3日の米国債券市場では、米10年債利回りが3.18%と、前日の3.06%から大きく上昇した。4日には一時、3.23%まで上昇し、2011年5月以来の水準に上昇した。米10年債利回り(長期金利)は3%がひとつの壁となっていた。今年4月24日に3%台をつけて、5月17日に一時3.11%まで上昇したことで、ここがあらたな壁と認識された。9月18日に再び3%台に乗せたあと、3.10%近くまで上昇したが抜けきれなかった。しかし、その後は3%台をキープしていたことで、3.11%の壁を突破するタイミングを睨んでいたようにも思われる。
3日の米国債券市場では、いくつか複合的な材料が出たことで、3.11%の壁を一気に突破したともいえた。イタリアのコンテ首相が今後3年間で債務を圧縮する方針を明らかにしたことで、イタリアの財政懸念が後退し、リスク回避の巻き戻しによる動きとなったこと、9月のADP全米雇用リポートで非農業雇用者数の増加幅が市場予想を上回り、9月ISM非製造業景況指数が公表開始以来の最高を記録したことなど米景気の回復を示す経済指標が相次いだこと、原油価格が大きく上昇したことによる物価への影響も意識された。さらにパウエルFRB議長による中立金利水準を超えて利上げを進める可能性あるとの発言も影響した可能性がある。
ただ、このうちのどれかが大きく材料視されたというよりも、ヘッジファンドなどが米債を売るきっかけとして使われたように思われる。利上げ圧力が強まったというよりも、なかなか抜けきれなかった水準を抜いてきたことで、テクニカル的な売り圧力が加わり、米債は売られ、3.2%台までに米長期金利は上昇したのである。
チャートからは次の米10年債利回りのメドは3.5%あたりとなる。FRBのパウエル議長からは「とりわけ輝かしい局面にある米経済」との発言もあり、足元の米国のインフレ圧力は加わっていないものの、今後は物価上昇圧力が掛かってくる可能性もありうる。
FRBの利上げは今年はあと1回、来年も3回程度が見込まれており、この利上げペースに応じた長期金利の上昇もあっておかしくはない。ただし、米長期金利の上昇ピッチが早まると、それは景気の阻害要因にもなりかねない。3日の米国株式市場は米10年債利回りの上昇を好感して金融株が買われ、当初は買い材料となっていた。ところが、その後は金利上昇によるマイナスの影響も意識されてダウ平均の上値を重くさせた。4日には金利上昇が警戒されてダウ平均は200ドル安と大きく下げていた。
米10年債利回りは、3.5%あたりを見据えて、緩やかな上昇トレンドを描くことになれば、米景気に対する影響を軽減させるのではないかと思うが、市場が今後、動揺してくる可能性はある。今年2月5日に米国株式市場でダウ平均は一時1597ドル安となり、取引時間中として過去最大の下げ幅を記録したきっかけも、米長期金利の上昇とされた。
また、米10年債利回りの上昇による日本の債券市場への影響も意識しておく必要はありそうである。4日に日本の10年債利回りは0.155%と8月2日の0.145%を超えてきた。超長期債と呼ばれる20年、30年、40年の国債利回りも大きく上昇してきている。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。