6月29日に閉幕したG20大阪サミット、その周辺を取材してきた。
主だった警備上のトラブルといえば、伊丹空港で警備をしていた島根県警の男性巡査が空港近くのトイレに拳銃を置き忘れた。また、咲州の海上で海上保安官が実弾14発を失ったり、一部開催反対派のデモや警備の事故などが発生した。
過去のG20を振り返ると、2010年にカナダで抗議デモが起こり500人の逮捕者が出たり、2017年のドイツでは抗議デモで警官76人が負傷するなどしている。
だが、幸いにもG20大阪サミット開催期間中各国首脳はじめ関係者や一般人の死者やケガ人はゼロで終えた。
大阪府の吉村洋文知事はツイッターで「府民の皆様のご理解ご協力をもってG20大阪サミットを成功におさめることができました。全国から応援に駆けつけてくれました警察、消防、海上保安庁、自衛隊の皆様、ありがとうございました。最高レベルの安全性が求められる会議が実現できたというのは大阪にとって大きな自信につながったと思っています」とコメント。
大阪府警の石田高久本部長も「一連の警備を大きなトラブルなく終えられた。皆さまに心から感謝申し上げる」と述べた(談話は産経新聞)。
もちろん今回の「死傷者ゼロ」の奇跡は、市民の協力あっての結果だが、その陰には徹底した警備ぶりがあったので紹介したい。
トランプ大統領の宿泊施設前でプチ騒動
トランプ大統領が宿泊しているホテルには100人を超す警察官で囲まれていた。
ホテルの中へ進もうとすると警察官から「すみません、ご用事は何ですか?」と聞かれた。
「トランプさんが宿泊しているホテルのカフェで記念にお茶をしたいと思いまして」と答えると、警察官から「すいません、身分証明書をご提示してもらっていいですか?」と何やら険悪ムード。
ここまではテレビや新聞であらかじめ報じられていたので予想通り。これでホテルの中へ入り、トランプ大統領の宿泊したホテルでお茶が飲めると思った筆者が甘かった。
複数の警察官が集まってきて、ホテルの支配人らしき人物まで登場してきてヒソヒソ話。
悪いことは何もしていないのだが、なんだかヒヤヒヤ。
何やら物々しい雰囲気に…。
ホテルの支配人から「あの、予約はしていただいていますか?」と聞かれた。
「えっ?ホテルのカフェでお茶をしたいだけですよ、予約がいるんですか?」と返した。
すると、ホテルの支配人が「まだ厳重警戒期間が続いていますので、ご協力をお願いしてるんですよ」とあっさり言われた。
支配人からの「帰ってくださいよ」オーラを察し、「また来ます」とホテルでのカフェをあきらめた。
トランプ大統領が宿泊中であったとはいえ超厳戒態勢、ホテルのカフェでお茶を飲むだけでプチ騒動に発展するとは。
このような警備が各国首脳が宿泊していたあちこちのホテルで実施されていたというから何も起きようがない、鉄壁の警備ぶりだ。
ポケットの中まで警備…
続いて安倍首相が海外の首脳と会談をしている会場へ向かうと、早速警察官に身分証明書の提示を求められた。
さらに、警察官から「すみません、カバンとポケットの中に入っている物も確認させてもらっているんですよ」と。
私は思わず「えっ?通行人全員、カバンだけならまだしもポケットの中まで確認してるんですか?」と聞いた。
警察官は「はい、通行人全員の方にご協力いただいているんですよ、申し訳ないです」
いやいや、申し訳ないのは私たちの方ですよ。
警察官によれば、新しい通行人を見つけるとその度に声をかけ一人一人に荷物全てとポケットの中ままでチェックを実施。
仕事とはいえG20大阪サミット中どれだけの通行人の数をチェックしたか想像を絶する。
朝から晩までなんと神経がはりつめ過酷な骨の折れる仕事だ。
地方から警備へ来たある警察官によれば、G20がスタートする1週間前から警備に来て、サミット終了の翌日に帰る予定だという。大阪でプライベートな時間といえば、「ホテルが用意され帰って寝ることぐらい」と明かしていた。
全国の警察から約3万人の警察官を送りこんだG20大阪サミット。大阪での大規模警備は1995年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)以来24年ぶりだ。
今回の警備体制について筆者の周囲やSNSの反応をみると、
あんな警察車両が多いの生まれてはじめてみたわ、トランプの後100台ぐらいいた興奮した。
しゃがみこんでいるところを助けて下さった新潟県警。警備中にも関わらず、家まで子供を乗せた自転車を押して付き添ってくださり、本当にありがとうございました
毎日あいさつしてくれた警察官が今日が最後と言われ少し寂しい。
などと概ね好意的な意見が多い印象。
死者もテロも「ゼロ」の成果を出した今回の警備ははもっと称賛されるべきではないだろうか。
今回、昼夜を問わず警備に当たった警察、消防、自衛隊、海上保安庁の皆様本当にお疲れさまでした、ありがとうございました。
あなたたちは日本の誇りや、東京五輪も頼むで!!!
奥村 シンゴ フリーライター
大学卒業後、大手上場一部企業で営業や顧客対応などの業務を経験し、32歳から家族の介護で離職。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディアのテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。