が『報道ステーション』のあからさまな偏向報道を強く認識すると同時に、番組につられて不当な世論を形成しないことが極めて重要であると考えます。

「セクハラ」と「パワハラ」野党と「モラハラ」メディア
藤原 かずえ
ワニブックス
2018-09-27

編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2018年19月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。

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