平成10大ニュース(世界)を選定してみた

八幡 和郎

「日本国紀」は世紀の名著かトンデモ本か 』(パルス出版)の予告が出たら、「それなら自分で書け」とか言う人がいて困るが、私はきちんと、『世界と日本がわかる 最強の世界史』『日本と世界がわかる最強の日本史』(ともに扶桑社新書)という通史を書いている。

しかも、韓国、中国、アメリカ、フランスなどの通史も書いて、その知識の上に立って論評もしているのだから、新しい本のために勉強したとか、狭い分野の専門家とは違う視点から見てのことだ。

ところで、先に平成日本10大ニュースを選んでみたが、こんどは、世界だ。ただし、日本のほうは、細かい事件を取り上げすぎたので、こんどは、もう少しまとめたほうが良いかと思って、スタイルを変えた。順位もつけるのをやめた。

これもまだ、試作品だが、みなさんの意見も聞いて完成させていきたい。

①東西冷戦の終結とドイツ再統一
②EUとユーロ圏の発足・英国のEU離脱
③トランプ大統領の出現と極右の台頭

岐路に立たされるEU(Theophilos Papadopoulos/flickr:編集部)

第二次世界大戦後の東西冷戦は、1960年代にソ連や中国が経済改革に失敗し、また、欧米が植民地帝国の残滓から開放されて経済も立て直したことを受けて、1989年から東欧の自由化、東西ドイツの統一、ソ連の解体というかたちで終焉を迎えた。

そして、仏独の恒久平和を確保するための欧州統合はマストリヒト条約によるEUの結成、ユーロの創設で確かなものになった。

しかし、ソ連東欧から亡命者を受け入れることを餌に社会主義体制を崩した成功体験からか統一欧州は移民に寛大すぎた。そのことと、市場機構への過度の傾斜が極右勢力の台頭を招いている。

米国では民主党が黒人やヒスパニックを支持層とするために党派的利益から移民に寛容で、これも同様の反発が起きてその結果がトランプ大統領の当選であった。

④アジア経済の発展
⑤中国の躍進・日本の凋落・ロシアの浮沈

新華社より引用:編集部

東アジアでは戦後日本の成功モデルを四龍、ついで東南アジア諸国や中国やインドが真似て成功した。とくに中国は政治的には共産党一党支配の仕組みを維持しつつ経済と生活の自由かを導入することに成功して2010年には日本に代わって世界第2位の経済大国となり、政治・軍事的にも覇権を目指している。日本は政治状況の不安定さから、経済成長の維持や軍事力の強化に適切な対応ができず、その国力を急速に失った。ただし、対米関係は良好である。

⑥イスラム過激派の拡大と大型テロ

イスラム教は最低限の社会秩序を維持するために便利な宗教であるが近代的な人権とは相反する面が多い。しかし、欧米諸国は植民地支配の反省や文化における多様性の尊重から厳しい対応をせず、むしろ、対ソ連との戦いに利用したりもした。その結果、イスラム過激主義者たちの軍事力が向上し、中東などで政治を支配するとともに、欧米諸国で大規模なテロを実行している。また、イスラム諸国の政情不安により多くのイスラム教徒が欧米に移住し彼らが社会不安の和尚となっている。

⑦IT化の進展と新タイプの多国籍企業
⑧新自由主義と貧富の差の拡大

Michael Fleshman/flikcr:編集部

19世紀から20世紀が物量の拡大の時代だったのに対して、20世紀の終わりから21世紀は質やソフトが重視され、また、IT化の進展で情報流通や処理のスピードが飛躍的に向上した。また、経済はグローバル化と自由化が顕著だった。

これは多くの人々の生活を豊かにしたが、一方で、富の偏在を進めてしまった。また、GAFAなどグローバル企業は国家主権の制約を離れて税金や規制を巧みに苦れ不公平感が顕著になっている。

⑨女性の社会進出とLGBTの権利拡大
⑩地球環境問題への関心増大

21世紀になり伝統的な価値観が否定され、新しい価値観が力を伸ばしたが、とくに顕著だったのが、女性の社会進出、伝統的な家族観の否定、LGBTの社会的認知であった。また、地球温暖化などを背景に局地的な公害問題から地球環境全体への関心が高まった。