ブログ論壇は(ひょっとして)終わってしまうのか?

2019年03月29日 06:00

年度末も残すところ3日となった。週明けには新元号が発表されるというこの頃、先に告知をしておくと、今夜10時から言論テレビで、月刊Hanadaの花田紀凱編集長が司会の番組にひさびさに出演する。テーマは「望月衣塑子記者が目に余る!」。いやはや、もはや鉄板ネタ(笑)。

言論テレビより

リンクはこちら→『花田編集長の右向け右!』

ただし、昨日の収録では、皆さんご期待の望月批評もさることながら、そこに終わらせず、いまのメディアが直面する話をできるだけ構造的に掘り下げた。平成の終わりになっても旧態依然とした政治報道や、大手ネットメディアの左傾化、AI時代に人間の記者がやるべきことなど花田さんとの議論は盛り上がった。今夜のファーストオンエアは会員登録なしでも全編視聴可能なので、ぜひご覧いただきたい。

そして、この平成終盤の年度末に大先輩の花田さんとメディア論を語る機会があったのも僥倖だ。ここ最近、言論サイトを運営してきて感じた問題を提起したい。それはブログ論壇が静かに終わりの方向に向かっているかもしれないことだ。もちろん一般的なブログそのものが無くなる話では決してない。私が危惧しているのはいわゆるブログ論壇の行く末だ。つまり、幾多のブログから「論客」としてのし上がり、ある段階で紙媒体やテレビなどへと進出していくという「登竜門」ルートが先細りするムードが漂い始めているのだ。

基礎知識:ブログ論壇の小史と仕組み

具体的にどういうことか。まずは前提の知識として、ブログ論壇の小史と仕組みを簡単に説明したい。

ブログサイトの代表例だった3サイト

2000年代中盤、アメーバブログやライブドアブログといった各種ブログサービスが続々と出現し、かつての池田信夫のように専門家でも実名で個人ブログを開設する人が少しずつ増加。それがブログ論壇と言われる言論空間を形成していったが、その社会的存在感を高めたのは、各種の有名ブロガーの原稿を集めたサイトが果たしてきた役割は大きい。2009年にアゴラとブロゴスが創刊し、2013年にはアメリカのハフィントンポスト(現ハフポスト)が朝日新聞との合弁で日本版をスタートした。

これらのプラットフォーム登場により、読者の利便性は格段に増した。買い物に例えれば、個々の商店に行くよりも、ショッピングモールで一括して買い物できるように複数のブログを一気に眺め、そのなかで新顔の商品(ブロガー)とも出会いやすくなった。

(参照:中嶋よしふみ氏『アゴラ・ブロゴスは「AKB48」である』)

2013年ごろには、有識者、企業経営者、政治家などの参入が珍しくなくなって、マスコミ関係者も専門家を探す際に、プラットフォームを活用する流れが定着していったように思う(私も初めての地上波テレビ出演依頼はブロゴスに転載された記事だった)。

メディアを運営する側でいえば、2010年ごろはまだそれなりの専門家や社会的地位にある人でブログを書く人が少なく、コンテンツを確保するのが大変だった。アゴラも最初期は1日数本、投稿があれば御の字だったという(今では1日20本を超える日も)。マスコミ各社もそのころはネット媒体に力を入れておらず、いまや月間2億超のPVを誇る東洋経済オンラインですら、2012年の時点では月間500万PVと、いまのアゴラより少なかった。

しかし、ハフポストの日本進出の頃から風向きが変わった。出版社をはじめマスコミ各社がネットに力を入れはじめた。経済ジャンルでいえば、東洋経済オンラインが佐々木紀彦編集長の主導でPV数を短期間で10倍増させた。他社も負けじとテコ入れし、そしてスマートニュース、グノシーなどスマホのニュースアプリ登場で市場が急拡大する。

さらには佐々木氏がNewsPicksへ移籍。朝日新聞の古田大輔氏がバズフィードジャパンの創刊編集長としてヘッドハントされるなど、マスコミ各社の若手中堅がそれまでにない規模で、新興メディアに移動しはじめ、近年はマスコミに次ぐ立ち位置で世論形成に影響のある媒体もグンと増えた。

Yahoo!ニュース等で強まる転載ブログ規制

ネット媒体小史の話が長くなったが、本題はここからだ。マスコミ各社がネットに力を入れてくると、もはやネットの言論空間はイノベーター色が薄まってくる。東洋経済オンラインをはじめ自社の記者たちの発信が増え、文春オンラインなどに寄稿する非記者のユニークな書き手も、編集部のフィルターを通して質を担保しており、形式はブログに近くても活字媒体的な「製品」といえる。

