自由な移民は福祉国家と両立しない

2018年11月09日 17:30

臨時国会は、入管法改正案で大荒れだ。この原因は、人口減少と高齢化という構造問題に安倍政権が場当たり的な移民政策で対応しようとしているからだ。次の図でもわかるように、生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8716万人をピークに毎年ほぼ1%下がり続け、2060年には4400万人程度になると予想されている。

人口の推移と予測(内閣府)

政府の計画する「10年で50万人」程度の外国人労働者で、この大きな人口減少を埋めることは不可能だが、それ以上増やすことも困難だ。同質性の強い日本では、他民族に対する拒否感が強い。戦前には朝鮮半島から人口の1%程度の「移民」を受け入れたが、それでも民族差別が大きな傷跡を残し、今も日韓の「歴史問題」として尾を引いている。

人口減少そのものは大した問題ではない。日本は「経済大国」ではなくなるが、世界最高レベルの人口密度は低くなり、一人当たりGDPが上がれば生活の質は上がる。この点では日本の実績は悲観すべきものではなく、一人当たり成長率は先進国の平均程度である。今後も、それほど大きく落ち込むとは思えない。

問題は社会保障のゆがみが拡大し、国民負担が大きくなることだ。今後の平均成長率を1%としても可処分所得が絶対的に減少し、国民負担率(税・社会保険料)は国民所得の60%を超えるおそれが強い。この負担増を是正する上では若い移民を増やすことは意味があるが、5年以内の短期在留で年金保険料を取ることはむずかしい。

他方、外国人労働者が医療保険や生活保護にただ乗りするケースも増えている。国会でも医療給付の不正受給や社会保険料の不払いが問題になっている。特に日本の社会保障は老人偏重になっており、そのひずみが移民で拡大するおそれが強い。

ミルトン・フリードマンは「自由な移民は福祉国家と両立しない」と指摘した。彼は移民には賛成だったが、すべての移民の生活を国家が保障することはできないと論じた。国家の中で人生が完結することを前提にする社会保障という制度は、国境を超える移民には適していないのだ。

アメリカでもヨーロッパでも、人々はこのパラドックスに気づき始めているが、日本では幸か不幸か、それほど多くの移民を入れることはできないだろう。日本はもう外国人労働者にとって、それほど魅力的な国ではないからだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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