韓国の「戦勝国史観」が日韓関係をゆがめる

韓国大法院の元徴用工判決が大きな反響を呼んでいる。これは外務省も指摘するように、日韓の請求権問題は日韓基本条約で「完全かつ最終的に解決」されたという合意に違反し、日韓関係を1965年の国交正常化の前に戻すものだ。

NHKニュースより:編集部

中央日報によると判決は11対2で、少数意見は「日本企業でなく韓国政府が強制徴用被害者に正当な補償をすべき」として請求を棄却すべきとしたという。これが日韓条約の正しい解釈である。

戦後処理の中で日韓関係がもめ続けたのは、韓国の特殊な歴史観が原因だ。韓国は1910年の日韓併合を「侵略」だと考え、それ以来ずっと韓国人は「抗日戦争」を続け、1945年に「日帝36年」の支配を倒して独立を勝ち取った、と韓国の教科書には書かれている。

この歴史観にもとづき、韓国は1951年にサンフランシスコ条約で戦勝国として21億ドルの賠償を求めたが、連合国に一蹴された。抗日戦争などというものは存在しない。朝鮮半島は1945年まで日本の領土であり、上海に亡命政権があっただけだ。朝鮮が日本の支配から脱却したのは抗日戦争に勝ったからではなく、日本がアメリカとの戦争に負けたからだ。

しかし当時の軍事政権はこの歴史を直視できず、日韓の国交は回復できなかった。その後も彼らは「植民地支配への謝罪と賠償」を求めたが、日本政府は応じず、政治決着として1965年に「資金協力」として5億ドル(民間で3億ドル)の援助を決めた。

これは賠償ではなく、使途を指定しない朴正熙政権への「つかみ金」だった。当時も日本で働いた韓国人の未払い賃金などについての訴訟は個別にあったが、これをまとめて韓国政府が支払い、その資金を日本が援助するという形だった。しかし韓国政府はそのほとんどをダムや道路などのインフラ整備に使い、これが韓国の経済発展の基礎になった。

その後も韓国人の個人請求権は消滅していないが、これは日本政府ではなく韓国政府に対する請求権である。これは2008年に盧武鉉政権が認め、元徴用工の賠償請求権は日本が韓国に無償供与した3億ドルに含まれると明言した(慰安婦などは例外とした)。

これで元徴用工の請求権問題は外交的には決着したが、その後も訴訟で蒸し返された。今回の判決は「個人請求権は日韓請求権協定の適用対象に含まれない」として、韓国政府の立場をくつがえした。

こういう奇妙な事件が続く原因は、韓国政府の正統性の根拠に「抗日戦争で独立を勝ち取った戦勝国だ」というフィクションがあるからだ。韓国の教科書にはそう書かれ、子供のころからそう教え込むので、裁判官も含めて多くの人が「日帝36年」の歴史を信じている。

このような韓国人のアイデンティティのねじれをつくった原因が、日本の植民地支配にもあることは否定できない。日韓条約にはその贖罪意識もあったと思うが、21世紀まで持ち越す話ではない。韓国人が自国の歴史を客観視できる大人になるまで、この問題は解決しないだろう。