世界オタク研究所 スタートイベント@慶應義塾大学三田キャンパス。
「オタク文化研究の現状と国際研究機関の必要性」
国際オタクイベント協会 佐藤一毅代表
東京工業大学 出口弘教授
ロンドン大学 三原龍太郎講師
日本経済大学 中村仁准教授
とぼく。
世界中のオタク研究者の総本山を作る構想です。
ポップ&テック特区CiPに設立・誘致します。
シリコンバレーとハリウッドを合体する、けれど、ポップで、おもしろくて、クリエイターもユーザーもゲーマーもオタクもYouTuberもコスプレーヤーもみんなが集う、日本にしかできない街に。
きっかけは桜井孝昌さんの構想です。ポップカルチャーの普及活動で外交官数十人分に匹敵する役割を果たしてきた桜井さんが2015年12月4日に事故で亡くなりました。その前日、ぼくたちは国際オタクコミュニティを育てて、国際連携を強化するプランで合意し、握手した。その思いを継ぐものなのです。
桜井さんが事務局長を務め、佐藤一毅さんが代表を務める国際オタクイベント協会(IOEA)と連携します。現在43の国と地域、114イベントが加盟しているIOEAとCiPが連携することで、海外の大学や研究者とのルートも広がります。世界の研究者のハブができます。世界のオタク研究を元気にできるでしょう。
「オタク研究の第一人者をネットワーク化し、2020年に完成する竹芝の新施設に研究拠点を設置することにしました。5大陸のさまざまな研究者やファンが喜ぶ研究機関に育てていければよいと思うので、みなさんにぜひネットワークを広げていただきたい。」とごあいさつしました。
東工大出口教授が「日常性と多様性の物語群」と題して、同人イベントとしてのコミケとウッドストックを比較分析するなどド迫力の講演をなさったのを受け、討論。話は文化人類学、政治学、社会学、経済学、教育学、工学にわたるものとなりました。
三浦さんは「オタク研究という分野はない」と切り出しました。アニメ・マンガ研究のロンドン大学PhDを文化人類学で取ったと。PhD in オタク研究で取れるようにできるかという提起。ぼくもコンテンツ論でPhDを取ったが、何学かは示せずじまいでした。できるといい。
そして三原さんは教育から見ると、雇用をどうするか。入口はポップカルチャーで日本の勉強をしても産業の出口がない。オタクを勉強することでキャリアパスが描けるか。という提起。重要な視点。産学連携で産業研究もからめていきたい。
出口さんは「日本ほど多様なジャンルのものが立ち上がっている国はない」と指摘、しかも「ハイアートではなく下から上がってくる世界」であり、そのフレームワークを作ることが大事と説きます。日本においては、これはコンセンサスでしょう。
これに関し佐藤さんは「米欧中は王様が民衆に示す文化だが、オタク文化は表現の民主化。誰でも何でも表現することが認められる。コミケはその民衆文化の典型。」と指摘。その価値を世界で承認するのか、あるいはそれも含む多様な文化の価値を共有するのか。
中村仁さんは「オタク研究も埋もれたものや残っていないものも多い。」と指摘しました。出口さんが「資料のデジタル化が必要で、実はアマゾンに助けられている面もある。」と答礼。研究インフラをどう整備するかも一つの論点です。
「ぼくは政府の戦略論議にも加わり、この10年でこの分野の重要性は認知されるようになったが、腰が定まったわけではなく、下からの民衆文化であるせいで規制論がすぐに姿をもたげる危なっかしい状況です。各国のスタンスも多様であり、国際比較・連携を深めて多様な文化の共存を目指したいです。」
「この点、オタク研究ジャンルのアカデミックな軸ができるとうるわしいし、産業政策的な面での「出口」ができるといい。同時にポップカルチャーは技術と密接な関係があります。デジタル技術、スマート技術が文化を大きく変化させ、それがまた技術に作用しました。」
「今そして新しい技術の大波が来ている。AI、IoT、ブロックチェーンといった一連の技術がポップカルチャーとどうからみあうのか。2020Tokyoはそのショウケースがとなるが、そこにオタク研究はどう関わるのか。文化研究にとって2020は重要なポイント。注目したい。」
「世界オタク研究所は世界中の研究者の砂場になりたい。自由に遊んで、勝手に山を作って、掘り下げられる。同時に研究資金やビジネスのおカネが回る工夫もしたい。」としたうえでぼくは「2020竹芝にできるCiPの場は、この研究所がタダで自由に使えるようにする。」と誰の了解も得ず宣言しました。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2018年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。