PayPayで沸騰。ポイント還元競争に潜む落とし穴

2018年12月15日 06:00

総額100億円に達するまで、買い物をしたら20%ポイント還元、さらに抽選に当たれば100%還元とうたって始まったスマホ決済のPayPayのキャンペーンが、当初予定された来年3月末ではなく、先週木曜日夜に条件の一つだった100億円に達したということで、わずか10日間で終了した。

PayPay公式サイトより(キャンペーンは現在終了:編集部)

PayPayは、スマホを使ったQRコード決済で先行するLINE Payや楽天Payに利用者数で追いつくために、破格の条件のキャンペーンを行ったわけで、少し極端ではあるが、ほかでもクレジットカード利用に5%とか家電量販店での商品の購入に10%など、高率のポイント還元は多い。

最近では政府さえも、消費税増税対策とキャッシュレス化推進を目的に、2%のポイント還元を検討中と報じられている。

世の中どこもかしこもポイント真っ盛りの感があり、消費者の立場からすれば、結構なことばかりのようだが、ポイントには、気を付けないと落とし穴がある。

一つは、今回急いで家電製品等をPayPayで買った人の中には、今むりに買わなくてもよいものを買ったり、もう少し待って性能の良いものが出たら買うつもりだったものを、焦って買ったりした人もいることと思う。

景品表示法は、過大な景品類の提供によって消費者の自主的かつ合理的な選択が阻害される恐れがある場合に、これを禁止して消費者の利益を保護することを目的としている。景品は取引価額の20%までとされ、それを超えたものは違法な景品として措置命令が出されたり、課徴金が課せられたりする。

今回のPayPayは20%のポイント還元なので、法の制限ギリギリといえようが、PayPayのポイントとそれに紐づけられたクレジットカード等のポイントを合わせれば、20%を大きく上回ることになる。ポイントを付与する主体が別々なので違法ではないのかもしれないが、法の趣旨からするとおかしい。

もう一つの落とし穴は、セキュリティが十分かどうかということだ。クレジットカードなどの大規模な決済系のポイントは、セキュリティは万全の態勢になっているとおもわれるが、スーパー、デパート、ホテル、航空会社などが独自に設定しているポイントシステムの中には、セキュリティー対策が十分でないところも多いように見受けられる。

今年11月に九州のスーパーマーケットで、来店ポイントが不正に取得され、約1か月半で約540万円分の来店ポイントが不正取得される事件があった。犯人は45台のパソコンを使って九州一円に展開する約70店舗に合計約269万回も訪れたようにして、ポイントを不正取得したのだ。

この他にも、ポイントシステムに不正ログインが行われて、ポイントが別のカードに移されてしまうという事件がこの数か月の間にも複数発生している。また、外国では航空会社の職員が顧客のマイレージを顧客に知られないように抜き取る不正も行われているとのことで、ポイントにまつわる不正は表面に出ているのは氷山の一角で、実際には相当多いのではないかと思われる。

これは消費者がポイントについて、自分の預金残高ほどには敏感になっていないことも大きな原因だと思われる。総務省の資料によれば毎年約4000億円分のポイントが付与されているが(2014年度の推計値)、そのうちの3~4割は使われないままになっているという。そこが犯罪者に狙われるのだ。

さらに、犯罪者に不正に取得されるのはポイントだけではない、ポイントカードを申し込む際に登録した氏名、住所、電話番号などの個人情報がハッキングを受けて流出することも多い。

クレジットカードについては、VISA、Masterなどの国際ブランドのセキュリティ基準や割賦販売法の厳しい規制に基づいて、業界団体が自主的にクレジットカード番号等が外部に漏れないような対策を講じているが、ポイントについてはその付与する主体が、スーパーのチェーンやデパートだったり、ホテルや航空会社だったり、はたまた地方自治体だったりと、様々なものが入り混じったカオス状態になっていることも、ポイントのセキュリティ対策が不十分なことの一つの原因だろう。

今やポイントは私達の生活のいたるところで取得したり、使用したりするものとなっているが、最近ではポイント間の交換ができるものも多くなっており、益々身近で便利になるととともに次第にポイントの性格が本来の景品や“おまけ”といったものとは変質してきている。

資金決済法によれば、対価を得てポイントを発行すると前払い式支払い手段に位置付けられて、未使用ポイント残高の2分の1以上のお金を預託するか、金融機関から保証を受けるかしなければならないなど、厳しい規制が課せられる。このため現在付与されているポイントは大多数が、対価を得ないで発行される、景品や値引きとしてのポイントで、法の適用対象外とされている。

しかし、ポイント交換によってギフト券などの金券に近いものに替えることが出来る種類のポイントが多くなり、そのギフト券などを第三者に譲り渡すことで、事実上ポイントが貨幣に近い価値と機能を持ち始めている。そろそろポイントに対する法の考え方を変える必要があるのではないだろうか。

もちろん何でもかんでも規制をすればよいというものではないが、消費者が安心して、ポイントの持つメリットを十分に享受できるようにするためには、ポイントに潜む落とし穴をふさぐように、立法及び行政の対応が必要になってきている。

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有地 浩
株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)

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