解決策を提示せず国民の反日感情に火をつける韓国大統領府

2019年07月19日 12:00

韓国大統領府が朝鮮日報と中央日報の記事に「韓国の国内世論を日本に誤って伝えている」と批判し、両紙はその記事を電子版から削除した。政府が新聞の社説を公式に批判するのは先進国では考えられないが、事実誤認があるわけではない。

韓国大統領府FBより:編集部

他の媒体に転載された記事も削除されたが、今の段階でネット上に残っている朝鮮日報の社説「解決策を提示せず国民の反日感情に火をつける韓国大統領府」の日本語版(元記事は削除)の一部を紹介する(強調は引用者)。

米国に韓日間の仲裁を要請した韓国大統領府の金鉉宗国家安保室第2次長は帰国の際「1910年の国債補償運動、そして1997年のアジア通貨危機で金を集める運動を行った時のように、今こそ一つとなって(日本の報復という)危機を共に克服しなければならない」と述べた。当初期待されていた米国による仲裁について確かな回答を得ることができなかったため、「国債補償運動」という110年前の運動を持ち出しはじめたのだ。

これは韓国政府のアメリカに対する外交的な働きかけが失敗したことを批判している。1910年の国債補償運動とは、Wikipediaによれば「大韓帝国国民の自主的な募金活動によって、日本からの借金を返済し、ひいては経済的独立を守ろうとした運動」である。

「韓日対立」の原因が、韓国の「強制徴用被害者」への賠償をめぐる判決と韓国政府の対応にあることも、朝鮮日報は明確に指摘している。

日本の報復まで招いた今の韓日対立は、強制徴用被害者への賠償判決から始まった外交問題だ。韓国政府が事前に動いて日本側と対話を重ね、解決策を見いだしていれば、今のような事態にはならなかったはずだ。

ところが「三権分立」を口実に8カ月にわたり韓国政府が事態を放置した結果、問題はここまで大きくなった。政府が緻密に対応できず、半導体産業や企業に大きな被害を出させておきながら、その一方で100年前の時のように「日本と戦おう」と呼びかけているのだ

与党・共に民主党による「日本報復対策特別委員会」の委員長は「義兵を立ち上げるべき事案」と発言した。今の外交対立を「義兵」と「竹槍」によって解決するというのだろうか。

半導体産業に「大きな被害」が出ることを認めている。これに対する韓国政府の対応が、経済政策の失敗を隠す「官製民族主義」だとも指摘している。

親日清算を強調してきた文大統領が今年の3・1節に行った演説も、リベラル系の学者たちからでさえ「典型的な官製民族主義」などと指摘された。「官製民族主義」は政府の失策に対する批判から国民の目をそらせるため、他の方面に注目を向けさせることを目的に行われるケースが多い。

「冷静な外交的対応」を求める声に対し、政府の支持者たちは「土着倭寇」などと逆に批判している。感情の噴出は一時的だが、経済の悪化は長期にわたり影響し、国民に構造的な被害をもたらす。現実的かつ合理的な対応策を一日も早く準備していかねばならない。

朝鮮日報は保守系だが、韓国メディアからもこういう指摘が出てきたことは興味深い。韓国政府は強気を装っているが、世論はゆらいできたようだ。優遇措置解除は、確実に効果を発揮している。日本政府は今後も現在の措置を維持することが賢明だろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 学術博士(慶應義塾大学)

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