役不足で「レ・ミゼラブル」の主演はできませんの意味は?

『レ・ミゼラブル(新装版)』(ドレミ楽譜出版社)/amazonより。

昨年くらいから、人工知能(AI)が話題になることが増えました。AIの発展で、人間がやる必要のない作業については代替が進むことが予想されています。

しかし、人間の関わりの本質的な部分がなくなることは考えにくいでしょう。言葉は、コミュニケーションの手段としてなくなることはありません。あなたの評価を高めるためにも、使い方を覚えておきましょう。

数カ月前から語彙力に関するツイートを重ねてきました。その中で、反響の大きかったものを紹介します。皆さまは何問わかりますか?一緒にお考えください

(1)檄(げき)を飛ばす編
A氏:最近の新人は気合いが入ってない!
B氏:ビシッと「檄を飛ばし」ますか
「檄を飛ばす」は激励するという意味はありません。広く世間に知らしめることを意味します。文脈なら「活」が理想です。なお、某番組で張本さんの「喝!」は誤用です。

(2)役不足編
主演男優:私は役不足なので「レ・ミゼラブル」の主演はできません

「役不足」は本来、「能力に対し役目が軽いこと」の意味です。これでは「『レ・ミゼラブル』の主演は軽すぎて不満」という解釈になります。傲慢な発言になってしまいます。

(3)さわり編
A氏:明日のプレゼンの役割を決めよう
B氏:最初の「さわり」の部分は僕がやります!
「○○のさわり」は、最初の部分の意味と思われがちです。本来は話の盛り上がるポイントのこと。要点や最も印象に残るところを指します。

(4)破天荒編
A氏:営業の高橋さんが退職されるそうだ
B氏:伝説の営業マンですね。「破天荒」な方でしたね
「破天荒」は豪快で大胆な様子の意味で使われがちです。本来は「今までできなかったことを成し遂げる」ことです。「前人未到の境地切り開く」こと。褒め言葉です。

(5)吝(やぶさ)かでない編
A氏:社長から出張依頼。今回は土日を返上だ!
B氏:社長命令なら「吝かでない」のでは?
「吝かでない」は「やむを得ない」の意味に使われがちです。正解は「喜んでする」こと。この文脈では、土日返上でうれしいという意味になります。

最近、語彙力に関する書籍を見かけることが増えました。「大人にふさわしい語彙力をつける」というニーズがあるように思います。スマホで文字を書くことが多くなったせいか、意味不明で非礼な文章が増えたように感じます。

さて、14冊目となる『3行で人を動かす文章術』を上梓しました。正しい文章を書きたい人には役立つ内容ではないかと思います。

尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)