こんにちは、東京都議会議員(町田市選出)のおくざわ高広です。
今日は、オリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会において質疑を行いました。先週第二回定例会が終わった直後から一週間、資料の読み込み、現地視察(東京スタジアム周辺)、関係者へのヒアリングと濃密な時間を過ごさせていただきました。今回質疑をしたのは、持続可能性進捗状況報告書、輸送運営計画、ラグビーワールドカップなど全19問。私の意図するところを理解しようと何度もやり取りをしていただいた職員の皆様に感謝です。
さて、今日お伝えする持続可能性進捗報告書については、こちらをご覧ください。概要版全文
東京2020大会では、持続可能性に関する5つの主要テーマ「気候変動」、「資源管理」、「大気・水・緑・生物多様性等」、「人権・労働、公正な事業慣行等」、「参加・協働、情報発信(エンゲージメント)」についても取り組む大会であり、持続可能な社会をつくることは一つのレガシーといえます。有名なところでは、「みんなのメダルプロジェクト」がそれにあたります。
私たち 無所属 東京みらいでは、それぞれの強みや関心の強い事項を持ち寄って、まさにスクラムを組むように質疑をつくり、都庁職員との意見交換を行うのですが、持続可能な社会をつくるという部分においては、斉藤都議が熱心に取り組んでおり、今日の質疑においても大変尽力していただきました。
今回一番伝えたかったのは、持続可能な社会をつくるのは、行政や企業などのどこかの誰かではなく、今このまちに住まう私たち一人ひとりなんだということです。以下、全文を記載しておきますので、そのような視点でご覧ください。
以下、質疑要旨
まず、持続可能性進捗状況報告書について、ページを追いながら質問を行いたいと思います。
P42-再生可能エネルギーの利用について、都内7つの会場において再生可能エネルギー設備を導入したとのことです。昨年の文教委員会事務事業質疑において、斉藤都議から再生可能エネルギー設備の導入やエネルギー低減率について伺わせていただき、ゆくゆくは目標をさらに高く設定して取り組んでいただきたい旨をお伝えしました。エネルギーの地産地消という考え方も徐々に広がりを見せ、例えば、小田原市では公立学校施設や病院の屋上などに設けられた太陽光パネルで発電した電気を、地元電力会社へと売電する取り組みが進められています。また、都立久留米特別支援学校の改築計画においては、太陽光発電により発電した電力に余剰電力が生じた場合に売電処理が行えるよう、必要な設備を整備するとしています。
Q1.都内新規恒久施設等においては、施設の立地条件や規模によって設備も様々であるとのことですが、一昨年11月にオープンした武蔵野の森総合スポーツプラザにおける太陽光発電の実績について、お伺いします。
A1.
・都立スポーツ施設では、平成26年に財務局が改正した「省エネ・再エネ東京仕様」に基づき、再生可能エネルギーを活用している。
・平成29年11月に開設した武蔵野の森総合スポーツプラザにおいては、メインアリーナの屋根やサブアリーナの屋上に太陽光パネルを設置し、合わせて発電容量約100Kwの太陽光発電設備を整備している。
・この設備による発電量の実績は、平成30年4月から平成31年3月の一年間で約112,700kWhとなっている。
・これは施設全体で一年間に使用する電力量の約2%となっており、施設全体の照明や空調設備などの電力として利用されている。
2%という数字には、様々な捉え方があり、ここにエネルギー政策や環境政策、ひいては持続可能な社会をつくることの難しさが見えると私は考えています。スポーツ施設としての機能を最大限高めつつ、太陽光発電設備を整備することに難しさもあったことは聞き及んでおりますが、私が言いたいのは、精一杯の努力をしても、一施設、一事業体ができることは小さく、目に見えにくいということです。持続可能な社会を目指す上では、誰かがやる、から、誰もがやる、というような考え方の変化が必要であると考えており、あえて、数字を明らかにする質疑をさせていただきました。ぜひ都民全体の意識変革という目には見えないレガシーを残すことができるよう、取り組んでいただきますようお願い申し上げます。
次に、P52-食品ロス削減の取組について伺います。去る5月24日、食品ロスの削減の推進に関する法律(いわゆる食品ロス削減法)が成立しました。食品ロス削減に必要なこととして、発生させないことと廃棄しないことの両輪が示されています。
Q2.選手村における飲食の提供においては、その発生自体を限りなく抑制するために、ICT技術を活用し、飲食提供数の予測に取り組むとのことですが、具体的にどのような取組を行うのかお伺いします。
A2.
