共産党による「大企業課税強化」は日本経済に深刻な打撃 --- 加藤 成一

2019年08月16日 06:00

「消費税廃止」を主張する日本共産党と「れいわ新選組」

自民党安倍政権は本年10月から消費税10%への引き上げを行う方針であるが、これに対して、すべての野党はその凍結ないし反対を表明している。中でも今回の参議院選で7議席を獲得した日本共産党と2議席を獲得した「れいわ新選組」は、富裕層や大企業への「応分の負担」すなわち課税強化等により、消費税に代わる財源は確保できるとして、消費税の廃止を主張している。

Green Planet/写真AC、日本共産党FBより:編集部

もとより、国民にとっては消費税の引き上げがないに越したことはない。しかし、今や国家予算の3割以上にも達する社会保障関連予算の増大と国の債務残高1100兆円に対する対策は、与野党を超えた喫緊の課題である。

日本の所得税率はOECD加盟35か国中4番目に高い

しかし、上記両党が主張するような富裕層への課税強化については、平成27年分以降の個人所得税は、富裕層とされる所得4000万円超で税率45%であり、これに地方税10%が加算されるから、最高税率は55%になる。これはOECD加盟35か国中4番目の高さである(内閣府資料)。

そのうえ、平成27年分以降の相続税の最高税率は55%であり、3代が相続すると残存資産は20%になる。

このように、富裕層にとって所得税、相続税共に先進諸国に比べ、日本はかなりの割高であるため、それを回避するための海外移住や資産の海外への移転が増加している。2016年には海外への長期滞在者87万人、永住者46万人に達している(外務省調査)。

今後、上記両党が主張するような、富裕層に対する更なる課税強化が断行されると、この傾向がさらに加速し、人・物・金・知財が海外に一層流出し、日本の国力の低下をもたらす危険性が極めて大きい。

日本の法人税実効税率は先進諸国に比べ割高

上記両党が主張する大企業への課税強化については、平成30年度の法人税の実効税率は29.74%であり、米国27.98%、カナダ26.50%、中国25%、イタリア24%、英国19%に比べて割高である。これに加え、企業は従業員の社会保険料の50%を負担し、とりわけ大企業は比較的高賃金の上に、多額の退職金を従業員に支給している。

したがって、上記両党が主張するような、先進諸国に比べて税率が割高であり、その他の負担も大きい大企業に対する更なる課税強化を断行すれば、日本企業の海外流出を促進し、国内産業空洞化の一因になるのみならず、大企業の国際競争力を低下させ、日本経済にとって深刻な打撃となり、明らかにマイナスである。

特に、IRや人工知能、5Gなど日本の最先端科学技術産業の育成発展のためには、課税強化よりもむしろ大企業等に対する大規模な研究開発投資減税こそが必要不可欠である。法人税の引き下げは企業負担を軽減させ、賃金、投資、配当に回るが、引き上げはその逆となり、雇用の減少、賃金抑制、海外からの投資の減少につながる。

日本共産党による「大企業優遇税制」「大企業内部留保」批判は当たらない

上記の通り、日本の個人所得税、相続税、法人税実効税率は、先進諸国に比べて割高である。しかるに、日本共産党は、しばしば、「大企業優遇税制」や「大企業内部留保」を強く批判する。

しかし、前者については、実際は法人税収の7割以上を法人総数の僅か0.7%に過ぎない資本金1憶円以上の大企業が負担しているから、共産党主張のように、大企業に対する課税強化を断行すれば、日本を支え世界との国際競争でしのぎを削る大企業の潜在成長力を減退させ、業績低迷により、当然大企業からの法人税収も減少し逆効果になる。

後者についても、共産党は、2017年度446兆円(財務省発表)の企業内部留保を強く批判するが、内部留保は現金や預金よりも、土地・建物、機械設備など固定資産の割合が大きく、流動性は高くない。そのうえ、大企業よりも中堅中小企業の方が内部留保に占める現金・預金の保有率が圧倒的に高い。みずほ総研2014年の調査によれば、大企業の現金・預金保有額は40兆円であるが、中堅中小企業は100兆円を超えている。

したがって、「現金・預金をため込んでいる」との共産党の批判は中小企業にこそ当てはまるのであり、共産党による「大企業内部留保」批判は事実に反しており相当ではない。内部留保は企業体力の根源であるから、その活用は課税強化によってではなく、内部留保を取り込み活用させる政府の長期的本格的な経済成長戦略こそが重要である。

日本共産党による「大企業等課税強化」は日本経済に深刻な打撃を与える

以上に述べた通り、日本共産党は、富裕層・大企業への「応分の負担」すなわち課税強化等により、消費税に代わる財源を生み出し、消費税は廃止できると主張している。

しかし、個人所得税、相続税、法人税が現在でも先進諸国に比べて割高な水準にあるにも拘わらず、更なる課税強化を断行すれば、人・物・金・知財の海外への一層の流失を促進し、そのうえ、大企業の潜在成長力の減退、業績低迷、賃金低下、雇用の縮小、国際競争力の低下等をもたらし、日本経済に深刻な打撃を与え、そのマイナスの影響は計り知れないと言えよう。

加藤 成一(かとう  せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
外交安全保障研究。神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生修了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。

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