ゴーン無罪も仕方ないと日産も検察も割り切るべし

2019年01月11日 16:01

しばらくゴーン事件について書かなかったのは、私が逮捕直後から年末にかけて書いていたので論点は尽くしていると思ったし、だいたいその通り展開しているからだ。

ただ、「どうして書かないの」「その後の展開についての八幡さんの意見も聞きたい」という声もあるので、その後出てきた情報について少しコメントしたい。

日産サイト、Wikipediaより:編集部

そんなことは最初から分かっていることだが、カルロス・ゴーンは、金融とか株とかでボロもうけをしようというタイプの人間でない。エコール・ポリテクニークからパリ鉱山学校という経歴からも明らかなように、典型的な技術屋社長である。私もゴーンはいかにも技術屋社長らしいまじめさと石橋を叩いて渡る合法性について慎重な人間だと思う。逮捕されたのが驚天動地だったのも当然である。

したがって、マネーがらみの話については、損をしないようにリスク回避をするという頭はあっても、そこで濡れ手の泡をするという発想からは縁遠い。

また、非常に違法とされることを怖がり臆病な人物だ。この点に関しては、ジャーナリスト伊藤博敏氏の指摘が分かりやすい。

ついに検察と全面対決…「ゴーン容疑者の猛反論」ここがポイント(現代ビジネス)

「ここにあるのは、ゴーン容疑者の「合法へのこだわり」である。最初の逮捕容疑で、既に起訴された有価証券報告書への虚偽記載もそうだったが、約20億円の報酬を退任後に受け取る契約にし、約10億円のみを記載することが合法かどうかを、共犯のグレッグ・ケリー被告にしつこく確認させ、内外の法律家に「合法」とのお墨付きを得ている」

「これがゴーン容疑者のプロ経営者の“証”であり、今回の事態は想定していなかったにせよ、かかる事態には“備え”ている」

「プロ経営者というだけでなく、ゴーン容疑者はブラジルに生まれてレバノンに育ち、フランスで教育を受けてエリートにのし上がった人である。三重国籍を持つゴーン容疑者が、公私ともに優先すべきは合法か否かであり、それは当然のリスク管理である」

「ゴーン容疑者には、検察の過去の成功体験も正義を求めた歴史も、司法マスコミと連動した印象操作も通じそうにない。逆に、国籍を持つ三ヵ国の大使館やメディアを効果的に使って、合法を強調、日本の刑事司法の歪みで揺さぶる」

「かつてない強敵だが、新しい捜査手法の司法取引を使っただけに、失敗は許されない。ゴーン容疑者がしつらえた「合法のカベ」を、検察は乗り越えられるだろうか」

大手メディアは検察や日産からの大本営発表をありがたくまき散らしているが、少し、抵抗した痕跡があることがある。NHKが、「ゴーン前会長“不正支出” 実業家個人への支払い社内で検討か」というニュースを流した。実業家個人への支払いを検討したから業務上のことでないとはいえないので意味不明の記事だが、次のようにニュースは続けた。

「ゴーン前会長は「ジュファリ氏には日産への投資を呼び込むため中東の複数の国の要人との面会をセッティングしてもらった。信用保証に協力してもらう前の年にもジュファリ氏側には3億円を支払っており、正当な報酬だったことは明らかだ」などと容疑を否認しているということです。」

つまり、ジュハリ氏には保証の前年にも3億円の支払いがされているようだ。これでは、ジュハリ氏への支払いが、保証と関係あるというのは無理ではないか。仕事の中身がなかったということの立証は容易でないはずだ。

日産では、100人超の人間をゴーンの犯罪探しに動員しているそうだ。人件費だけでもかなりのものになるだろう。費用対効果が悪そうだ。社員たちもこんな状況では公平な立場で真実を証言できないだろう。社内抗争で社長が会長に勝つためにこういう金の使い方し、ゴーン派とみられる幹部社員には自宅待機にしているとか。

こんな会社はつぶれても誰も驚かない。海外から、悪代官と組んで外国人や外国企業には何でもするごろつき企業と信用されなくなってどうする。もっとも日産の株が下がるのをいちばんやきもきするのはゴーンかもしれないが。

ゴーン勾留の理由として裁判長が、外国に生活拠点があり逃亡の恐れがあることを挙げたが、そんなことをいってはまずいだろう。麻薬とかの関係ならまた別だが、外国人なら捕まえておくと言うことか。

法廷でゴーンは、「ここで、『死亡テスト』をしてみたいと思います。きょう、私が死亡したとして、私の相続人が日産に退職慰労金以外の支払いを求めることができるでしょうか。答えは明白に『いいえ』です」といったという。

直訳が過ぎてあまりよい翻訳でないが、「きょう、私が死亡したとして、私の相続人が日産に退職慰労金以外の競合会社への就職をしないとかコンサルタントをするとかいう名目での支払いを求めることができるでしょうか。それができない以上は支払いが確定していなかったということでないでしょうか」という意味だろう。これは私も指摘してきたところだ。

ワシントンポストが

『さらに無罪を訴えたゴーン容疑者の意見陳述について「検察が明らかにしている証拠よりも説得力があった」と評価。法廷ではなく役員会で扱う問題のように見えると結論付けた。』

と総括したのも当然のことだ。

わたしは、ただちに、検察は起訴を諦めるべきだと思うし、ゴーンが復帰して西川社長が退任すれば、日産の将来は安泰だし、後は、日仏両政府も交えて三者連合の枠組みを話合った方が良いと思う。

マクロンがゴーンに出した指示は曲解されているが、「ポスト・ゴーンの三者連合をどうするか不安定なのはゴーンの責任であってそれをきちんとすることを条件に時間を与える。一つは、将来ビジョンを明らかにすること、後継者を早急に育てることだ」ということであって、100パーセントもっともな話だ。

ただ、そうはいっても、ゴーンのやり方が合法であってもいじましかったのは事実だから、ルノーでも続投は難しいだろうが。

検察は意地でも起訴するだろう。しかし、そのときに、いい加減、「新しいタイプの事件なので、判断を裁判所に委ねる」と割り切ったらどうか。釈放もし、裁判に出てくるのを条件に海外にも行けるようにすればよい。そのうえで、無罪になったとしても、かえって日本の司法は公正だといわれる。

逆に、いまのような状況のままで有罪にしたら、それこそ、日本の司法は抜本的な改革を外圧で迫られるだろう。ワシントン・ポストの報道をみれば、この事件の背後にアメリカがあるなどということはなく、逆に、この事件のようなことがあれば、アメリカ人ビジネスマンも日本とビジネスするのは怖くてたまらなくなるのである。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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