・組織委員会では、食品廃棄物を抑制する取組として、食べきれる量を考慮して給仕する、いわゆる「ポーションコントロール」を行いつつ、ICT技術を活用し、食材の必要量を左右する「飲食提供数」の予測にも、可能な限り取り組むこととしている。
・このICT技術の活用の具体的な内容とは、事業者が保有する「飲食提供数」の予測に関わるツール、ノウハウを活かし、選手村の入村状況、競技日程、日々の飲食提供時の食品廃棄物の発生状況などの諸データを分析するものであると聞いている。
ICTを活用した取組については、事前にその有効性を試していただくとともに、廃棄せざるをえない食材がどれだけ出てしまうのか試算していただきたいと思います。どれだけ効率的に食事を提供したとしても、発生をゼロに抑えることはできないというのが私の考えです。むしろ選手が望むような食事を提供するには、予想を多少上回るような量の食事を提供する必要があるとも考えます。
リオで行われた食品ロスの取組「Riffetto-Rio」においては、選手村で提供される約210トンに及ぶ食材のうち、期間中に12トンほどが余るとの予想から、1日に100食を近隣に暮らす貧困層の人々に配る取組を行いました。東京においても、必要とする方に食べて頂く選択肢も用意していただくことを業務委託先の事業者さまに強く働きかけて頂きたいと思います。
食品衛生法により調理から2時間を超える場合は廃棄せざるを得ないということも聞いておりますが、何かしらのノウハウをもっている方もいるやもしれません。ぜひ広く協力を呼び掛けて頂きたいと思います。加えて、このICT技術を今後の日本の、いや世界の飲食業界におけるスタンダードにしていけるよう、取り組み状況や成果について検証をできる体制を整えて頂きますようお願いします。
次に、P52-容器包装等の削減について、一度使用されるワンウェイのプラスチックの容器包装・製品について言及されており、選手村においては繰り返し使用可能なカトラリーの導入や各競技会場におけるワークフォースの弁当容器の仕様を工夫するような内容が記載されています。都庁においては、プラストローから紙ストローへの転換に主体的に取り組んでいるところですが、例えば大会中に配布するノベルティを入れるビニル袋を紙袋に代えることはできないかといったことに考えを巡らせていただけないかと思うところです。
Q3.そこで、都として、組織委員会と連携し、プラスチック製品に代わる製品の導入について、事業者側等に広く呼び掛けるべきと考えますが、見解を伺います。
A3.
・東京2020大会のワンウェイプラスチック対策については、組織委員会と連携し、選手村などにおいて、レジ袋の削減やプラスチックではない食器類の使用など、様々な対策に取り組むこととしている。
・対策の具体化にあたっては、再生利用のしやすさや環境負荷の低減、経費などの課題も考慮する必要がある。
・今後、東京2020大会に向け、組織委員会は、スポンサーなどとも連携し、ワンウェイプラスチック対策の取組を具体化していくこととしており、都としても、関係各局と連携してその取組を支援していく。
ワンウェイプラスチック対策の具体化に取り組んでいくという力強いお言葉であったと思います。例えば、先日製紙業界の方から伺った話ですが、世界的にはプラ袋から紙袋へという流れがあるとのことです。再生利用のしやすさや環境負荷の低減という観点は、業界の目指す木材資源の循環という考え方との親和性も高く、今後期待したいところです。
P73-ダイバーシティ&インクルージョンの取組について、多様な人材が活躍する環境づくりは大変重要です。障害のある方にしか気づかない視点や性的マイノリティの方々ならではの感性、多様な人材がその能力を発揮できる環境こそが、これからの東京の目指すべき方向であると考えています。
Q4.そのような観点から、組織委員会において、どのような取組を行っているのか伺います。
※実際には、他の委員から同様の質疑があったため割愛。
A4.
・組織委員会のD&Iに関する取り組みについては、理解を促進するためのハンドブックの作成や、障害を持つ職員による接遇・サポート研修の実施、LGBT当事者との交流会の開催、職員による「D&I宣言」の実施などにより、意識の向上にも努めていると聞いている。
昨年、東京都においても性的少数者への差別的取り扱いを禁止する内容を盛り込んだ条例が成立したところではありますが、まだまだ性的マイノリティの方々が自分らしく生きていくには特に心理面でのハードルが高いとのお話を伺います。組織委員会では、職場における性的マイノリティへの取組を評価するPRIDE指標でシルバーを獲得したとのことですが、当事者コミュニティの部分でやや不足があったということで、今後ゴールドを目指して更なる取り組みを行っていくと聞き及んでいます。都庁においてもこうした姿勢から大いに学んでいただきたいと考えます。
関連して、アメリカのメディアの調査では、自らセクシャルマイノリティであることを表明している選手が、北京では10人、ロンドンでは23人、リオでは少なくとも50人以上の方がいらっしゃったそうです。五輪出場を機にセクシャルマイノリティであることを表明したり、恋人にプロポーズをしたりする選手もいらっしゃいます。競技や表彰式の進行との兼ね合いもありますが、、それぞれの行動を見守っていただきたいと要望しておきます。加えて、都としても多様な主体と連携して性的マイノリティの方々が自分らしくイキイキと暮らせる社会へ向けて取り組んでいただきたいと思います。
つづいて、障害のある方が円滑に移動できる環境づくりは重要です。P77-アクセシブルルートの選定とサービス水準の向上に取り組まれている事自体は歓迎するものの、ハードだけで対応することには限界があります。そのような意味から、障害のある人だけでなく、障害の無い人に対してもアクセシブルルートにおいて、とっていただきたい行動についても丁寧な周知を図るべきであると考えます。
Q5.駅などの交通機関から会場まで誰もが快適に移動できる環境整備に向け、どのような取り組みを行う予定であるのか、見解を伺います。
A5.
