北海道知事選:鈴木市長を敬遠し、橋本聖子を担ぐ人たちの不可解

2019年02月02日 06:02

北海道知事選が3年前の都知事選並みに「劇場型」の様相を見せようとしている。高橋はるみ知事の参院選くら替え出馬に伴い、自民党は一度、夕張市の再建に奮闘してきた鈴木直道市長(37歳)の擁立に傾くかと思いきや、自民党の道議会議員の半数近い勢力が待ったをかける展開に。この勢力は、和泉晶裕・国交省北海道局長の擁立を模索したものの、和泉氏に断られた。

それでも諦めきれない人たちは、参議院議員の橋本聖子氏(54歳)の擁立へとシフト。そして、鈴木氏が29日に機先を制す形で出馬表明をするや、きのう(2月1日)になって橋本氏も出馬に意欲を見せたことで情勢は混沌としてきた。

鈴木氏、橋本氏ツイッターより

人気・データ的には鈴木氏の擁立のはずが、橋本氏浮上の急展開

鈴木氏は東京都職員時代に財政破綻した夕張市に応援で派遣されたのをきっかけに2011年の市長選で初当選。就任当時は若干30歳。経験不足も憂慮されたが、手取り月収を約15万円に抑えるなど究極の「身を切る改革」を自ら実践。2006年の破綻時に353億円あった負債は、195億まで減らすなど、一定の成果を出してきた。

安定した東京都職員の座を捨て、若くして少子高齢化ニッポンの最先端とも言える難局に飛び込んできた鈴木氏は、度々メディアでも取り上げられ、北海道内の市長では唯一「全国区」の知名度と言えよう(東京都民は札幌市長の名前は知らない人が圧倒的だ。俺も知らん)。鈴木氏が出馬表明した際には堀江貴文氏、函館出身のGLAYのボーカル、Teru氏らがツイッターでエールを送るなど、鈴木氏の親交の広さを印象付けた。


定性的なイメージだけでなく、定量的にも見込みは出ていた。自民党本部が現職の高橋氏と鈴木氏、和泉氏らを対象に事前に情勢調査をかけたところ、鈴木氏は高橋氏(40ポイント)の後塵を拝したとはいえ、20ポイント。官僚にすぎない和泉氏は数ポイントしかなかったいう。データを重視する選挙感覚があれば、トップの高橋氏が国政に転出する以上、これで決まりだ。

ところが和泉氏を担ごうとした人たちは、知名度勝負なら圧勝できると言わんばかりに今度は橋本氏を担ぎ出してきた。筆者は鈴木氏、橋本氏ともに面識はないが、東京からみていて不思議なのは、鈴木氏の出馬に異を唱える人たちは、それなりに勝てそうな鈴木氏に知事になられるとよほど困る理由があるようだ。北海道は伝統的に左派が強く、2016年参院選では、北海道選挙区3議席中2議席を、当時すでに落ち目だった民進党がゲットしている。このため、自民支持の一部のネット民からは共倒れを危惧する声も出ている。

ネットユーザーの反応は?グーグルとヤフーで検索状況を分析

鈴木氏も市長としては有名人だが、橋本氏は言わずもがな冬夏合わせて7度五輪に出場した「オリンピックの申し子」。投票率の高いオールド世代には「国民的知名度」として定着している。鈴木氏、橋本氏を比較した最新の情勢調査のことはまだ聞いてないが、グーグルトレンドを使い、ネットの検索量で一定の関心の度合いを推量してみよう。「鈴木直道」「橋本聖子」の過去1年の検索量は、やはり「橋本聖子」が上回っている(平均値で5対15)。

ただし、これは日本全国での検索動向だ。これを北海道に絞ってみると、

意外や意外。38歳の青年市長と国民的知名度のある元メダリストが通年でほぼ互角(平均値で8対6)。鈴木氏はここ最近の露出量の急増があったのを割り引いてみる必要はあるだろうが、ネットで情報を集める世代の支持動向を推測する上で興味深い。

では、今度はヤフーのリアルタイム検索で比較してみると、

ヤフーの検索量は全国が対象なので、そこは橋本氏が4倍上回る「貫禄」を見せた。その一方で、リアルタイム検索はSNSの投稿内容についてポジティブ or ネガティブを機械的にジャッジする。すると、橋本氏は検索量が多い割にネガティブな投稿内容が目立つ。筆者の経験から公平にみると、ベテラン政治家として30%台は平均的なほうだが、鈴木氏と比べて見た場合、過去の不祥事に関する言及が目立ってしまう。

有名なところでは、男子フィギュアスケートの羽生君と宇野君ではないほうのメダリストに対して「キスを強要していたのでは?」という文春砲のセクハラ疑惑。当時、橋本氏は「はしゃすぎた」と釈明に追われたが、ネット上ではオホーツクの流氷を溶かすような熱いキスシーンの写真が出回ってしまっている。

あくまでイメージです(が、実際とは乖離してそうです。写真AC)

物足りない「橋本派」の説明

橋本氏がこのまま出馬した場合、陣営のブレーンはネガティブキャンペーン対策が強いられるのは必至だ。ただ、そうした後ろ向きな対策以上に、なぜ若いといえど行政経験の「豊富」な鈴木氏では「不適格」で、閣僚経験がない橋本氏でなければならないのか?札幌五輪招致に向けた「顔」という大義名分があるのか、それ以外に橋本氏でなければダメな何かがあるのか?今ひとつ明確な説明が報道されていない。道内メディアも何か奥歯に物が挟まったような物言いで、逆に何かあるのではと勘ぐってしまう。

これは筆者の意見ではないことを断った上でだが、すでにツイッター上では、

札幌五輪利権を作ろうとしていて、鈴木直道だと札幌五輪利権を潰す可能性があるから橋本を擁立したがっているのではないか?

といった意見も飛び交っている。橋本氏を推す人たちはこうした疑念にも応える必要はあるだろう。

この手の分裂選挙になると、情報戦も激しくなり、逆に今度は鈴木氏が文春砲を食らって唐突なパワハラ疑惑報道みたい展開がふってわくなのか。しかし、兵庫・明石市長の暴言の件で「切り取り」もあったように、有権者もメディアも情報戦の弾幕の中に潜む本質は何にあるのか、政策的な問題はどうなのか、惑わされないように注視したい。

ちなみに、立憲民主党などが野党共闘で担ぎ出す予定の、小沢一郎氏元秘書、石川知裕氏(元衆議院議員)も入れた3人で北海道対象を対象に過去1年のグーグルトレンドかけた結果はこちら(鈴木8、橋本6、石川0)。知名度勝負で行くなら、野党は北大名誉教授の山口二郎センセを担ぎ出し、ポピュリズム選挙を叩っ斬ってもらって玉砕されてはいかがか。

【追記:4日午前1:00】北海道新聞によると、橋本氏は2日夜、関係者に出馬は難しいとの意向を伝えたという。自民党道連内にはなおも異論はくすぶっているものの、鈴木氏に一本化する流れが加速しつつあるようだ。橋本氏やその周辺も「賢明」な判断をしたかもしれない。


【お知らせ】2月13日夜 統一地方選・立候補予定者向けブログ講座

※ご要望により、受講対象者を本人に加え、選対関係者にも広げました。

※画像をクリックすると講座ページに飛びます

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