デジタル毎日に「世論調査は人々の意見を正しく反映しているのか」という記事が出ていた。政治学者の菅原琢氏が分析した世論調査の限界を示す記事である。
固定電話に電話し回答を求める旧来の固定RDD(Random Digit Dialing)には、30歳以下の回答者が少ないという問題がある。その結果、投票に必ず行くとした人の割合や野党候補者に投票するとした人の割合が高くなった。そこで年齢補正をかけると、数値は実際の投票率や野党候補の得票率に近くなった。一方、ネット調査会社のモニターを対象としたネット調査結果は現実の値に近かったと、大胆に要約すれば記事にはそのように書いてある。
新聞社から世論調査に協力を求める電話がかかってきても、若者にそれに応じる時間はないだろう。最近は携帯電話にも電話をかけるようになったようだが、知らない発信者からの電話には出る気にもならない。だから、旧来の世論調査は回答者が高齢に偏り、結果も全年齢の世論からは乖離する。
一方、朝日新聞は「ネットニュース・SNSだけ参考にする人、内閣支持高め」という記事を出している。
これは朝日新聞が実施した郵送世論調査で、政治や社会の出来事についての情報を得るとき、ニュースサイトやSNSだけを参考にしている「ネット限定層」を抽出し、全体と比較したものである。その結果、「ネット限定層」の内閣支持率は60%(全体は43%)、憲法を変える必要があるが68%(全体は38%)になったという。
この結果について、逢坂巌駒沢大准教授が「インターネットやSNSだけを参考にしている人たちには、森友・加計問題など安倍政権のネガティブな情報があまり響いていないのだろう」と分析しているが、本当だろうか。
郵送調査に回答した人が世論を示すと、なぜ言えるのだろうか。朝日新聞が抽出した「ネット限定層」たった100名がネット世論を代表していると、なぜ言えるのだろうか。
朝日新聞は郵送やRDDという旧来の世論調査方法が世論を示すと盲信し、年齢の偏りなどを無視している。「ネットやSNSでは、自分が好きなものの情報に触れるのは当然のこと。安倍政権は、経済指標を上げた『改革派』のイメージ作りをしており、働き盛りの男性でテレビや新聞をみない層に、好意的に受け止められているのではないか」とコメントした逢坂巌氏も迷信の信者だ。
デジタル毎日が「世論調査の結果は有権者全体の意見を十分に適切には反映していないのである」という冷静な分析を掲載したことは評価される。