金融における開墾から深耕への構造転換

2019年03月12日 11:30

法人融資において、金融機関同士が熾烈な競争を展開しても、全金融機関の法人融資の残高の総量は少しも増えず、他方で金利は確実に下がるので、単に金融機関の利益が圧縮されるだけである。しかも、より深刻な弊害として、金融機関の活動総量には限界があるなかで、新規営業に多くの時間と活動量を振り向けることは、既存の顧客に費やす時間と活動量を削減させ、サービスの質の低下を招くのである。

サービスの質の低下で顧客の不満が高まったときに、他の金融機関が営業にきて顧客を奪っていく。こうして、金融機関は、新規の顧客を獲得する一方で、既存の顧客を失い、金融機関全体としては、少しも成長せずに、不毛な競争によって、金利は低下し、サービスの質は劣化していくわけだ。

この悪循環からの脱却には、現にある顧客への回帰しかない。故に、顧客密着ということがいわれてきたのである。素直に考えれば、顧客密着の顧客とは、現に取引のある顧客のことであり、その密着とは、情報の対称性の構築による与信管理の高度化と、顧客の事業に関する深い理解に基づく創造的融資提案のことだったはずなのである。

ところが、現実には、なかなか、顧客密着は深化せず、営業とは新規顧客の開拓であるとの発想から、多くの金融機関は抜けきることができない。それは、日本の全体としての成長がないなかで、既存顧客の内在的需要だけでは成長できないという一種の恐れにとりつかれているからではないのか。

今、発想の転換が必要である。もはや、日本経済において、人口減少という現実は動かしようがない。そのなかでの成長戦略は、産業構造改革といい、働き方改革といい、人口が3割減るとしても、生産性を5割改善することができれば、まだまだ、成長できるということであって、要は、量から質への転換なのである。

もはや、新規に開墾すべき畑はない。しかし、既存の畑を深く耕せば、収穫を拡大できる。より広い面積を耕すのではなく、同じ面積について、より深く耕すということである。より深く耕すということを法人融資に適用すれば、徹底した顧客密着ということであり、顧客の事業性の評価に基づく顧客の視点にたった融資に徹するということである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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