シェアリングエコノミー政策見直し現場はいま

内閣官房IT本部が事務局を務める「シェエリングエコノミー検討会議」。
さきごろ2回にわたってヒアリング+議論を行いました。
会議がモデルガイドラインを策定してから2年。
それらシェアエコ政策の見直し論議です。

例えばスペースマーケットの「うちスタ」。
レンタルスペースでスポーツを観戦する。仲間でパーティーをしながら屋内パブリックビューイング。
こういう需要・供給の開拓、いいですね。
4K8K整備はシェアエコで進めるといいんじゃないでしょうか。
シェアエコはこのように有望な成長領域。その政策も進化の途上です。

シェアエコの最大課題は、ユーザの「安心」を高めること。
安心・安全対策を強めることは重要です。
しかしそれはコストがかかることであり、既存の大プレイヤーを利する参入障壁となり得ます。
プラットフォームへの規制は、シェアエコ政策上は自主規制を軸とする成長促進型で進めてきました。
がんばっている政策領域だと考えます。

ソフトローを軸とする共同規制の研究者、東洋大学・生貝直人さんが、消費者保護策として、検索結果のランク付けを決定するパラメータをEUが情報開示する指令を用意していることを紹介しました。
EUは強い球を投げてきます。
罰金などを伴う規制となるのか気になります。
これに対し、日本の政策モデルやいかに。

シェアエコの「安心」を高めるため、「ECネットワーク」はシェアエコのトラブルを解決するODR(オンライン紛争処理)を提案します。
それをプラットフォーム事業者が担うのがよいと示唆されるのですが、シェアエコ専門のODRやADRを第三者が事業として行ってもいいんじゃないですかね。
こうした事業の運営をどう設計するか。
これまた政策マターとなります。

「PwCコンサルティング」によれば、シェアエコサービスの認知は2017年の31%から2018年には42%に高まったが、利用経験は13%。
モノ・移動手段・場所のシェアサービスは6割以上の認知があるが、スキルのシェアは4割に満たない。
成長領域であることがうかがえます。

スキル・時間という誰もが持っているものをシェアするサービスが最も発展余地があるとぼくは考えます。
その点、「クラウドワークス」が、所属・肩書・資格以外にネットによる個人の評判や評価を加えるモデルを提示しています。
食べログのように個人の信用を見える化する。
大事なアジェンダになりそうです。

「フリーランス協会」は、PSP(パーソナルスコアリングプラットフォーム)という壮大な計画を提示します。
個人の信用を評価・見える化して、融資やジョブマッチングに活用するものです。
公的・私的な公開情報はともかく、データ保有企業による非公開情報をどう活用できるかがポイントとのことです。

ここでJIPDEC坂下さんが経済効果を定量的に把握するための手法が必要と唱えました。
同意します。重要事項です。

シェアエコは経済成長の文脈で期待され、1-2兆円市場とも言われますが、その分、効率化や市場の代替で縮小する経済もある。
そしてまだGDPには反映されていません。
経済としてどうとらえるか。

野村総研「デジタル資本主義」によれば、2010年ごろから生活者は生活レベルが向上したと感じているそうです。
GDPは停滞しているが、生活の質は豊かになったのです。
明らかにIT化やシェアエコの効果です。
でもそれを経済として示す手段がないので、重要性が認知されにくい。

シェアエコで生産者余剰:GDPは下がる可能性があります。
従来の経済指標上はマイナスに働き得ます。
一方、消費者余剰:お得感・満足という主観は指標がありません。
シェアエコはそれを増大させるためのものですから、正当な評価がされていないと考えます。

情報通信白書が2年前にICT消費者余剰の計測努力をしましたが、研究不足のままです。
日本だけではムリで、国際的な知恵を結集する必要があるでしょう。
日本からG20やOECDに提案してよいテーマではないでしょうか。
民間事業の環境整備とともに、国際的な指標づくり。
いい政策テーマだと思います。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年3月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。