韓国が全てを失う危機:迫られるファーウェイ問題の選択

2019年06月09日 11:30

韓国は今、大きな選択を迫られている。簡単にいえば、中国との経済的利益を優先するか、米国との戦略的関係を重視するかの選択だ。もう少し具体的に言えば、中国最大の通信機材・華為技術(ファーウェイ)との経済的関係を維持するか、トランプ米政権の反ファーウェイ陣営に入るかだ。その選択は文在寅政権にとって容易ではないのだ。

ハンガリー遊覧船沈没事故で早急な救援を指示する文大統領(2019年5月31日、韓国大統領府公式サイトから)

トランプ大統領はファーウェイが中国共産党政権の情報工作でスパイ活動的な役割を果たしているとして、自国のIT・通信企業にファーウェイとの取引を禁止させる一方、同盟国に対してもファーウェイ封じ込みに加わるように要請している。日本はトランプ政権の要請を受け、ファーウェイの公共事業への参加を禁止している。カナダ、オーストラリアを始め欧州でもファーウエイ警戒が高まっているが、韓国は、というと態度があいまいなのだ。もちろん、それなりの理由はある。

ファーウェイが世界市場から封鎖されれば、サムソンなど韓国製スマートフォンにとって市場シュアの奪回チャンスであり、販売数が増加することは考えられる。複数の通信事業者がファーウェイ製スマートフォンの新製品発売を先送りしている。サムスン株は米政府がファーウェイ封鎖策を発表して以来上昇している、という情報も報じられた。

しかし、それはコインの一面だけだ。ファーウェイは、サムスン製半導体メモリーの最大顧客だ。世界2位の半導体メモリーメーカーである韓国SKハイニックスの最大顧客もファーウェイだ。韓国にとって、中国が米国を大きく凌ぐ貿易相手国だ。昨年の貿易額では対中は全体の26.8%だったが、対米は12%にとどまっている(ロイター通信5月30日)。

だから、韓国が反ファーウェイ陣営に加われば、自身の最大顧客を失うことを意味する。ビジネスを優先すれば、ファーウェイが中国共産党政権のスパイ活動を支援しているという疑いだけで、最大のビジネス相手を捨てるわけにはいかないのだ。

それだけではない。中国共産党政権を怒らせれば、その報復が怖いのだ。韓国が2016年、対北ミサイル防衛のために米国の新型迎撃ミサイル「サード」(THAAD、高高度防衛ミサイル)の国内配置を決定した時、中国は猛烈な報復に出てきた。サムソンのスマートフォンや韓国製自動車の売り上げは急減し、民間レベルでも中国人の韓国旅行は前年比で60%減を記録し、韓国ロッテグループの店舗建設は中止に追い込まれ、最終的にはロッテは中国市場から追放されたことはまだ記憶に新しい。

Wikipedia:編集部

朝鮮日報は6月4日、「中国外務省の当局者がサード問題に言及し、韓国政府に対し『正しい判断をしなければならない』と述べた」と報じている。中国側が「韓国よ、昔の過ちを繰り返すなよ」と警告を発したわけだ。

もちろん、米国側も無関心ではない。中央日報(日本語版)は7日、「ハリー・ハリス駐韓米国大使は5日、韓国内のIT企業を招いて『信頼できないプロバイダー(ファーウェイ)を選択すれば長期的なリスクと費用が大きくならざるをえなくなる』と指摘し、米国の『反ファーウェイ同盟』に韓国も参加するよう要請した」と報じている。ファーウェイ問題で米中の双方が韓国に圧力を強めてきているわけだ。

中央日報は、「韓国が昨年ファーウェイから購入した装備は約460億円にすぎない反面、ファーウェイが韓国企業から購入した部品は約1兆1500億円に達する。もし韓国が米国の要求通り取り引きを中断すれば、ファーウェイ装備を使っているLGユープラスだけでなく、最大輸出国である中国の比重が高いサムスン電子やSKハイニックス、さらには韓国産業全般に大きな打撃が避けられなくなる状況だ」と報じ、韓国経済が中国依存体質であることを明らかにしているのだ。

大国に挟まれた韓国は過去、強国から軍事的、政治的、経済的圧力をかけられてきた経緯がある。そして過去の韓国の為政者が間違った選択をしたために民族が苦渋を味わってきたことが少なくない。ファーウェイ問題は、中国を取るか、米国を選択するか、経済的利益を優先するか、同盟国との戦略的連携を重視するか――の選択を韓国に迫っている。

短期的には、前者の選択が魅力的であることはいうまでもない。後者の選択は国民や経済界に犠牲を強いることにもなるからだ。ただし、韓国側が忘れてはならない点は、中国が北朝鮮と同様、一党独裁国家であり、民主主義とは程遠く、実際は人権蹂躙国だということだ。

韓国が選択を躊躇していると、最悪の場合、両方を失ってしまう。文在寅政権が中国から小馬鹿にされ、米国からは同盟国扱いされなくなってきている現状は、その最悪のシナリオが現実化してきているようにみえる。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年6月9日の記事に一部加筆。

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