規制改革会議での超教育論議(後編)

2019年04月04日 17:00

内閣府規制改革会議にて、「超教育に向けたインフラ整備と先端改革を」と題してお話をしてきました。その後編です。

今後すべきことは、超スマート教育の推進です。世界は2周先に進んでいます。PCによるデジタル教育、そしてBYODやクラウドによるスマート教育を超え、IoT、ブロックチェーン、AIなどの超スマート教育、EdTechに突入しています。


IoT、ブロックチェーン、AIなど超スマート技術がもたらすものを超教育と名付けてみました。
教科、試験、学校など、学びの内容・環境・評価を問い直す変化をもたらす可能性があります。

教科面ではAIが教科を横断する超個別学習を実現するでしょう。そのためのカリキュラム再編成も求められます。それは検定や学習指導要領の内容や存在を問うことになり得ます。
また、ブロックチェーンで学習履歴を全て蓄積することで、試験をする必要がなくなるでしょう。入試のあり方を問うことになります。

そうした変化により、学年や学校など教育機関の枠を超える学習環境をデザインすることができるようになるでしょう。学校制度のあり方自体も問うことになり得ます。

日本でもベンチャー企業を中心にAIを用いた教材を開発する事例などが活発になってきましたが、まだ初期段階です。教育AIを開発するために学習履歴などのデータを用いる必要がありますが、教育側の認識が低くガードも硬いため、AI研究者は教育分野を素通りしています。

中国はAIの教育利用を国家戦略に据え、教室にカメラやセンサーを埋めて子どもの表情や学習履歴などのデータを集め、教育改革に活かそうとしています。その教育環境を世界展開する目論見です。デジタル教育で先行した韓国も政府が教材や教育環境を先行開発して世界市場を狙っていました。日本はAI開発で米中企業の後塵を拝し、教育情報化で世界の後塵を拝しています。しかし、この分野を海外に依存するようでは国の未来を展望できません。

そこで、超教科・超試験・超学校を「実装」する産学連携プラットフォームを構築することを提案します。国内外の幼児教育、初等中等教育、大学、生涯学習を横断する教育機関と、民間企業の連合体により、世界最先端の学びの場を創出してはどうでしょうか。

○デジタル、スマート、超スマートを構成する全テクノロジーを集中投下
○産業・教育の連携強化
○学習者主体の新学習環境のデザイン
○飛び級、単位互換、講座修了認定など学校の枠を超えた柔軟な運用
○オンライン・遠隔学習と、多地点の拠点でのバーチャル+リアルな学習環境の整備
○次世代教育システム、サービス、教材等の開発と海外展開
○学習履歴等のデータの利活用

これらを通じて次世代を担う超スマート人材を育成していくのです。

教育インフラの整備、先端教育の開発など、教育と技術を融合した新しい教育環境を整備するため、昨年、超教育協会を設立しました。IT、ソフトウェア、コンテンツ系の業界団体や経団連、新経連など30を超える団体にご参加いただき、政府にもオブザーバ参加いただいて、産官学の連携体制を組んでいる。DiTTも春にここに合流することとしています。

学校の枠を超えた未来の学習環境のデザインと実装、AI、IoT、ブロックチェーン等先端技術の教育への導入、EdTechビジネス支援などを目的としています。理研、産総研、NICTなど政府系の研究機関や外資系企業も交え、AI、VR、ブロックチェーンなどのワーキングを走らせています。特区などでビッグデータを用いた実装を望む声も高く聞かれます。


この分野を代表するオールスターのかたがたの評議員コミュニティも形成しています。この評議員のみなさん教育とテクノロジーの問題に強い問題意識をお持ちで、こうした民間のオープンで強力なコミュニティを活かすとよいのではないかと思います。

まとめると、超教育に向けたインフラ整備と先端改革を進めよう、ということ。
1.デジタル教育の環境整備
2.スマート教育の環境整備
3.超スマート教育の開発・実装
4.超教育プロジェクトの推進 ということになります。
以上は石戸奈々子さんがプレゼンした内容です。
これにぼくが3点、補足すると発言しました。

1. 政策プライオリティを上げていただきたい

この分野は重要だが、政策プライオリティは高くない。
超教育協会の評議員リストをもう一度ご覧いただきたい。これはIT/スマート/AIで日本を代表するメンバー。自然にお集まりになった。皆さんとても熱心。日本でITやAIの大事なことを論ずるのに必要なかたはだいたい集まっていて、これからも増える。みなさんご存知のかた多いだろう。

一方、文科省・総務省・経産省には教育IT系の会議が7-8個あるが、誰一人このメンバーは入っていない。石戸さんも私も含め。ITやAIの産学を代表する中心コミュニティと、教育IT政策は離れているということ。
なぜだろうと思う。

2. インフラ整備に関し超党派議員立法はエンジンたり得る

「官民データ活用推進基本法」は議員立法で成立し、IT本部など政府がフル活用し、データ政策はプライオリティが高く動いている。だが教育IT分野は霞が関にそういう動きが見られない。
なぜだろうと思う。

3. AIやIoTは経産省などで予算をつけた実証などが行われている。それはいいが、細切れのバラまきに見える。これをやれば世界に勝てる、というところに骨太に集中投下するのがよいのではないか

AIは理研AIセンターに政府が資金を重点投下して研究開発を進めている。米中に張り合おうという国家的な気概はある。私はそのコーディネイターも務めている。

しかし200人いる研究者で教育分野を掘り下げている人は見当たらない。金融、医療、自動走行、防災、観光、エンタメなどはたくさんいるのに。経産省系の産総研も総務省系のNICTも同様だと思う。教育分野がクローズドなので、切れてしまっているのではないか。
なぜだろうと思う。

委員から「教員はどうなるのか」という質問。
知識の伝達は機械でもできるが、先生はファシリテーターやコーチングになっていく。また、企業人や社会人など外部の人材をもっと活用できるようにすべき(石戸)。
一方、校務のIT化を進めて効率化を図り、先生の負担を減らすべき(中村)。
と指摘しました。

「長い間いろいろな議論をしてきたのに、かなり後れている。変わらないポイントはどこか」という質問。
この分野に携わるようになって25年になる。資金の問題や現場の先生方が対応できないという問題など個別の問題はあるが、根本は過去の日本の教育が大きく成功していたからだと思う。アナログ時代の100年以上の日本の教育は、豊かな人材を出したという点で世界からもうらやまれるような成果を出した。その成功体験がITやAIで大きく変わろうとしていることへの不安感となって現れているのではないか(中村)。

とはいえまだ大丈夫という意識が強い。韓国は2011年の時点でいち早くデジタル教育を導入しようとした。経済危機の危機感が強く、教育で大きく前進させようと舵を切った。
2周おくれで一歩一歩では無理だという指摘があったが、中国もそれを狙っているのではないか。中国はデジタル教育で後れをとっている。だからこそ、一気にAIで、一歩一歩のステップを踏むのをやめて最先端に躍り出るという意気込みを感じる。これまで教育の変化を大きく成し遂げてきた国にはトップの強力なリーターシップがあったと認識する(石戸)。

規制改革会議のような全省庁にまたがるパワフルな会議で教育IT問題を取り上げてもらえるのは、ありがたいことです。ぜひ改革を進めていただきたい。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