処方せんなしでも医薬品名はわかる

外来患者向けの医薬品は院内調剤ばかりだった30年前に、あえて、外に処方せんを出すことの意義として言われたことは、「患者に対する処方せん交付が医療情報の公開につながる」という話だった。

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この話を厚労省はいまだに公式見解として採用している。

処方せんは、医師・歯科医師から薬剤師への処方内容の伝達だけでなく、患者自らが処方内容を知ることができる、患者にとって最も身近な医療情報の一つである。

出典:電子処方せんの運用ガイドラインの策定について(厚生労働省)

処方医薬品を公開させたいなら、薬情を渡せば足りる話であり、処方せんを発行して患者にわたす必要がない。外来患者への院内調剤を行っている病院診療所は、処方せんは渡さないが薬情は渡している。

薬剤情報提供書の印刷結果(薬剤師の業務支援ソフトより)

「処方せんを外に出したら、それが医療情報の公開になる」という話は、すでに無意味になっている。

井上晃宏(医師、薬剤師)