Yahoo!ポータルサイトより

こうした「内製化」が進む変化が何を意味するかといえば、ブログ集約のプラットフォーム、書き手であるブロガーの存在感を相対的に低下させる力学がある程度働いてしまう。

(プラス巷間言われているように、最近はYouTuberのKAZUYA氏のように、若い世代はブログより動画で頭角をあらわすなど表現手段が多様化して人材が流れていることもあろう)

そして、問題はここだ。ブログが論客の登竜門として機能不全になりつつあるのが、Yahoo!ニュースや、スマートニュースといった有力プラットフォームによる規制が強化されてきているのだ。

この際だから正式に明かすが、アゴラは昨年10月をもって、Yahoo!ニュースへの配信契約を満期で打ち切られた。その際、口実とされたのが「転載ブログの記事が多い」という点だった。Yahoo!ニュースが自前の専門家ブログ、ヤフー個人と競合するサイトを減らしていく思惑もあったのかもしれないが、編集部が内製していないコンテンツの信頼性担保の問題を指摘された。

さらにこの流れはスマートニュースにもきている。オピニオンタブに有力な個人ブログのリンク付けをやる一方、アゴラなどを経由した転載ブログは原則NGだ。ブロゴスは気づけばスマニューから姿を消してしまっている。

記事の内製化 VS 転載ブログ

Yahoo!ニュースへの配信とそこからの導線がなくなったネット媒体のその後は悲惨だ。アゴラもご多聞にもれずアクセス数が一時激減し、経営危機も現実味を帯びた。しかし、スタッフの知恵を結集し、ある施策を講じて年明けから急回復し、最近はYahoo!ニュース配信時代に匹敵しつつある。実にしぶとい(笑)Yahoo!ニュースに切られてからアクセスが増えた初のメディアとして見返せるかもしれない(と言えるようになったから今回この事実を明かせる訳だが…)。

写真AC

もちろん、記事の内製化は進めている。まずは編集部に寄稿する人を増やすこと。去年の秋以降も、益満寛志さんや秋月涼佑さん、高山貴男さんといった新しい書き手が続々と出てきたのが不幸中の幸いだった。同時に、転載ブログの寄稿者の内製化も進めている。

内製化になると、アゴラ編集部としても人的・時間的コストは一層要するが、確かに記事のクオリティーは上がる。特に経験の浅い書き手のスキルアップに繋がる。上から目線のつもりは毛頭ないが、黒坂岳央さんなどは投稿初期に比べて格段に表現・編集が向上したと思う。

危機管理についても転載型よりしやすい。紙媒体ほど入念な手間はかけられないものの、最低限のファクトチェックはする。ある時には印象操作が露骨だったある政治家には私が叱ってリライトさせたこともある。社会的影響を及ぼす記事を出す際には、裁判沙汰になるかどうか、なっても勝てるものか「見極め」も重要で(たまに外れてトラブルになることはあるものの)、大事故だけは回避できている。

なので内製化は今後も進めていくが、しかし、転載ブログは例えば藤原かずえさんのように、個人発信でも際立った才能の書き手が出現した時、どうプロモートしていくか。もちろん、アゴラなどより規模が何桁も違う大手のメディアに、それこそ山本一郎氏に見られるように、Yahoo!ニュース個人がスカウトするようなステップアップはあるのだろうが、大手メディアはやはり敷居が高い。そして、アゴラやブロゴス経由で転載ブログがスマニューにも出ないとなると、全く無名の書き手の参入は容易ではない。

「登竜門」ルートは残すべきでは?

この問題、実は半月ほど前に、アゴラのある執筆者と、ネットメディア事情にも詳しい某テレビ局関係者らと飲み会をした際に議論したことがベースだ。その時、盛り上がったのは、イケハヤ、はあちゅうに続く下の世代で論客候補がいるのかという話で、少なくとも政治系の論客ブロガーでは、これと言う名前が挙がらなかった。

東洋経済オンラインのような大手が牽引する形で、ネット媒体全体が「ミドルメディア」と言われるだけの社会的プレゼンスが形成されてきた反面、際立った「個人」が成り上がるための「登竜門」のルートも残しておいたほうがいいのではないのか。私個人はやはり新聞社のDNAもあってか内製主義ではあるものの、個人ブログの魅力は十二分に認めている。編集者が介在しない自由さがあるからこそ、危うさと隣り合わせであっても読み応え抜群の書き手は、まだまだいるはず。

アゴラでは内製化を進めながら、池田信夫、八幡和郎さん、藤原かずえさんらに匹敵する若い論客を探している。その受け皿・登竜門として最後の砦になれるよう、引き続き人材を発掘して、次の御代に送り出したい。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長

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