真の教員働き方改革実現に向けて --- 和田 慎市

2019年04月28日 06:00

残業時間の上限を原則「月45時間、年360時間」以内と定めた文科省指針の順守に向け、中教審が公立校教員の長時間労働を是正する働き方改革を文部科学省に答申しました。

写真AC:編集部

教育行政には実効性のある取り組みを要請し、タイムカードで勤務時間を客観的に把握し、業務削減につなげるべきことや、部活動についてはガイドラインに沿い、休養日を週2日以上設け、1日の活動時間を平日2時間、休日3時間程度に抑えることとしています。

さて、これで本当に教員の働き方改革は進むのでしょうか?

実は教師の仕事はどこまでやっても明確な終わりがないのです。クラスの児童生徒のために学級新聞を作成したり、発達障碍児のために独自の指導法を考えたりと、頼まれなくても自主的に取り組む仕事が多いからです。

従って現状のままタイムカードを導入しても、チェック後も残業することになるでしょうし、残業手当が無支給のままでは管理職や教委が実退室時間をチェックするとは限りません。

常葉大の調査によれば、静岡県内公立中学校の教員は「勤務時間外の仕事」を平均1日4時間(過労死ラインの月80時間)以上行っており、改革案と現実とのギャップが大きいことがわかります。

これほど残業をしながらも「仕事にやりがいがある」と答えた教員が93%、「授業が楽しい」が92%と極めて高いことから、勤務時間の長さが根本の問題ではないはずです。

ではなにが疲弊を感じる仕事かといえば、8割以上が「教委の計画訪問に対する指導案作成」「文科省(教委)からの調査」「保護者対応」をあげています。

働き方改革は制度・法を中心にした外部からの改革と、学校や教師の取組を中心とした内部からの改革がありますが、内部から働き方改革しようとしても対象となる仕事の多くが直接児童生徒に関わるだけに、子供のために時間を割くことを惜しまない教師集団が仕事を精選することはかなり難しいのです。

しかし答申は労働時間短縮の数値目標だけ決めて、どれ(どこ)を精選すべきかほとんど現場に丸投げしており、本来行うべき改革を意識的に避けているかのようです。まず先に学校の外から制度改革を実行しない限り内部からの改革が進むことはありません。

つまり教員の真の働き方改革の具体的方法は、まず「直接児童生徒に関わらない仕事」や、「教員がしなくてよい仕事」を具体的に指定し職務外と定め、そのことを他の法改正とともに全関係者に遵守させることです。

その上で子供のために働きすぎてしまう教員対策として、学区で校舎施錠時間を統一(例えば午後7時)し、それ以降は警備会社に任せるなどすればよいと思います。

そして外部からの制度改革は、上記を含めた次の①~③が大きな柱となります。

① 教員の正式な職務の明確化・法制化と国民への周知徹底
② 教職員給与特別措置法の廃止と平日等の残業手当支給
③ 部活動の職務への位置づけ(正式な校務か否か、校務なら残業代支給か勤務日振替を徹底)

①について、教員の職務から外してよいものとして、ア.学校外での生徒指導(巡回等)、イ.登下校時の交通指導、交通事故対応、ウ.外部からの苦情・クレーム対応、エ.全国・全県一律の調査や直接児童生徒に関わらない調査、(*オ.校務に位置づけない場合の部活指導)などが考えられます。

なおウについては学校内で電話や来訪者への対応が必要ですから、校舎内外警備や苦情対策(電話・訪問応対等)として、危機管理専門員(警察OB、退職教員、民間クレーム対応員など)を各学校に常駐させます。また外部からの電話にガイダンス機能をつけ、苦情などの場合は危機管理員につながるようにすれば教員が一切かかわることはありません。

職務範囲を明確にしたなら罰則規定も含め法律・条例に明記します。法制化の後文科省はマスコミに協力を仰ぎ、テレビ・ネット等を駆使して国民に教師の職務範囲を周知徹底します。こうすることで教員の実勤務時間削減は進むはずです。

②について、給特法の+4%支給をなくす代わりに残業代を支給すれば、無駄な残業代がでないように管理職・教委の勤務時間チェックや退室指導は進むでしょう(ただ①が進まなければ逆効果となることに注意)。

③は日本の学校教育の永遠のテーマでしょう。

理想は部活動を職務に位置づけ、平日だけでなく土日も正式な残業としてカウントすることですが、国・自治体の財政状況では莫大な残業代の支給は厳しいものがあります。では勤務の振替えはどうかといえば、平日の代休が急増するため大幅な増員をしなければ授業を行う教員数が足りません。やはりかなり増員分の人件費を確保する必要があります。

逆に校務ではないとするなら、部活指導する教員の身分と補償、中体連・高体連の大会を含めた運営の在り方など、抜本的なシステム改編が必要になります。

このように部活指導は一筋縄ではいかない難しい問題を内包しているのです。

それでも早いうちに①~③の制度改革を実施しなければ、教員の実質的勤務時間は減らないまま疲労感が増して学校はブラック化し、教員志望者は減っていくでしょう。

すでに教師バッシング→罰則強化・勤務の制約増→教採試験倍率の低下→教師の質の低下→不祥事・事故の増加→再び教師バッシング のデススパイラルが起こりつつあり、このままでは学校教育は崩壊してしまいます。

教師・学校に一方的に仕事や責任を押し付ける世の中の流れが変わらなければ、教育崩壊が日本の混迷を招き、結局そのツケは国民自身が払うことになるのです。

そうならないため、今こそ全国民が力を合わせて教育環境の改善に取組むべきではないでしょうか。

和田 慎市(わだ しんいち)私立高校講師
静岡県生まれ、東北大学理学部卒。前静岡県公立高校教頭。著書『実録・高校生事件ファイル』『いじめの正体』他。HP:先生が元気になる部屋 ブログ:わだしんの独り言

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