ライダイハン像完成:韓国に慰安婦ブーメラン直撃

八幡 和郎

ベトナム戦争中の1964~72年には32万人といわれる韓国兵士だけでなく、大量に軍属や民間人がベトナムに赴いた。ベトナム人女性のあいだに残した子供は、「ライダイハン」と呼ばれている。

「ライ」とはベトナム語で「雑種」の意味で、「ダイハン」は「大韓」のベトナム語読み。つまり、韓国人男性とベトナム人女性の間に生まれた子供のことだ。現地妻を抱えて子供を産ませたものも多いが、かなりの人数が軍隊の性暴力によって妊娠させられ数千人と推定されている。

その「ライダイハン」と呼ばれる子どもたちが、文在寅大統領に対して性暴力があったと認め、国連機関の調査に協力するよう求めている。

ライダイハンのための正義」というイギリスの民間団体は11日、ロンドンで韓国軍兵士による性的暴行によって生まれた子ども「ライダイハン」を象徴する像を発表した。

会場には、被害者であるベトナム人女性や、2018年のノーベル平和賞受賞者でISILによる性犯罪被害者であるディア・ムラドさんらが出席した。

慰安婦問題と比べても、管理された売春であったいわゆる慰安婦と比べて、妊娠したものが多いなど、比較にならない悪質性がある。しかも、敗戦というかたちで慌ただしく撤退して、父親のほとんどが放置したまま帰国した。そして、共産党政権下でライダイハンは「敵国の子」として迫害され、差別されてきた。

なぜこれまであまり問題にならなかったかというと、ベトナム戦争の死者は800万人にも上り、特別に彼らだけが気の毒とは意識されなかったからだ。韓国で拉致問題が日本ほど盛り上がらないのと同じだ。それどころか、「敵国の子」として迫害され、差別されてきたという。

それでも、2000年代に入つて、左派系のハンギョレ新聞などが韓国軍のベトナムの民間人虐殺疑惑をとりあげ、ライダイハンの存在も表面化した。

しかし、韓国内では、ベトナム戦争へ参戦したことが、経済発展とアメリカに対する発言権強化のきっかけになったことから、問題を取り上げることには抵抗が強い。

韓国大統領府FBより

6月11日のイベントに先立ち、5月28日には、文大統領に手紙を送り、韓国政府によるこの問題の公式認知、韓国人兵士のDNAチェックをして父親の確定などを求め、国連による協力を求めている。

やることなすことすべてがブーメランになって戻って苦境にたっている文大統領だが、こんどは、ライダイハンの問題が国際的にクローズアップされてきて、慰安婦問題のとんでもないブーメランになりそうだ。

しかし、韓国外務省は「ベトナムとの友好関係が発展するよう努力をしていく」と頬被りしている。