・東京2020大会に向けては、障害の有無に関わらず、すべての人が安全で円滑に移動できる環境を構築するため、まずレガシーともなるハード整備を目指し、それが困難な場合は、ソフト的に対応。
・このため、大会時の観客利用想定駅やアクセシブルルートについて、ハード整備を各管理者や事業者に依頼し、現在、エレベータの設置やルート上の段差解消等の対策が推進。
・さらに今後、ハード整備のみでの対応が困難な場合を洗い出し、専用車による移動支援や人的支援等のソフト的対応により、サービス水準を確保。
ハード整備のみでの対応が困難な場合を洗い出し、ソフト面での対応を行っていくとのご答弁でした。大会成功のカギであり、残すべきレガシーは心の変化にあると声を大にして言いたいと思います。心のバリアフリーを実現し、誰もが支え合い、快適に過ごすことのできる社会を見据えた取組を要望しておきます。
最初の質問でもお伝えしたとおり、持続可能な社会をつくるには都民一人ひとりの意識が大変重要であり、大会の成否を分ける一つの尺度がP95-エンゲージメントであると考えており、私はより広い範囲を対象にしたエンゲージメントを醸成することが重要であると考えています。その点から、Be better, togetherという持続可能性コンセプトをいかにして活用していくのかと考えて見ますと、正直に言って、あまり目にすることが無いのが非常に残念です。
物理的に目につく場所に掲げていくという方法もあるかと思いますが、SNSでの発信などにおいて、アスリートやアーティストなど、2020東京大会を彩る多くの方々にインフルエンサーになって、コンセプトを広げて頂くべきであると考えます。
Q6.そこで、持続可能性コンセプトを活用し、エンゲージメントを広く醸成するために、どのように組織委員会と連携して取り組んでいくつもりなのか伺います。
A6.
・組織委員会では、持続可能性のコンセプト「Be better, together」を掲げ、大会準備に協力する行政や民間機関などと連携し、各種イベントでの情報発信に取り組んでいる。
・都でも、都庁2階に設置しているフラッグ展示コーナーや東京スポーツスクエアのシティキャストの説明会等の場にコンセプトが分かりやすくまとめたパネルを掲出するなど、情報発信への協力に努めている。
・組織委員会と連携した取り組みとしては、昨年7月のカーボンオフセットに関する都、埼玉県との同時発表やメダルプロジェクトにおいても情報発信を行っており、様々な機会を捉え、引き続き、組織委員会と連携し、取組を進めていく。
ここで一つ指摘をしておきますと、例えばアスリートのコミュニティにはスポーツに関心がある方が多く、そこから発信される情報は、どちらかというとエンゲージメントを強くする方向に働きます。これは喜ばしいことではありますが、2020を契機に広くスポーツや文化の輪を広げていくという観点からは、アスリート以外の方々から情報発信をしていただくことも肝要であると考えます。様々な機会を捉えて、ということでしたので、多くの方が情報発信したくなるような仕掛けをしていただきたいと要望しておきます。
情報発信に関連して、P96-組織委員会では様々なイベントにおいても情報発信を行っているとのことですが、その中に、東京2020NIPPONフェスティバルというものがあります。東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて、全国でくり広げられる文化の祭典とされ、日本各地の熱気と多様性の融合という一つのキーワードが掲げられています。一方で、東京都では、すでにTokyo Tokyo FESTIVALを展開しており、その連携による相乗効果が期待されるところです。
Q7.双方の価値を最大化するために、組織委員会とどのような連携を図っていくのか、見解を伺います。
A7.
・都生活文化局が主体となって実施している「Tokyo Tokyo FESTIVAL」と、組織委員会が主体となる「東京2020NIPPONフェスティバル」の取組を効果的に連携させ、大会を盛り上げていく事は重要。
・このため、都生活文化局では組織委員会、文化庁などから成る「文化プログラム連絡会議」等の場を通じて、各主体のプログラムの情報共有をはじめ、相互の文化プログラムの効果的な連携策や共通の広報等について協議中。
・スポーツのみならず、文化の祭典である大会の成功に向け、組織委員会や関係局とも連携し、多くの方々が様々な文化プログラムを楽しみ、国内外に日本の多様な文化をPRできるよう、引き続き取り組んでいく。
文化プログラム連絡会議で効果的な連携策や共通の広報等について協議中とのことですので、あらゆるセクターの協力を得ながら進めて頂きますよう、お願いします。
※いつも写真を撮影してくれるIさんからも、熱意のこもった質疑とお褒め頂きました。ありがとうございます。
編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2019年6月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。