弁理士が解説!『下町ロケット』に学ぶものづくりのヒント

2018年12月04日 06:00

出典:TBSテレビ『下町ロケット』より

『下町ロケット』は、池井戸潤による小説。宇宙科学開発機構の研究員だった佃航平が、死んだ父の経営していた中小企業「佃製作所」の社長となり、社員たちと共に奮闘する姿を描いている。2015年10月期に平均視聴率18.6%を記録した連ドラの新シリーズが放映されているが、2日の第8話(日曜劇場/TBS)の平均視聴率は11.5%を記録した。

「『下町ロケット』にはビジネスのあらゆるヒントが隠されています」。そのように主張するのは、山田龍也弁理士(クロスリンク特許事務所)である。今回は、新規事業立ち上げに関する話を伺った。

新規事業立ち上げを成功させるポイント

――山田弁理士は新規事業の成功には3つのポイントがあると解説する。新規事業の立ち上げは企業にとっての必須の課題である。既存事業だけで利益を充足できるとは限らない。そのため、新規事業の確立は多くの企業にとって喫緊の課題ともいえる。

「新規事業立ち上げを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。私は、新規事業を成功させるポイントは3つあると考えています。新規事業立ち上げを成功させるための第1のポイントは『技術的資産』です。」(山田弁理士)

「新たな分野に参入するということは、その分野に関しては素人ということです。先行して参入していた会社の方がその分野に固有のノウハウを蓄積していて一日の長があるわけです。そのような状況の中で先行者に勝つためには、先行者が持っていない固有の強み、技術的なアドバンテージが必要となります。」(同)

――財前が所属する帝国重工の技術的資産。それは自社で打ち上げた準天頂衛星「ヤタガラス」と、その「ヤタガラス」から得られる高精度の測位情報。高精度の測位情報は無人農業ロボットを正確に動かすために必要不可欠な技術だと、山田弁理士は解説する。

「既に『ヤタガラス』の測位情報を利用して研究を行っている野木はこんなことを言っています。『精度に注目して欲しいんだ』『ヤタガラスのおかげで誤差は3センチ以下』『前は10メートル位、蛇行したりしてたからな。この精度は夢のようだ』。」(山田弁理士)

「無人農業ロボットの第一人者である野木にも認められる程、高精度の測位情報。この情報自体は他の会社にも提供されるものなのかもしれません。しかし、『ヤタガラス』を熟知し、最も上手に使いこなせるのが帝国重工なのです。」(同)

――第2のポイントは「人脈」である。その理由は次のとおりである。

「自社で賄えないものは他社から調達してこなければなりません。帝国重工が無人農業を展開する上で自社で賄えないのは『農機具専用の小型エンジンとトランスミッション』『農機具を無人制御するためのシステム』です。財前は佃にこんな依頼をしています。『帝国重工のラインナップには農機具がありません。佃さんには弊社が新しく開発する農機具のエンジンとトランスミッションを供給して頂きたい』『野木さんを説得して頂けないでしょうか。野木さんの協力がない限り、このビジネスは成立しません』。」(山田弁理士)

「佃製作所は大手農機具メーカー・ヤマタニに小型エンジン『ステラ』を納入している実績があります。農機具用トランスミッションの開発も進めている真っ最中。そして、野木は佃の学友で、無人農業ロボットの第一人者。農機具の無人制御システムを長年の研究してきてノウハウを蓄積しています。財前は盟友・佃との人脈、ホットラインを活かして、帝国重工には欠けているこの2つを調達しようとしたわけです。」(同)

――未知の分野に参入するのであれば、専門家と手を組んだ方がリスクが少ない。キーマンにいち早く接触し、仲間として取り込むために、人脈が重要な要素であることは間違いない。そして、第3のポイントは「事業にかける思い」である。

「財前が新規事業を企画したのは、農業の将来に対する強い危機感からでした。佃に対し、事業にかける思いをこんなセリフで吐露しています。『今の日本の農業は高齢化が進み、深刻な労働力不足に喘いでいる。このままでは10年後には日本の農業は廃れ、ノウハウまで失われることになりかねない。この危機的状況を救いたいと思いました。』(山田弁理士)

「財前は『日本の農業』という大局的な見地から、未来を救いたいという強い思いをもって事業を企画立案しています。そのような強い思いを持った事業であれば、企業にしっかりと根を張り、将来を担う大きな事業として育っていくのではないでしょうか。」(同)

3つのポイントのまとめ

山田龍也弁理士(講演会にて撮影)

「3つのポイントとして、『技術的資産』『人脈』『事業にかける思い』を挙げました。物、人、気持ちと言い換えてもいいかもしれません。財前から無人農業ビジネスを引き継いだ的場(神田正輝)は人脈や信頼関係など見向きもしない男です。下請けを道具としてしか捉えず、容赦なく切り捨ててきました。また、自分の出世にしか興味がなく、事業に対する思いなど、これっぽっちも持ち合わせていません。」(山田弁理士)

「さらに、的場のコバンザメ・機械事業部製造部長の奥沢(福澤朗)は自前主義に走り、佃製作所をはじめとする下請け企業の力を見下しています。3つのポイントを思いっきり外しているこの2人。新規事業が成功すると思えないのは私だけでしょうか?」(同)

3つのポイントを踏まえたうえで、事業に対する強い思いを熱いビジョンに変換していくこと。この作業によって構成員のベクトルが一致し、困難を乗り越え成果を上げることが可能になる。なお、貴重な情報をいただいた、山田龍也弁理士に御礼申し上げたい。

銀座のスイーツ弁理士・山田龍也の「ササるブログ!」
※ご関心のある方はこちらもご覧ください。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員

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コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員

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