水道民営化は蓮舫大臣が提案実現というブーメラン

八幡 和郎

「水道民営化を最初に認めたのは民主党政権下で蓮舫が担当大臣だった。どうせ忘れてるだろうが。またもやブーメラン炸裂か」とFacebookに書いたら非常に大きい反響をいただいたので、アゴラの読者にも説明しておきたい。

写真AC、蓮舫氏ツイッターより:編集部コラージュ

そもそも、もともと、水道法上は市町村の同意を得れば民間事業者も水道事業を経営可能であって、市町村内全域の水道事業を民間事業者が経営している事例はないが、リゾート地等において計画給水人口が5千人を超える民営水道が9事業ある。

リゾート開発では、水道に限らずインフラ整備を民間業者が行って、地方公共団体に干渉されずに事業を進めることはあるし、開発業者が破綻したりすればサービスが止まるのは当たり前だ。民間ディベロッパーによる開発ということ全般の否定であり水道特有の問題でないので、こういうケースでの失敗例を民営化反対の理由にするのは見当外れである。

さらに、平成23年(2011年)の民主党政権時代に、蓮舫大臣のもとで、PFI法案の改正により、コンセッション方式が導入され、①水道資産を地方公共団体が所有し、②地方公共団体と民間事業者の契約により、③民間事業者が水道事業の運営権を獲得する制度が導入された。

これは、水道事業の経営を含めたすべての業務について民間事業者が包括的に担うことにより、民間事業者のノウハウや技術力が活かされる余地が大きい。いまのところ、日本の水道事業者での導入事例はないが大阪市が検討中である。

今回の水道法の改正は、さらに、バリエーションを拡げるために、給水責任を自治体に残したままでのコンセッション方式を導入するという中間的な形態も認めることにしたものである。

したがって、民主党政権下で、市町村全体の水道事業を給水責任も含めて民営化することは、問題ないということで議論は終わっているのであり、今回の水道法改正で民営化に伴う問題一般について議論を蒸し返す必要はないはずだ。とくに、民主党の流れを汲み、担当大臣だった蓮舫氏が所属する立憲民主党が反対論を展開することは許されないのである。

もし、するとすれば、自らの立案した法律について懺悔をしたうえで、謙虚に制度改正を提案するしかないはずだ。もちろん、今回の水道法改正が、公の関与を必要以上に強くすることの問題を指摘するなら筋が通ったことだ。

法案審議について、時間が足りないという意見もあるが、そもそも民主党政権下の法改正が間違っていたかどうかまで議論する必要はないはずである。

また、移民政策についても、水道法改正についても、本当にそれが大問題だというなら、代表質問や予算委員会で、重点項目として取り上げるべきで、モリカケ問題で無駄に時間を浪費し、世界各国で類例がないほど閣僚を国会に縛り付けておきながら、時間が足りないも何もないだろう。