現在、世間を大騒ぎさせている吉本興業の闇営業問題ですが、所属芸人の宮迫博之さん田村亮さんの内部告発とも言える衝撃的な記者会見ののち、岡本昭彦社長が前代未聞のグダグダ記者会見を開き益々火に油を注ぐ結果となっています。
全く論点がかみあっていなかったですよね。
そもそも闇営業をした芸人さん達が、今になって何故こんなに大騒ぎになるのか?
しかも保身から嘘をついてしまった謝罪会見を、何故会社は阻止しようとするのか?
吉本興業はそうまでしてこの問題をスル―したかった理由はなんなのか?と、本当は水面下でもっと大きな時限爆弾があるんじゃないの?と勘繰りたくなります。
また、同時に様々な人が指摘し、炎上しておりますが、最近、安倍政権と急接近している吉本興業は、NTTグループと共に教育事業に参画するとかで、その事業費になんと100億円もの税金が投じられるというのです。
(アゴラ)「吉本が国費100億で教育進出」4月の記事に「ありえない」と急炎上
100億の助成事業と言ったら、普通は相当精査されるはずですよ。暴力団との関係は特にですね。
しかも通常は国が「こんな事業をやります!」と決めたら、どこがやるかは入札になるはずで、我々なんかは、依存症の啓発がこの入札事業で行われるために毎年大変な苦労をしています。
つまり「安かろう、悪かろう」でも入札は通ってしまうし、折角勝ち取ってきた助成金が使われずじまい…
ギャンブル依存症対策費なんてカジノ法案が通過した現在でも、予算なんか依存症全体で2億円UPになったにすぎず、しかもアルコールや薬物と分配していくと、ギャンブルにまわってくるのなんか本当に微々たるもの。
その上、そのわずかな予算ですら余らせてしまう…というこの国の入札制度に、当事者・家族の想いや努力は踏みにじられっぱなしです。
どれだけこの予算を、余らせずに我々に分配して欲しい!と願ったってそんなことは絶対にして貰えません。
なんせ依存症問題はこれまで我々の様な小さな民間団体が自主的に担ってきていて、我々には入札の権利すらないのですから。
しかしこの吉本興業の事業は、クールジャパン機構からの出資ということで、通常、税金が使われる際に行われる入札すらなく、吉本興業&NTTグループが決め打ちで100億円もの出資が受けられるようですが、一体どうしてこういう特権が一部企業のみ受けられるのか?このあたりが安倍政権の不可解なところです。
しかもこんなパワハラ丸出しの企業が、一体どんな教育事業を行うというのでしょうか?
社長や会長の意向で圧力をかけられ、社員全員が自由にものを言うこともできず、しかも社員が真剣にまさに決死の覚悟で告発すれば「あれは冗談でした!」と、誠意も正直さも、そして企業のトップとして1ミリの責任感もない企業ですよ?
こんな企業に子供のたちの教育なんかできるわけないじゃないですか。
いやむしろ人権やコンプライアンス教育を、吉本興業こそ受け直すべきじゃないですか?
さらに、この事業の中身を見てびっくりです!
沖縄からアジアへ「教育コンテンツ」を配信 吉本興業とNTTグループが国産プラットフォーム事業
吉本興業は21日、NTTグループの持ち株会社「日本電信電話」(NTT)と共同で、
教育分野を中心としたコンテンツを配信する国産プラットフォーム事業「Laugh & Peace_Mother(ラフ・アンド・ピース・マザー)powered by NTTGroup」を始めることを発表しました。
そして吉本興業の大崎会長が
「『マザー』は『お母さん』です。どんな子どもでも大きく包み込んでくれる、そんなプラットフォームになったらいいな、と思っています。ドラマでも、バラエティでも、ハリウッド映画でもなく、新しくゼロからつくる世界に誇れる遊びと学びのコンテンツです。」
ここを読んで、ひぇ~!と絶句しましたね。
今や女性の社会進出はもちろんのこと、収入の減少と社会負担費の増加のために、共稼ぎ家庭が増大しているにもかかわらず、まだまだワンオペ育児を強いられる母親が多く、その弊害の是正が喫緊の課題と言われている時代に、プロジェクトのネーミングが、「Laugh & Peace_Mother」。相も変わらぬ、お母さん幻想にはびっくりです!
この教育コンテンツは、女性に益々の育児負担を強いるつもりでしょうか?
どんな子供でも大きく包み込むのは、母親だけの役割ではありません。
当然父親の役割でもありますし、もっと言えば社会全体の役割でもあります。
虐待や死別、貧困等の理由で、親元で暮らせない子供達も多数いる社会で、わざわざ「Mother」と強調する無神経かつ時代遅れ感。そしてそこに100億もの税金を投入するというのです。
記事の中にある、
子どもたちが、身近な生活の知恵や、さまざまな角度で物事をとらえる視点、プログラミング教育などに必要なロジカルシンキングなど、これからの時代に必要な知識を自然に身につけられるようにします。
って、言葉が実にむなしいですね。
まずは、大崎会長と、岡本社長が「様々な角度で物事をとらえる視点」を学んではいかがでしょうか?
そして国は本当に吉本興業に100億投資するのでしょうか?
税金の使い道として、はなはだ疑問です。
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト