コンテンツ振興策、自民党にて。

2019年07月01日 14:00

自民党知財調査会コンテンツ小委に呼ばれ「コンテンツ振興の現状と課題」というテーマで話してまいりました。


甘利明会長、新藤義孝小委員長、大塚拓事務局長、古屋圭司議員、山口俊一議員、山際大志郎議員、伊藤信太郎議員、左藤章議員、牧原秀樹議員ほか。
共有しておきます。

1990年代から始まるコンテンツ政策は2000年代に高まりをみせました。かつては国内重視・産業振興策でしたが、国内の少子化や世界的なIT化を踏まえ、海外展開・ネット展開重視へと転換してきています。ただ期待とは裏腹に、国内コンテンツ市場は横ばいです。

海外展開では、2013年にクールジャパン機構が設置され、助成金J-LOPなどの措置もあり、資金面での政策ツールが充実。かつては国内市場で食えていたため、ゲームやアニメを除きコンテンツ業界はさほど海外に熱心ではなかったが、この政権に入りかなり変化が見られます。

海外市場は5年で26%拡大。2020年には2兆円超えが見込まれます。
映像コンテンツは5年で500事業者が新規に海外展開に取り組み、政府が支援した法人の海外売上は2000億円近く増加しています。

2011年あたりからの5年間をみると、アニメは2.9倍、ゲームは3.6倍。
映画は額は小さいが2.8倍。テレビなどの放送は4.4倍。海外の売上が伸びました。
これは大変な変化であり、政策の成果があったと評価してよいでしょう。

ただし日本のコンテンツ売上は海外市場全体の2.5%で、まだ伸びしろが見込まれます。
さらに、訪日外国人の多くがポップカルチャーに期待して来日しており、アウトバウンドからインバウンドへの対応(たとえば多言語対応するとか、聖地巡礼コースを増やすとか)その強化も重要になります。

もう一つの柱であるネット展開は成功しているとは言えません。
日本全体がIT対応でアメリカに敗北しました。それはコンテンツも同様です。
ネットワーク配信は2008年の9.5%から26.0%まで拡大したが、マンガ40%、アニメ15%、音楽8%、動画4%と分野により差が大きい状況です。

マンガ、アニメ、ゲーム、音楽ともに、海賊版事業者や海外のネット巨人が脅威となっています。
マンガは海賊版が依然頭の痛い状況。
アニメはテレビ事業でしたが、ネットフリックスやアマゾンが世界の映像市場を押さえようとしています。

ゲームも日本はテレビ向け事業でしたが、世界はネット事業に移行しました。日本も5Gの電波割当が決まりましたが、グーグルが5Gでのクラウド化を進めていて、構造変化が起きる可能性もあります。

音楽は日本はCDが70%のガラパゴスですが、世界は既にサブスクリプションが50%近くまで来ていて構造が全く違います。
ネットフリックス等はコンテンツ制作資金の提供や海外販路の拡大というチャンスをもたらす面もあるものの、事業基盤を握られ、ユーザのデータをみな持っていかれる恐れもあります。

これに対し、
マンガは海賊版対策、
アニメはテレビとネットを融合した戦略、
ゲームはeスポーツのような新産業の拡大策、
音楽はネット配信の著作権処理の円滑化
といった個別の対策が考えられます。

同時に、ジャンル横断でまとまった対策、たとえばアップルやグーグルに対し全コンテンツとして交渉力を発揮するとか、ファッションや食べ物など他の分野と連携してビジネスを拡大するといった対応が必要となります。

重要なのは、ネットやスマホの次のステージがコンテンツにも来ているということ。
流通は5Gとクラウドに移り、デバイス・視聴はIoTやVRなど多様な環境となります。
コンテンツビジネスは、AI+データ主導による広告・販売戦略が主流となり、ブロックチェーンによる管理も広がることが想定されます。

既にネット広告がテレビ広告を上回る規模に成長していて、しかもネット広告の8割はターゲティング広告。
つまりユーザのデータを使ってAIで管理する世界。既にAIとデータの世界に入っています。
5Gやパブリックビューイングなどの環境整備、AIやブロックチェーンの実証実験などの対策も求められます。

海賊版対策にも携わりましたが、海賊版は知財戦略(著作権)とIT戦略(通信の秘密)、いずれも憲法が保障する権利で、それらの間の調整が重要課題。
それは複数の官庁をまたぐ問題でもありました。同様に、知財・コンテンツとIT・テクノロジーを巡る政策案件は増大すると予測されます。

経団連がデジタルトランスフォーメーションを進めるための情報経済社会省を提案していますが、そろそろ行政組織のあり方も検討する時期が来ていると考えます。

民間でいま進んでいる事例として、CiPというプロジェクトを紹介しておきます。
コンテンツの集積拠点を東京・港区竹芝に作る構想です。
東京都の持つ土地を再開発して、2020年夏、東京オリンピック前に街開き予定。
コンテンツ、放送、通信、IT、大学等50企業・団体が集結しています。

国家戦略特区として電波、ロボット等規制緩和の導入を検討。
慶應義塾大学、スタンフォード大学なども入居し、産学連携と人材育成を進めます。
街開きは来年だが、既にコンテンツ+テクノロジーのプロジェクトを展開中です。

CiPは先行事例ですが、このような構想は羽田や大阪など他地域にもあり、そうした地域の連携を進めハブ化したい。
韓国はソウルにコンテンツ集積拠点を国のカネで整備・運営しているが、日本は民間で進めているのです。
オリパラや万博などのチャンスをつかみとっていきたい。

報告は以上。
議員のみなさまから、eスポーツ、聖地巡礼、海賊版、CiP、iU、アーカイブ、プラットフォーム対策などご質問をいただきました。
党としてコンテンツ戦略をまとめるそうです。
よろしくお願い致します。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2019年7月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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