知財本部:ブロックチェーンの位置づけは?

知財本部 検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合、有識者ヒアリング。

独立系レーベルの世界的デジタル権利管理団体MERLINの谷口元さん。
ユニバーサル、ソニーミュージック、ワーナーミュージックの3大メジャー以外のインディーズ・レーベルがスポティファイ、アップル、アマゾン、パンドラなどの配信事業者DSPと結ぶ契約を代行。
2万レーベルが参加し、25のDSPと契約を結んでいる。
年600億円がDSPからレーベルに分配されているそうです。

日の丸プラットフォームなど威勢のいいアイディアを聞くこともありますが、経産省高木さんが言うとおり、現流通構造に対し強い音楽を乗せるこうしたリアリティーある仕組みが重要です。

谷口さんは、メタデータの整備が後れており、レーベル=アーティストに利益が還元できないという問題を指摘しました。
零細なプロダクションやレーベルが個別対応するのは難しい。
コンテンツ流通のインフラ整備的な施策が必要です。
これは今ラウンドの重要施策となりそうです。

ソングライターでありミュージシャンでもある平井大臣は「音楽は戦略がなかった」と厳しく指摘します。
「デジタル世代が活躍できるよう、足かせをなくせ」とも。
IT・コンテンツ業界ともつきあいの長い大臣。
懸案を一掃する手をお願いします。

ポリゴン・ピクチュアズ塩田さん。
CGアニメは95年のトイ・ストーリー、プレステやセガサターンからの映画制作の時代を経て海外へと切り込む。
作り上げたアニメ制作管理システムは、塩田さん出身の新日鉄のノウハウだとか。
存じませんでした。大事なノウハウは身近に宿る。

eスポーツ筧さん。
世界1.3億人プレイヤーに比べ立ち遅れる日本のヒントとして、スウェーデン、ノルウェーの高校の授業導入、アメリカ15州の高校でのスポーツ競技化、そしてアメリカ45大学、中国17大学 韓国10大学での授業化を挙げます。
普及施策の第一は教育ですね。

eスポーツは未だ制度課題を抱えます。
拠点を作る上での風営法の規制。
大会を開く上での刑法の賭博罪。景表法もグレイ。
2028年ロス五輪での正式競技化が見込まれる中、海外でできることが日本ではできないもどかしさ。
カドカワ川上さん「杓子定規じゃない仕組みを」。
政策テーマだと考えます。

さて、問題はブロックチェーン。
経産省はブロックチェーンを活用したコンテンツのサービス・アプリ開発、利益分配の仕組みに取り組んでいるのですが、内山委員・福井委員から、エージェンシーとブロックチェーンが共存するのか対立関係かを問う声が上がりました。
ぼくも同様の問いを抱えています。

川上委員は、ブロックチェーンは公明正大なコンテンツ管理手法であるが非効率であり、ビジネス上も誰がどう使うかの仕組みが詰まっていないと指摘。
ぼくも期待すべき超技術であるが、まだ等身大になっておらず、長い時間軸の中でとらまえるべきと考えます。
政策対象としてどう位置づけるか、要検討。

海賊版対策はブロッキング法制化が見送られる一方、政府はリーチサイトなど著作権法の手当てを用意しています。
マンガ正規版の拡充など民間側の動きもあります。
これも含め、知財政策の新展開を煮詰めてまいります。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。