青少年ネット安全安心対策はいま

総務省 青少年の安全・安心なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース
森亮二弁護士と京大曽我部教授の間に座って、主査を務めます。

1年半ぶりの開催です。
その間、青少年ネット環境整備法が改正されたことに加え、フィルタリング「高校生プラスモード」が導入、EMAが廃業するなどの環境変化がありました。

青少年ネット環境整備法は携帯電話事業者と代理店に、青少年確認、フィルタリング説明、フィルタリング有効化措置の3点を義務付けるとともに、フィルタリング提供義務の対象をタブレットにも拡大するよう改正されました。

フィルタリングの利用促進は海賊版サイト対策上も重視されています。高校生プラスはSNSの一部を利用可能にするもので、フィルタリング利用者の半数が選択しています。
SNS利用と安全性確保の両方を重視するニーズに対し一定の導入効果があったと見られています。

スマホの利用率は高校生96%、中学生58%、小学生29%(2017年)。
SNS等で被害にあった青少年は増加傾向。
スマホのフィルタリング利用率は44%で横ばい。
フィルタリングを利用しない理由で最多は「利用しなくても子どもの適切なネット利用を管理できる」(26%)。

写真AC:編集部

子どもの9割がLINEを使い、Twitterが3割、インスタが2割。
9割強の保護者は子どもがSNSを利用することを認めています。
保護者の関心・懸念は「スマホ依存」「学習・成績への影響」「身体・健康への影響」。
重要だと思う家庭内ルールは「利用時間」、「課金」が多い。(安心ネット協調べ)

電気通信事業者協会TCAは、フィルタリングはネット依存対策としても有効と言います。
利用時間を制限する機能などがありますからね。
違法有害サイト対策というより、ネット依存対策と位置づけるほうがフィルタリングの普及は速いかもしれません。

安心ネット協はEMA廃止後の体制確立とサイト・アプリのモニタリングの必要性から、宍戸常寿東大教授を座長とする検討会を設け、高校生プラスに関するモニタリングと保護者やフィルタリング事業者への情報提供について議論、フィルタリング設定の簡素化やアプリごとのカスタマイズ機能などを提案しています。

会議ではEMA岸原さんが、日本のマンガやアニメが海外ではオーバーブロックされる傾向にあることに関し、グローバルなプラットフォームのフィルタリング基準に業界が汗をかくべきことを指摘。
そうですね。クールジャパン政策の観点から海外のフィルタリングを捉えることも重要です。

また、海賊版対策に関する違法マンガ等のダウンロード違法化に関連し、フィルタリングはユーザが犯罪者とならないよう保護する方策だという指摘もありました。
フィルタリング普及策は海賊版タスクフォースでも議論されましたが、著作権法改正に伴い注目が高まるかもしれません。

学校へのスマホ持込み許可に関する議論もありました。
フィルタリングの緩い子の端末をみんなが使うことで、その子の利用料が上がるといった事態も発生していて、フィルタリングの義務化やリテラシーの向上策など新たな対策が必要になるという指摘です。

さらに、今後、自分の端末で勉強するBYODが進展するなら、フィルタリングを前提とするという議論も必要かもしれない。
教育情報化が進むことにより、学校でのネット安全策は次の場面に向かいそうです。
改めて課題整理してまいります。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。