NHK受信料:地方議員が政策として取り組む必要はあるか

吉岡 慶太

東京都北区議会議員の吉岡けいた(無所属、無会派)です。

NHK受信料問題を地方議員が考え、取り組むべきかどうか。

結論から申し上げれば、「今、地域課題として取り組むべき」と考えます。
現状と理由をお伝えします。

写真AC:編集部

まず、そもそもNHKとは国営の放送局ではなく、政府から独立した公共放送事業体であり、放送法の規定により設立された法人です。NHK職員は公務員ではなく、NHKは行政機関ではないため、議会のチェック対象とはなりません。

であれば、地方議員、また地方議会が政策として受信料徴収を含めた法人事業について考えるべきことではないと当方自身、1年前まではそう感じていました。

しかし、地方議員として見過ごすことができないと考え方が変わった理由は以下の3点です。

1.  NHK受信料制度について問題提起をする政治団体が擁立する候補者が複数、地方議員となったこと

政治とは選挙、議会構成で時代に合わせて有権者の疑問と不満が反映されます。

NHK放映受信料を払いたくないという有権者ニーズを集めて、公職たる地方議員が10人以上生まれている現実があり、さらに今年の地方統一選で大量にそうした地方議員が生まれる可能性がある現状を考えれば、自身も地域課題として向き合わざるを得ません。

2.「NHKを視聴しない理由で受信料を払わない方を全力的でサポートする」という政策を真っ先に掲げる地方議員が地方議会に入ってくることについて、地方議会に影響があること

政策批判ではなく、NHK受信料を支払わないことを目的とし、不払い条例制定を目指すといった政策一点突破の議員が地方議会に入ってくることで、生活の多岐にわたる行政事業のチェック機能がしっかりとできなくなる不安を一地方議員として感じます。

よって、有権者ニーズがあることは理解しつつ、受信料問題以外の解決策が無いのかに取り組むことが地方議員の仕事です。

3. 国民の知る権利を守ることは地域課題である

単に「受信料を支払いたくない」「NHKを観なくても生活できる」「むしろお金を払ってまでNHKを観たくないし、情報はいくらでも他方法で得られる」

こうした考えから「NHK = 時代に合わない徴収義務を強制する団体」と考える人が生まれ、反NHK感情からそれをストレートに政策表現した候補者が当選する流れが生まれています。

しかし、本当にNHKがぶっ壊され、存在しなくなったらどうなるのか?

放送法で放送の不偏不党を保障すると規定される放送局が無くなることとなれば、残るのは民間放送局です。

民間の放送局とは視聴率重視、スポンサー広告契約優先とする営利企業であり、社会福祉や政治、生活に必要な情報が充分に知ることができるという保証が無くなるという事です。

「NHKをぶっ壊し、とにかく受信料は払わずになれば良い」という地域課題解決を選択するか、「知る権利と放送内容の保証」を地域課題として検討するべきか。

ここは政策テーマとして討議すべき点です。

問題提起だけでなく、自身のNHK受信料問題について地域課題の解決案を提示いたします。

解決案1  NHK受信料支払いの不公平感・不満感をミックス・ペイメントで解消

「とにかくNHK受信料を払いたくない」という一定の社会不満があることは優先的に解決すべきです。

この不満の根本は、「生活に直接関係ないのに支払いが強制され不愉快。」「視聴していないのに支払う必要性が感じられない」ことと考えます。

この部分を解消、不満を無くす仕組みを考えました。

まず直接、NHKから請求書、支払い通知、天引きがされることに抵抗感があるのであれば、ここを変える仕組みが必要です。

2019年に「ネット同時配信」が検討され、NHKがインターネット放送に力を入れることになれば、放映料をスマホ受信料とミックスして支払いを徴収できる仕組みの創設により抵抗感を抑えられるのではないでしょうか。

スマートフォン、タブレット通信に「NHK放映」が必置とし、かつ携帯企業がNHK公共放映に協力すべき仕組みが制度化されることが可能であれば、検討の余地はあるはずです。

一方、「ただでさえ高い携帯料金がNHK料金まで上乗せされたら1万円を超すのでは?」という疑問については、今の携帯料金の見直しを総務庁有識者会合で検討されています。

8,000円程度の携帯料金が今後、値下げされ、その分、NHK放映料をミックス・ペイメントで組み込めたら、支払いへの抵抗感はかなり薄くなります。

企業経営に地方議会議員が口をだすのは不当では?と非難されるかもしれませんが、「国民の知る権利」を政策課題として考え、国民生活に影響ある情報収集のありかたを考える事、その具体的な提案を行うことまではご容赦いただきたいとお伝えします。

公共放送と関係が深くなることで得られる企業メリットもあるはずであり、あながち携帯会社が損をするとも言えません。

解決案2  NHK放映内容について地域住民の要望を反映・改善させる

「NHKが嫌い、評価しない」という声がある理由は、「民間放送局の番組と大差がない」「放映内容に価値を感じない」ということが考えられます。

無料の民間放送局も質の高いドキュメンタリー、経済番組、報道など増えてきました。こうなると、特別にNHKが国民生活に必要という認識が再度、高まる改革が必要です。

地域課題として「防犯」「治安維持」「防災」「高齢者福祉」「在宅医療」「町会・自治会」「コミュニティ」などの公共性の高い地域課題について特別な情報を今以上、視聴者に番組提供できる仕組みにすることで上記改革は可能です。

それは既にEテレで放映している、お堅い番組は視聴率が低いと考えるNHK社員もいるでしょう。しかし、今以上、NHKと自治体の関係を深め、地域情報で独自性と価値がある情報提供ができるはずです。

むしろ、公共性のある地域福祉、地域政治、人の生命を守る緊張感のある情報提供が足りない傾向がいまのNHKに感じます。バラエティ傾向が強くなり、面白い、楽しい番組に流れがちかと。

視聴者がそれを求める人が多くても、楽しさより情報の質と独自性を担保する姿勢を高めて欲しいと提言いたします。

解決策3  国民の知る権利を憲法改正、NHK改革、自治体の情報公開の連動で担保すべき

個人情報保護のもと、あるいは民間企業の企業論理、特定秘密保護法による秘密厳守により、本来、国民が知るべき大切な情報が隠され、社会問題の本質が見えにくくなっています。

政治家のスキャンダル、芸能人の不倫、中身のないバラエティ番組より、今、国際社会の中で日本が危機に直面している防衛、福祉、国力低下、子供の貧困や児童虐待など地域課題の本質的な問題と数字を明確に情報として得られるように改正すべきです。

放送法の改正が必要であれば、すぐに検討すべきです。さらに、憲法で「知る権利」を保障することを検討するのであれば、政治課題となります。

「知る権利」を保障し、法律改正と自治体の情報提供義務を進める中で、NHKの役割が再認識される取り組みができれば、「NHKをぶっ壊す」を言われる筋はなくなるはずです。

あくまでもこの解決策3つは、吉岡けいた個人の地域課題を考える政策です。

しかし、NHK受信料課題について、無所属議員、各国政政党所属の地方議員、国会議員が討議し、解決策を考え、ぶつけあうことで良識ある番組が増えることにつながると期待したいと最後にお伝えいたします。

吉岡 慶太  東京都北区議会議員(無所属)
区職員(23年間、生活保護ケースワーカー10年他)を経て、2015年から現職(1期目)