ツイッター上での匿名軍団の攻撃と戸籍論争

八幡 和郎

橋下徹氏が提起した戸籍制度の改正をきっかけに、足立康史氏、百田尚樹氏、有本香氏、それに深田萌絵氏らがSNS上でバトルを展開している(深田氏は、実業家・アナリスト・評論家・元アイドル。ハーウェイの危険性を早くから指摘し、『日本のIT産業が中国に盗まれている』はベストセラーに)。

左より、橋下氏(SNS)、足立氏(公式HP)、百田氏(Wikipedia)、有本氏(DHCテレビ)、深田氏(SNS)

このバトルの内容については、すこぶるややこしく、かつ、残留孤児の子供と称している人物のプライバシーに触れる部分もあるのでここで論じることはしないが、メディア論や政治論として論じるべきことが多いと思い、私もフェイスブック上で取り上げているので、一部を紹介したい。

まず、第一はこの議論にあって、ツイッター上で軍団による匿名の助勢が行われ、本人たちの言論バトルでなく、軍団による個人攻撃で相手を貶め黙らせようという場面が多いことである。

フェイスブックの世界では基本的に本名が原則なので、反論もだいたいはフェアである。また、偽名を使っても特定がわりに容易だ。あまり人格攻撃などすると天に唾することになる。ところがツイッターの世界では匿名が多いので闇から人を撃つようなことになりがちだ。

また、組織や力のある個人はツイッター軍団をもったり裏垢といわれる匿名アカウントを使って狙いを付けた批判者に襲いかかるので、普通の個人はたまったものでない。

いろいろ事情を聞くと過去にそういう手法で攻撃を受けた人や組織が、対抗するために自分で軍団を組織することも多いようだ(組織されていると言っても程度はさまざまだし、態様も多様なので念のため。勝手連的なものもあるし、仕事として発注を受けてというのもあると聞く)。

そして、その軍団は実に組織的に統率がとれた動きをすることも多く、たまたま同じ意見の人が多いというわけでないことが外見上も分かることも多い。

今回の騒動でも、組織とか熱狂的なファンクラブを持たない側に加えられた攻撃は、まさにそういう種のもので不愉快だった。ツイッターは個々の書き込みの妥当性だけでなく、こうした集団による「匿名集中攻撃」に対して対策をとるべきだと思う

第二に、この騒動で、橋下氏と百田氏のやりとりに足立氏や有本氏がからみ、さらに深田氏と足立氏の激論になったりしたのだが、その過程で、百田氏が大阪都構想について支持してきたのに足立氏に批判されるのは残念で都構想への支持にも影響するようなことをいい、維新の松井代表が足立氏に注意する一幕があった。

滅多に素直に謝らない足立氏が松井市長に怒られて謝るとか言うような場面もあった。もともと足立氏の言い過ぎはよくあることだし、そうした場合に謝った方が身のためとも思う。その一方で、何でもすぐに謝る日本社会にあって、謝るにしても簡単に白旗を上げない足立氏の意地っ張りぶりは魅力であった。

しかし、有力支持者だから、あるいは、都構想について考え方を変えるかもしれないから謝るというのでは都合が悪い。謝るなら、これまでのことも含めて、相手が強いかどうかにかかわらず同じ扱いをして欲しい。

弁護士の世界なら、強い相手、影響力のある相手にだけ謝ればいいのだろうが、政治の世界、言論の世界ではそれはアンフェアといわれて当然だ。

ただし、私はここで足立氏を非難しているのではなく、彼に対する高い評価を変えるつもりはないが、これから彼が公正な姿勢で臨むことを期待して意見しているだけである。もちろん、維新という組織もそういうスタンスであって欲しい。

第三に、もとの戸籍問題については、個別問題に立ち入ることはしないが、日本の戸籍制度が、誰がどういう来歴を持った人間かを分からないようにするという国際化時代に合って信じがたく愚かな制度改正をしたり、残留孤児の認定を甘くして、なりすましがかなり紛れている疑いを生じさせているのは大問題だ。

私も遺産相続についてのある手続きをしようとしたら、記録が保存期間を過ぎているというので、過去のある時期の事を証明出来ないでひどく迷惑したことがある。自分でも自分の事を証明出来なくなると言う酷さなのだ。

これに対して、同和問題があるから、来歴をあえて分からなくするのだという議論もあろう。同和問題の底知れぬ深刻さは関西出身者、元公務員として十分に承知しているが、それが外国人に悪用されるようでは困る。これは二重国籍問題ともかかわることだ。

出生地は必要かとか言う議論もあったが、国際的にはとても重視されている事項である。

そのあたりは、一面的でない視点が必要だし、性善説に基づいて悪者を喜ばすような制度や運用にはするべきでない。これは生活保護や医療保険の運用でもかなり深刻な問題である。