「学校教育の情報化の推進に関する法律」(教育情報化推進法)が国会にて可決・成立しました。
昨年、政府が提出した学校教育法等の改正により、「デジタル教科書」の制度化が実現しました。
そして今回の法律は、自治体が推進計画を策定・実施する等の総合的な施策により、学校教育情報化が大きく進展するもう一つのエンジンです。
めでたし、めでたし。
以下のような内容です。
○国の責務(4条):学校教育情報化施策を総合的かつ計画的に策定・実施
○地方公共団体の責務(5条)
○学校教育情報化推進計画(8条):文科大臣が総務・経産大臣と協議し公表
○都道府県学校教育情報化推進計画等(9条):都道府県、市町村は定め公表する努力
○デジタル教材等の開発及び普及の促進 (10条)
○教科書に係る制度の見直し(11条):検定等の制度を検討・措置、不断の見直し
○教職員の資質の向上(14条)
○情報通信技術の活用のための環境整備(15条)
○調査研究等の推進(19条)
デジタル教科書やプログラミングと言っても、PCやネットがなく、そもそも使えない。
早くEdTechに行きたいがまだ遠い。
国は年1800億円の予算を措置しているものの、地方交付税措置で、自治体が他の用途に流用している。
それを教育分野に振り向けるエンジンが弱かった。
デジタル教科書も制度化されるものの、紙の教科書を前提とする仕組であり、授業時間の半分までしか使えないとする規制も導入されます。
これら法律・ガイドラインを見直し、利用を促進すべき。
推進法11条も、教科書制度を見直すとしています。
現場の裁量で前に進めるよう仕組みを整えてもらいたい。
この法律は、与野党の超党派国会議員による「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」が策定したものです。
2015年2月に発足、会長 遠藤利明衆議院議員、事務局長 石橋通宏参議院議員のほか与野党の大臣経験者はじめ83名が参加しています。
ぼくら民間アドバイザーも作業に加わって法案を作り国会提出、このたび成立に至ったものです。
元はデジタル教科書教材協議会DiTT(現 超教育協会)が2015年6月、「教育情報化推進法の制定」を提言し、これを受けて2016年10月、議連として法案を制定する方針となったのが発端です。
以来2年半、関係のみなさまの努力に頭が下がります。ぼくらグループが情報化推進の法律が必要と訴えたのが2005年(14年前)。
そしてDiTTが2012年に「デジタル教科書法」を提言したものが2018年に政府提案の学校教育法改正で実現し、このたび「推進法」も議員提案で成立、目標が達成したわけです。
今だから言いますけど、厄介なこともありました。
当初、政治的に動くのが気に召さないのか、ぼくを筆頭に、議連に出席する者は某省のブラックリストに載せられ、業界のかたがたが協力を躊躇しました。
官僚は1-2年で交代するがこっちは20年交代してないし、出禁は慣れてるんで無視して走りました。
そんなことは、いっぱい、ありました。
教育デジタル政策の優先度を高めたい。
ここに資金や人材が投下されるように。
だけど政府がそれじゃムリ。
「官民データ活用基本法」も議員立法だが、有能な官僚と政治家が組み、ぐいぐいデータ政策を進めた結果、そのプライオリティは政権のトップ級に上りました。
G20でのデータ論議を日本が主導しています。
それを見るにつけ、なぜ教育デジタル政策はそうならないのか疑問でした。
先に進みましょう。
議連で意見を求められたぼくは、世界は2周先、AI時代の教育に進んでいることを指摘しました。
このため民間として超教育協会を立ち上げ、産学連携体制を講ずる。
BYODやクラウドなどインフラの整備、AIやブロックチェーンなど先端の開拓の双方が大事だと申し上げた次第です。
光は射しています。
文科省は部局も担当も変わって前向きとなり、クラウド利活用の促進を挙げるようになりました。
自分の端末を持ち込んで勉強できるBYODにも道が開かれます。
データ+AI利用の教育にも積極姿勢を見せています。
これまでにない、政策転換だと言えます。
そしてこの法案も最後は文科省が汗をかいて通ったという面もあります。
感謝申し上げます。
現政権のAI推し、経産省のEdTech推し、さらには最近、規制改革会議が教育情報化を論点に据えたことなど、政府全体の動きも力強くなってきました。
子どもたちのため、政官産学で前進させたい。
法律の成立をテコに、次、行ってみよう。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。